トルコリラ円見通し 史上最安値から6連騰、4か月サイクルのリバウンド続く(20/5/15)

14日深夜にドル円が上昇したことで15日未明には15.53円まで一段高した。

トルコリラ円見通し 史上最安値から6連騰、4か月サイクルのリバウンド続く(20/5/15)

【概況】

〇トルコリラ円は暴落一服で6日連続の日足陽線で反発、15日未明に15.53まで一段高
〇対ドルも5/7の史上最安値から6日上昇
〇3月トルコ鉱工業生産、小売売上高大幅悪化
〇対ドル対円ともに下落再開の可能性
〇5/21の中銀会合が転機となる可能性も、市場は利下げ継続を予想
〇15.40円を当初下値支持線、15.53円を上値抵抗線とみる

トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、暴落一服で当日から6日連続の日足陽線で反発している。5月12日夜高値で15.37円を付けた後は連騰一服で横ばいに入り14日の日中までは新たな高値更新へ進めずにいたが、14日深夜にドル円が上昇したことで15日未明には15.53円まで一段高した。
トルコリラは対ドルで5月7日に7.27リラの史上最安値まで大幅下落して2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったが、その後は売り一巡から反騰に入っており、5月7日当日から6日連続でドル安リラ高へと戻している。

【4か月サイクルでの反騰】

トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルにおいて1月6日底から4か月目となる5月7日安値で底を付けて反騰入りしている状況にある。2018年8月のトルコ通貨危機後は2019年1月3日底、同年5月9日底、同年8月26日底、2020年1月6日底と底打ちしてきた。今回の上昇もこのサイクルの底打ちによる上昇と考えられるので、ごく短期的な反騰に過ぎないとは侮れないが、1月6日底からの上昇は1月17日までの短期間で終了し、3月25日への中間反騰でも上昇は1か月も持たなかったため、今回も1月17日への上昇時並みないしは3月25日への中間反騰並みと考えてみる。戻り幅の半値以上を削るか、15円割れから続落に入る場合は下げ再開を疑う。5月21日のトルコ中銀金融政策発表が転機になる可能性もあると注意する。

【トルコ経済指標の悪化、徐々に目立ち始める】

リラ安発生の背景は(1)新型コロナウイルスの感染拡大に伴う新興国通貨全般への売り圧力、(2)トルコ自身の感染拡大と経済活動停滞、(3)トルコ中銀による8会合連続での利下げによるマイナス金利状態、(4)外貨準備高の減少による通貨防衛力への懸念等であった。トルコ国内の感染爆発は峠を越えた印象があるものの経済活動の停滞は続き、世界的な停滞も改善しない状況にあるため、暴落商状一服で売られ過ぎに対する揺れ返しの上昇が一巡すると対ドル、対円でのリラ安がいつ再燃しても不思議ない状況にある。

【概況】

5月14日に発表された3月のトルコ鉱工業生産は前年比マイナス2.0%となり、2月のプラス8.5%から大幅に悪化した。前月比はマイナス7.1%となり、リーマンショック時の2009年1月のマイナス6.0%を超えた。手元にある2005年以降の統計では過去最悪となった。
3月の小売売上高は前年比マイナス0.2%となる2月のプラス11.7%から急落した。前月比はマイナス8.1%となり、2018年9月のトルコ通貨危機時のマイナス6.6%を超えてこれも統計のある2005年以降で最悪の落ち込みとなった。
トルコの感染発生は3月中旬からで、爆発的な感染増加と都市封鎖等が始まったのは4月からである。これらの統計は3月後半時点までの状況を反映しているのに過ぎず、4月の統計ではさらに悪化も懸念される。
景気悪化の中で5月21日にはトルコ中銀の金融政策決定会合がある。すでに8会合連続で利下げをしているが、対円及び対ドルでの史上最安値を更新した直後でもあり、追加利下げによる景気対策効果と通貨安への影響を睨みながら難しい決定となるのだろうと思われる。市場は利下げ継続を予想している。

【トルコ国内の感染者増ペースは鈍化を維持】

5月14日時点での世界の感染者数は452万人を超え、死者は30.3万人を超えた。米国は前日比2万5837人増で145万人を超え、死者も8万6892人に増えた。ロシアは14日に前日比9974人増の25万2245人となり米国とスペインに続く第三位となった。ブラジルも1万3761人増で20万人を超えて世界6位となった。欧州の感染爆発が峠を越えて米国もピークに来ているのだろうが、感染爆発エリアは他へ広がっている。
トルコの感染者数は5月14日時点で前日比1635人増の14万4749人、死者は55人増の4007人となった。14日の検査数は3万4281人に行われている。退院は2315人で回復者の累計は10万4030人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向にあり、5月7日以降は2000人を切った状況を続けている。
トルコは13日に14歳以下の子供の4時間限定での外出を許可した。65歳以上と20歳以下の外出禁止令は続いているが、徐々に規制を緩和し始めている。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日午後の史上最安値から反発した後に5月8日夜へ反落したものの新たな底割れを回避して戻り高値を切り上げたため、12日朝時点では7日午後と9日未明の両安値をダブルボトムとした強気サイクル入りとした。またサイクルトップ形成期は13日から15日にかけての間と想定したが、12日夜高値の後は新たな高値更新へ進めずに横ばい推移となっていたため、14日午前時点では既に12日夜高値でサイクルトップを付けた可能性があるとした。5月14日夜までは横ばいが続いたが、深夜に一段高となっているため、12日夜高値を直近のサイクルトップ、14日朝安値を同サイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと考える。新たなトップ形成期は12日夜高値を基準として15日夜から19日夜にかけての間と想定し、15.40円以上での推移中は上昇余地ありとするが、15.40円割れからは弱気転換注意とし、14日朝安値15.28円割れからは弱気サイクル入りとして19日朝から21日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月14日深夜の一段高で遅行スパンが好転し先行スパンを上抜いた状況を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新が続かないと遅行スパンが悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは下げ再開とみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は14日深夜の上昇で80ポイントに到達している。かなりの買われ過ぎのため、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行発生に注意し、60ポイント割れからは下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、15.40円を下値支持線、15日未明高値15.53円を上値抵抗線とする。
(2)15.40円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.53円超えからは15.60円前後への上昇を想定する。15.60円以上は反落注意とするが、15.40円以上での推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)15.40円割れからは弱気転換注意とし、14日朝安値15.28円割れからは弱気サイクル入りとみて15.20円、次いで15.10円前後への下落を想定する。またその際は4か月サイクルにおける反騰一巡の可能性にも注意する。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月20日
 16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9)
 19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%)
5月21日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
 16:00 5月景況感 (4月 66.8)
 16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6)

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