トルコリラ円見通し 史上最安値更新の大幅下落一服で戻すが変動の激しい展開に(20/5/11)

5月11日朝は15.06円まで上昇して開始し、15円の壁を超えてきている。

トルコリラ円見通し 史上最安値更新の大幅下落一服で戻すが変動の激しい展開に(20/5/11)

トルコリラ円見通し 史上最安値更新の大幅下落一服で戻すが変動の激しい展開に

〇トルコリラは先週、2018年トルコ通貨危機時の安値を下回る史上最安値14.61を記録
〇トルコ売りの要因は コロナショックによる新興国通貨売り、トルコ自体の感染拡大、中銀の8会合連続利下げによる実質マイナス金利化
〇トルコ当局はCITI、UBS、BNPパリバの国内リラ取引を禁止
〇トルコは感染者拡大するも医療崩壊を回避、他国への医療品等の援助も行ってきた事実も
〇エルドアン大統領は自国のいち早くのコロナ克服に自信を示す
〇トルコ円は相場乱調ながら幾許の反発余地も
〇14.80をサポート15.10をレンジスタンスと置く
〇14.80以上で推移しているうちは15.20台へ上値試しの余地あり 
〇14.80割れでは、14.20までの段階的続落を警戒

【概況】

トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新した。トルコリラが対ドルで7.27リラを付けて2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったことがきっかけだった。トルコリラ円はすでに2018年8月の15.52円を4月15日に割り込んで一足早く史上最安値を更新していたが、コロナショックによる新興国通貨売りの勢いが増す中でドル高リラ安が進んだため、5月5日には15円を割り込んで下げ足を速めていた。
5月7日午後安値の後は対ドルでのリラ売り一服で買い戻され、7日夜には15.00円まで上昇してから14.64円まで反落、その後何度か15円を付けては跳ね返されて9日未明には14.68円まで再び売られたが、9日早朝には14.93円まで戻して先週を終えていた。
週明けの5月11日朝は15.06円まで上昇して開始し、15円の壁を超えてきている。

【対ドルでの史上最安値更新後は下げ一服】

トルコリラは5月7日に対ドルで一時7.27リラを付けて従来の史上最安値であった2018年8月の通貨危機時につけた7.23リラを超えて過去最安値を更新した。@新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動停滞の世界的な広がりによる新興国通貨全般への売り圧力、Aトルコ自身の感染拡大と経済活動停滞、Bトルコ中銀による8会合連続での利下げ断行で政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質的なマイナス金利状態が発生したこと等からブラジルレアルと共に投機筋による売りのターゲットとされたようだ。

2018年のトルコ通貨危機は、リーマンショック後の世界的な大規模金融緩和による過剰流動性が新興国投資へと向かってきた流れが米連銀による金融緩和終了により逆流し始めたために発生した新興国通貨全般の下落を背景としていたが、より直接的には2018年7月にトランプ米政権がトルコへの経済制裁を発動したことがきっかけだった。2016年10月のトルコでのクーデター未遂事件にかかわる米国人牧師等への米国による釈放要求をはねつけてきたことへの報復として米国が鉄鋼・アルミ等への関税を大幅に引き上げたことがリラ暴落を加速させた。この2018年8月トルコ通貨危機はトルコ当局のなりふり構わない取引規制やトルコ中銀による大幅利上げ等によってひとまず収まった。

トルコ中銀による今年4月までの8会合連続の利下げは2018年の通貨危機による金利上昇をもとの水準へ修正する動きであり、通貨危機がひとまず収まったことでトルコ景気も持ち直してきた。そこへコロナショックが発生したために再び新興国通貨売りの大きな流れとなり、その中でも感染拡大の影響が顕著となる中で実質マイナス金利状態まで利下げを強硬してきたことによりトルコリラが再び売りのターゲットとされたという状況と思われる。
トルコ金融当局は取引規制へ動いており、5月7日にはトルコ国内の銀行がシティグループやUBS及びBNPパリバ等とのリラ取引を行うことを禁止した。規制強化は一時的には効果を上げカンフル剤になるが、流動性低下につながりトルコへの投資意欲を削ぐものにもなりリラ売り圧力を長期化させかねないものと懸念される。5月14日には鉱工業生産や小売売上高の発表があり、コロナショックの影響も顕著になってゆくと思われるが、5月21日にはトルコ中銀の金融政策決定会合もあり、9会合連続の利下げ可能性も予想されているため、対ドル及び対円でのトルコリラ動向は波乱含みの展開が続きやすいと思われる。

【トルコ国内の感染者は漸減傾向、治療観光推進の姿勢も】

5月11日朝時点での世界の感染者数は418万人を超え、死者は28万人を超えた。米国は感染者が136万人台に増加、死者も8万人を超えた。欧米での感染者増加ペースは鈍化傾向も見られるが世界全体の感染者増加ペースは爆発的な伸びが続いている。ロシアは感染者数が前日比1万1012増の20万9688人で世界5位、ブラジルは感染者数16万2699人で前日比1万1123人増で世界8位となっているが、この二国の急増ぶりが目立つ他、新興国や発展途上国での拡大も目立つ。
トルコの同時点での感染者数は13万8657人で前日比1542人増、死者は47人増の3786人。24時間で3万6187人の検査が行われており、退院者は3211人、回復者の累計は9万2691人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに漸減傾向にある。

エルドアン大統領は5月10日の演説で、「先進諸国さえもなすすべがなくなった新型コロナウイルス流行の過程をトルコは自国の必要をまかなうだけにとどまらず、支援をすることによって切り抜けてきた。我々は非常に世界諸国よりも早くこの問題を乗り越えると信じている」と述べた。また大統領はイスタンブール県のアタチュルク空港とサンジャクテペ地区の病院に関して「医療観光目的で外国から来た人々はここに飛行機や救急航空機で来る。ここで治療を受けた後に見送る」と述べて医療観光を重視する姿勢を示した。トルコは感染者が急増したものの医療崩壊を回避しつつ世界へ医療品等の援助も行ってきた。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして、8日午前時点では7日夜から12日にかけての間への上昇を想定し、7日午後安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして12日午後から14日午後にかけての間への下落を想定するとした。
9日未明へいったん反落したが底割れを回避して戻しているのでまだ上昇余地ありとみる。また7日午後と9日未明の両安値をダブルボトムとして上昇期が13日から15日にかけての間へ延長される可能性もあると思われる。ただし乱調な展開のため、14.80円割れからは弱気転換注意とし、7日午後安値割れからは下げが加速しやすいと警戒する。
また、概ね4か月前後の底打ちサイクルにおいて、1月6日底から4か月を経過したところであり史上最安値を更新した後でもあるので、一定のリバウンド期に入る可能性もあると注目する。

60分足の一目均衡表では5月11日早朝への上昇で遅行スパンが好転し先行スパンも上抜いている。乱調な展開だが、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は7日午後への一段安において指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて上昇した。5月9日未明への下落で40ポイント台まで低下したがその後は60ポイント台まで持ち直している。40ポイント台へ低下しても50ポイント以上へ切り返すうちは上昇余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.80円を下値支持線、15.10円を上値抵抗線とする。
(2)14.80円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.10円超えから続伸の場合は15.20円台への上昇を想定する。15.20円以上は反落注意とするが、14.80円以上での推移なら12日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)14.80円割れからは下げ再開を警戒して7日午後安値14.61円試しとし、底割れからは14.40円、次いで14.20円前後へと段階的に下値目途を引き下げる。また7日午後安値を割り込んだ後も14.80円以下での推移なら12日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月11日
 16:00 2月失業率 (13.8%、予想 14.9%)
5月13日
 16:00 3月経常収支 (2月 −12.3億ドル、予想 -32.0億ドル)
5月14日
 16:00 3月鉱工業生産 前年比 (2月 7.5%、予想 -4.7%)
 16:00 3月小売売上高 前年比 (2月 10.6%、予想 -4.4%)
 16:00 3月小売売上高 前月比 (2月 1.4%、予想 -6.8%)
5月20日
 16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9)
 19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%)
5月21日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
 16:00 5月景況感 (4月 66.8)
 16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6)

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