トルコリラ円見通し ドル高リラ安+円高の再燃(20/3/30)

今後は中南米や中近東・東南アジア等への波及も懸念されるため新興国投資マネーの逆流によるトルコリラ売りへの警戒感も強まってゆくのではなかろうか。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安+円高の再燃(20/3/30)

【概況】

トルコリラ円は新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場全般の動揺による急激な円高に加え、新興国通貨売り及び手元流動性確保のためのドル全面高によるドル高リラ安が重なったために3月9日には16.26円まで大幅下落した。
ドル全面高がさらに強まる中でドル円は3月9日から急激な円安となったためにトルコリラ円はリラ安と円安に挟まれて持ち合いとなっていたが、3月23日の米連銀による無制限の米国債等購入方針表明やトランプ政権の2兆ドル規模の経済対策等によりドルが反落する中で円安が継続したために3月25日夕刻には17.44円まで戻した。
3月20日以降もドル高円安は継続したが徐々に上値が重くなり3月9日からのV字反騰が一巡して26日からは円高がぶり返し、新興国への感染拡大等を背景に新興国通貨売りも再燃し始めたために3月27日は16.70円まで失速して先週を終えた。
週明けの3月30日朝は16.62円まで安値を切り下げており、25日夕刻からの下落感が強まっている印象だ。

【ドル高一服と円高】

ドル円は3月9日安値101.23円からの上昇が続いて3月25日未明には111.71円まで高値を切り上げたが、3月20日以降は徐々に高値も安値も切り上げつつもレンジが縮小するウェッジ型三角持ち合いとなり、26日に110円を割り込んで持ち合いから転落した。3月27日は108円も割り込んで先週を終えた。週明け午前も108円以下で安値を切り下げている。
米国勢によるドル買い戻しの動きがひとまず一巡する中で米国での感染爆発が一段と深刻化していることでドル安円高がぶり返している印象がある。しかし3月9日への暴落的な円高やその後のV字反騰にみられるように極めて不安定な状況にある。日本における感染拡大も爆発の一歩手前にあるため、今後の状況次第では日本株安と円売りへ進む可能性もないとは言えない。

ドル/トルコリラはドル全面高が進む中で3月18日から23日へ4日連続でドル高リラ安となり3月23日深夜に6.6185リラを付けてこの間の高値を更新したが、ドル買い一巡により24日から26日へ3日間の下落となった。しかし、トルコを含む新興国への感染拡大も深刻化する中で投資家の新興国債券・株・通貨売りの動きは強まっており3月27日は0.89%高のドル高リラ安となり、週明けもドル高リラ安気配で開始している。
イスタンブール100株価指数は1月22日に天井を付けて下落に転じてきたが、感染爆発の深刻化により3月5日の戻り高値から一段安に入り3月17日まで大幅下落が続いた。その後は各国の金融緩和や経済対策等への期待感で持ち直していたが、3月27日はNYダウが反落する中で前日比3.72%安と下落した。

【トルコの感染者は9千人を超える】

新型コロナウイルスの感染者は世界全体で27日朝時点では53万人へ急増したが3月30日朝時点では72万人を超えて死者も3万3958人に急増した。
米国の感染者数は3月27日朝時点で85268人となり中国本土の81285人を超えて世界最大となったが、3月30日朝時点では14万2106人、死者は2479人で27日朝の1293人から急増した。イタリアの死者は1万人を超え、スペインは感染者80110人死者6803人(前日比718人増)となり、欧米の感染爆発が一段と深刻化している。
トルコでも感染爆発に入っている。トルコは3月11日に国内初の感染者が確認されて欧米の感染拡大の中でも比較的静穏な展開だったが、3月後半から感染者が急増し始め、3月27日朝時点では感染者3629人死者75人だったが、30日朝時点では死者9217人死者131人に急増した。

既に国境封鎖や航空機乗り入れ停止、外出自粛要請等が行われており、イタリアのような医療崩壊は発生していないようだが、欧州での感染爆発のようにじわじわと感染者が拡大しながら途中から爆発的に増える状況に陥っている。
トルコはシリア内戦による大量の難民も抱えているが、今後は難民の感染問題や、感染が拡大する中での難民の越境問題でギリシャや欧州等との対立が深刻化する可能性もあると懸念される。

米金融大手バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは3月27日の週間投資資金動向調査において、債券ファンドから短期金融商品ファンドへの投資資金シフトが過去最高のペースとなり、投資適格級債券ファンドや新興国債券ファンド及び株式ファンドからの資金流出が急増しているとしたが、欧米の感染爆発と経済活動停滞が長期化しつつ、今後は中南米や中近東・東南アジア等への波及も懸念されるため新興国投資マネーの逆流によるトルコリラ売りへの警戒感も強まってゆくのではなかろうか。

【4か月サイクルの下落再開と当面のポイント】

【4か月サイクルの下落再開と当面のポイント】

トルコリラ円では概ね4か月前後の底打ちサイクルが見られる。2018年8月のトルコリラ危機による急落一巡後は、2019年1月3日、同年5月9日安値、同年8月28日、2020年1月6日と底を付けてきた。すでに2月後半からの下落で1月6日安値を割り込んでいるため、現状は4か月サイクルの下落期にあり、次の底形成期となる5月にかけての間へ下落継続しやすい状況にある。
3月9日安値からは下げ一服で戻していたが、3月25日の戻り高値から失速して3月9日安値に対する余裕も乏しくなっているため、安値更新から一段安へ進みやすい状況にあると思われる。
2019年1月底以降は18ドル前後の下値支持線で支えられ、18ドルを割り込むところは買い戻されてきたが、2月後半の下落でこの支持線から転落したため、チャート上の下値目途は2018年8月の通貨危機時に付けた安値15.52円まで切り下がっている印象だが、2018年8月安値は過去最安値であり、安値更新の場合は10円の大台を維持できるかどうかという水準へ下値目途が切り下がる可能性も懸念される。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事が「世界がリセッションに入ったのは明白だ」「リーマン・ショックと同じかさらに深刻になる可能性がある」とし、IMFに対する新興国等の金融支援要請が殺到しており27日時点で80カ国を上回っているとも述べたが、新興国通貨危機的な状況に陥る場合はトルコリラへの売り圧力も強まると警戒される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当面は17円を上値抵抗線とし、下回るうちは3月9日安値16.26円を試す流れと考える。
(2)16.85円から17円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。仮に17円に乗せても維持できずに16.85円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)3月9日安値前後ではいったん買い戻しも入る可能性があるが、底割れから下げが加速する場合は16.00円、15円台中盤を目指す可能性も出てくると注意する。

【当面の主な経済指標等の予定】

3月31日
16:00 2月貿易収支 (1月 -44.5億ドル)
4月01日
16:00 3月イスタンブール製造業PMI (2月 52.4)
4月03日
16:00 3月消費者物価指数 前年比 (2月 12.37%)
16:30 3月消費者物価指数 前月比 (2月 0.35%)
16:00 3月生産者物価指数 前年比 (2月 9.26%)

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