米指標悪化はほぼ想定内、米中対立を警戒か(週報5月第2週)

先週のドル/円は、結局「行って来い」。一時は3月17日以来となる106円割れまで下落する局面も観測されたが、終盤はドルの買い戻しが優勢に。

米指標悪化はほぼ想定内、米中対立を警戒か(週報5月第2週)

米指標悪化はほぼ想定内、米中対立を警戒か

〇コロナ起源説をめぐる米中対立が加速
〇米国をはじめ実体経済への影響も次第に明らかに
〇コロナ感染拡大は予断を許さない中、米政権中枢部への感染拡大は要警戒
〇当面106円台中心のレンジ取引か
〇「指標悪数字=ドル売り」の反応より「指標好数字=ドル買い」に注意を要す
〇週間予想レンジ 105.80-108.10円

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円は、結局「行って来い」。一時は3月17日以来となる106円割れまで下落する局面も観測されたが、終盤はドルの買い戻しが優勢に。

前週末には、これまで「重体説」も飛び交っていた北朝鮮の金委員長が20日ぶりに姿を現したことが映像ベースでも確認されたほか、「コロナ起源説」をめぐりトランプ米大統領が「責任論と絡め、対中関税の引き上げも検討する」考えを示すなど、一段の強硬スタンスで挑むことが明らかに。
そうした状況下、週明け月曜日のドル/円は106.75-80円と前週末NYクローズよりも、若干のドル安・円高水準で寄り付いた。そののち週間高値の107.06円を示現したあとはドルが冴えず、同安値である105.99円まで1円以上値を下げている。しかし、106円をしっかり割り込めなかったこともあってか、週末にかけてはドルが反発。発表された4月の米雇用統計などを受け乱高下をたどるも、基調としてドルは戻り歩調を続け、週末NYは週初のオープンレートに近い106.70円レベルでの越週だった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「コロナ起源説をめぐる米中対立」と「コロナによる経済ダメージ」について。
前者は、先で取り上げたトランプ発言に加え、米国務長官からも「コロナの武漢起源説に多数の証拠がある」とのコメントが発せられていた。また、米紙WSJは「米教育省が武漢研究所と関係の深いテキサス大学に対し、コロナ問題で調査開始」と報道するなど、米国側の強硬姿勢は加速している感を否めない。また、そののちトランプ氏から「今後1-2週間中に中国が貿易協定を順守するか否かを明らかにできる」とした貿易問題と絡めた発言が聞かれ、沈静化していた貿易摩擦再燃の可能性も取り沙汰されていた。

対して後者は、外出自粛要請などの余波を受け、米大手小売で初めてとなる「衣料品のJクルーが破産法申請」を発表、フィットネス大手のゴールドジムを経営する「米GGIホールディングスが連邦破産法11条の適用を裁判所に申請」したことが明らかに。また発表された4月の米雇用統計・非農業部門雇用者数は、驚異の「マイナス2050万人」を記録したが、それでもミネアポリス連銀総裁などからは「実体より過小評価されている可能性」を指摘する声が聞かれていた。

<< 今週の見通し >>

新型コロナの感染拡大は主要な欧米諸国でピークアウトした感があるものの、依然として予断を許さない。ただ、ゆっくりと自粛要請や営業規制の緩和などに動き始めたところも少なくはない。そうしたなか、ABCニュースが「トランプ米大統領は停止していた経済活動の再開により、感染症による死者が増える可能性を認めた」と報じたように、ある意味で腹を括り規制解除に踏み切っている世界の指導者も多数観測されている。なんといっても史上初の出来事で、なにが正解か現状わからないだけに、「第2波襲来」の有無を含め動静をしっかりと見極めたい。

材料的に見た場合、「貿易を中心とした米中の対立」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」、「コロナ治療薬をめぐる動き」など、注目要因は依然として目白押しとなっている。そうしたなか、もっとも注意を要するのは、引き続き「新型コロナウイルス」に関連するニュースである。また、それとは別に、先週末に掛けて米副大統領報道官らによる新型コロナ感染が観測されるなど、トランプ政権中枢にジワリと魔の手が近づきつつあることは非常に気掛かりだ。仮にトランプ氏が罹患した場合には、為替だけでなく金融市場全般が大混乱に陥る可能性もある。

テクニカルに見た場合、先週は6日と7日、2度にわたり106円を一時割り込むも結果として失敗に終わった格好だ。少なくとも、ドルの下値リスクがことさら高いという状況でもない。ただ、反対にドルの上値も重そうにみえることから、しばらくは106円台を中心としたレンジ取引をたどり、再び方向性の乏しい上下動になるといった声も聞かれていた。

今週は、4月の消費者物価指数や5月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値といった重要な米経済指標が発表される予定となっている。先でも少し触れたように、先週発表された4月の米雇用統計をはじめ、最近発表される米経済指標は全般的に冴えないものが多いが、それでも為替市場で一段のドル売りなどが進行しているわけではない。つまり、「指標悪数字=ドル売り」の反応は限定的で、むしろ「指標好数字=ドル買い」に注意すべきであるのかもしれない。

そんな今週のドル/円予想レンジは、105.80-108.10円。ドル高・円安については、11日現在107円半ばに位置し、緩やかな下降をたどってくる移動平均の25日線をめぐる攻防にまずは注視。過去1ヵ月程度、ドルの上値を阻んできただけに、しっかり超えれば、今度は逆にサポートになる可能性も考えられる。
対するドル安・円高方向は、先週安値で2度トライして割り込めなかった105.99円が最初のサポートに。底堅そうだが、割り込むようだとフィボナッチを参考にした105.20円レベルがターゲットとなりそうだ。

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