トルコリラ円見通し 5月7日から9連騰、連騰に対する反動もそろそろ注意
〇トルコリラ反騰続く、対円15.92対ドル6.75リラまで
〇メジャー通貨及び資源輸出通貨でのドル安感も背景に
〇5/21のトルコ中銀の金融政策決定会合で利下げ実施の場合リラ売り再燃の可能性も
〇トルコはコロナ感染者数の鈍化、死者数の減少は継続観光復興も準備
〇当面の下値支持線を15.75、上値抵抗線を15.92とおく
【概況】
トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、暴落商状一巡で7日当日から5月18日まで8日連続の日足陽線で反発してきた。
5月19日も騰勢は継続しており、19日夜には円安も重なって15.92円まで一段高となり、その後も15.70円以上の水準を維持して高値更新を伺う展開となっている。
対ドルでのトルコリラも5月7日に7.27リラの史上最安値まで大幅下落となり2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったが、その後は売り一巡から反騰に入り、5月7日当日から18日まで8日連続でドル安リラ高へ戻してきたが、19日も6.75リラまで回復して9日連続のドル安リラ高となっている。
【暴落一巡、21日のトルコ中銀金融政策会合に注目】
5月7日への対円及び対ドルでの史上最安値更新は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う新興国通貨全般への売り圧力、トルコ自身の感染拡大と経済活動停滞、トルコ中銀による8会合連続での利下げによるマイナス金利状態、外貨準備高の減少による通貨防衛力への懸念等であった。
コロナショックによる新興国通貨売りには一服感が出ており、トルコリラ同様に対ドルでの史上最安値を更新していたブラジルレアルは5月8日から反騰している。またドル高感一服のなかでユーロが18日から19日にかけて急伸し、豪ドル等も戻してメジャー通貨及び資源輸出通貨でのドル安感が出てきていることもトルコリラの反騰に寄与している。
トルコの感染爆発が落ち着き正常化への動きが徐々に見られることもトルコリラ反騰に寄与しているが、5月21日にはトルコ中銀の金融政策決定会合が控えており、トルコ中銀が9会合連続で利下げを行う可能性もあるために、実質マイナス金利状態が悪化すればリラ売り圧力が再燃する可能性もある。
韓国紙が19日に、トルコが韓国に通貨スワップを公式要請したとのヘラルド経済の5月14日記事を報道した。韓国紙は「韓国への事実上のSOS要請」と論評している。
トルコの通貨スワップ協定関連報道は5月14日のロイター社報道で既報されているが、米国が通貨スワップを拒否しているためにトルコは日本や英国、中国、カタールに通貨スワップを通じた支援を打診したとされている。トルコリラが暴落一服で連騰しているので通貨危機への懸念はやや和らいでいるものの、21日に中銀が利下げを継続するようだと通貨危機問題も再燃しかねないと注意したい。
【トルコ国内の感染者増加ペース鈍化と死者減少が継続】
5月19日時点での世界の感染者数は498万人を超え、死者は32.4万人を超えた。米国は157万人を超え、死者も9万3533人に増えた。ロシアは29.9万人に達して世界第二位、ブラジルは27万人を超えてスペインに続く第四位となっている。
トルコの感染者数は5月19日時点で前日比1022人増の15万1615人、死者は28人増の4199人となった。18日の検査数は2万5382人に行われている。退院は1318人で回復者の累計は11万2895人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向にあり、5月7日以降は2000人を切った状況を現在も続けている。死者も4月19日の127人をピークに減少が続いている。
5月23日からラマザン・バイラム(5月24〜26日、断食明け祭)までの間をトルコ全土で外出禁止とするとし、学校再開を9月に延期したが、モスクでの信徒団による礼拝の実施は5月29日以降ルールに従うことを条件に再開するとした。現在はラマダンの断食月だが、モスクでの集団礼拝は禁止されている。
トルコ共和国大使館・文化広報参事官室は、2020年夏からヘルシー・ツーリズム認証プログラムを開始すると発表した。この認定プログラムは、航空会社や空港等の交通機関や宿泊施設、飲食施設等で健康と衛生の両面から高度な要件を満たしていることの認証を発行するものとなっている。
5月17にはトルコ共和国文化観光省のメフメト・ヌーリ・エルソイ大臣が5月28日頃に国内観光を開始し、6月中旬以降に一部の国からの観光客の受け入れを開始することを考えていると述べている。また自国で新型コロナウイルスの検査を受けてきた人はトルコに簡単に入国できるとし、自国で検査を受けることができなかった人に対しては保健省が検査を行うとし、6月からは空港などで検査センターの開設が始まるとしている。正常化へ向けて徐々に進展が見られ、観光復興も準備されてきているようだ。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日午後と9日未明の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたが、5月14日深夜への一段高により15日午前時点では12日夜高値を直近のサイクルトップ、14日朝安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとして15日夜から19日夜にかけての間への上昇を想定した。
5月18日夕刻に高値を付けた後にやや下げてから19日夜に一段高している。このため、18日夕高値を直近のサイクルトップ、19日朝安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りと仮定する、トップ形成期は21日夕から25日夕にかけての間とし、弱気転換は19日未明安値割れからとする。
60分足の一目均衡表では5月14日深夜の一段高で遅行スパンが好転し先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新が続かないと遅行スパンが悪化しやすくなると警戒し、遅行スパン悪化からは下げ再開とみて安値試し優先とする。またその際は先行スパンが下値支持帯となりやすいと思われる。
60分足の相対力指数は19日夜の急伸で85ポイントまで上昇したが、その後の反落では50ポイント台にとどまっているので70ポイント超えからは再び80ポイントを目指す可能性がある。ただし連騰によりかなりの買われ過ぎ状態のため、50ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月20日朝安値15.75円を下値支持線、19日夜高値15.92円を上値抵抗線とする。
(2)15.75円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.92円超えからは16.10円前後への上昇を想定する。16.10円以上は反落注意とするが、15.75円以上での推移なら21日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)15.75円割れからは弱気転換注意とし、19日朝安値15.56円割れからは弱気サイクル入りとみて15.40円前後への下落を想定する。15.40円以下は反発注意とするが、19日朝安値を割り込んだ水準での推移なら21日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
5月20日
16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9、予想 47.0)
19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%、予想 -84.0%)
5月21日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
16:00 5月景況感 (4月 66.8、予想 55)
16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6、予想 57.0%)
16:00 4月観光客数前年比 (3月 -67.8%、予想 -97.0%
5月28日
16:00 5月経済信頼感指数 (4月 51.3)
5月29日
16:00 1−3月期GDP 前年比 (前期 6.0%)
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