【概況】
トルコリラ円は10月後半からの持ち合い下限であった11月15日未明安値18.77円を12月7日未明に割り込んで持ち合い下放れとなり12月10日には18.64円まで続落した。12月13日夜高値18.95円までいったん戻したものの、12月13日から12月20日までは5日連続の日足陰線で一段安となり、12月20日未明にはドル/トルコリラでのドル高リラ安に加えてドル円が109.15円まで急落したことが重なって18.33円まで安値を切り下げた。その後は大幅下落に対する突っ込み警戒感とドル円がやや持ち直したことで12月20日夜には18.48円まで戻したが、週明けの12月23日は朝安値で18.37円まで反落してから夕刻高値18.44円まで若干戻した程度で戻りは鈍く、24日早朝には18.35円まで下げて20日未明安値割れへの余裕が乏しくなっている。
【シリア情勢にきな臭さ】
一時はシリア情勢の緊張やロシア製兵器購入による米国との対立や経済制裁等の地政学的リスクが意識される状況もあったが、現状はひとまず落ち着いている。しかし12月16日以降は再びシリア北西部イドリブ県で戦闘が激化してシリア難民数万人がトルコ領域へ避難を開始していると報じられており再び緊張感が高まる気配もある。
エルドアン大朝両はトルコだけでは難民を受け入れられないと表明しているが、12月23日にはトルコ代表団がロシアを訪問してシリア情勢等について協議している。トルコはシリアのアサド政府軍と対峙しており、アサド軍はロシアに支援されている。そのロシアとトルコはロシア製兵器の購入やガスパイプライン等で協力関係にある一方でトルコはNATOでもある。中東で絶妙で緊張感のあるバランスを保っている状況だが、常に地政学的リスクの拡大感を市場が意識しても不思議ではない状況にはあるだろう。
サウジアラビア人ジャーナリストのカショギ氏がトルコのサウジ領事館で殺害された事件に関してサウジアラビアで行われた裁判では5人に死刑、3人に合計24年間の禁錮刑の判決が下された。トルコ外務省のアクソイ報道官はこの判決に対して「この殺人事件が全面的に解明され、正義が貫かれるようにと望んだ我が国と国際社会にとって大いに期待外れ」と批判している。ただちにトルコとサウジに緊張が走るものではないが、中東の政治バランスに暗雲をもたらすものとして注意したい。
【対ドルでのリラ安が進む】
トルコ中銀は12月12日に4会合連続での大幅利下げを決定し、エルドアン大統領はさらに政策金利もインフレ率も一桁を目指すと公言している。一方で米連銀は今年3度の利下げにより当面は利下げを打ち止めとして様子見を続ける姿勢を示した。両者の金融政策スタンスの相違によりドル/トルコリラではドル高リラ安へ傾斜しやすい状況にある。
ドル/トルコリラは12月13日から12月19日まで5日連続の陽線でドル高リラ安が進行し、今年10月15日高値を突破して5月以来の高値水準となった。12月20日は上げ一服だったが23日はさらに高値を5.9564リラまで切り上げている。10月15日の高値を超えたことにより、チャート上の上値目処は5月9日高値6.2465リラまで切り上がってきている印象だ。
このドル高リラ安がトルコリラ円での下落感を強めているため、ドル円が小動きに止まればドル高リラ安に押されてトルコリラ円は一段安しやすく、リスク回避材料からドル円でも円高となれば、対ドルでのリラ安に円高による売り圧力も重なってくる。こうした動きが10月からの持ち合いを下放れさせ、さらに続落基調となっている背景だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月20日未明安値で直近のサイクルボトムをつけた。その後は新たな底割れに至っていないものの20日夜高値からジリ安推移のため、既にサイクルトップをつけて新たな弱気サイクル入りしている可能性がある。
12月20日未明安値を割り込む場合は次のボトム形成期となる25日から27日朝にかけての間への下落を想定する。ただし底割れを回避して20日夜高値を上抜く場合は20日未明と24日朝の両安値をダブル底として強気サイクル入りする可能性も多少あると思われる。
60分足の一目均衡表では12月20日夜への反発で遅行スパンが一旦好転したものの、その後の下落で再び悪化している。20日夜及び23日午後の高値は先行スパンが抵抗となっている。先行スパンを上抜き返せない内は一段安警戒とし、遅行スパン悪化中は安値試し優先と考えるが、先行スパンを上抜き返す場合はダブル底形成からの反騰入りとなる可能性が出てくるため遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月20日未明安値18.33円を下値支持線、12月23日午後高値18.44円を上値抵抗線とみておく。
(2)23日午後高値を下回る内は下向きとし、20日未明安値割れからは18.20円前後への下落を想定する。18.20円以下は反発注意とみるが、20日未明安値を割り込んだ後も18.34円以下での推移なら25日以降も安値試しを続けやすいとみる。
(3)12月23日午後高値を上抜く場合は20日夜高値18.48円試しを想定する。20日夜高値を超えずに18.40円割れへ失速する場合は下げ再開とみるが、20日夜高値を超える場合は20日未明と23日朝の両安値をダブル底とした反発期とみて18.55円前後への上昇を想定する。ただしその場合も10月後半からの持ち合いから転落した流れ、及び概ね4か月前後の底打ちサイクルにおける底形成の下落期は継続してゆくのではないかと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
12月26日
16:00 12月景況感 (11月 102.00)
16:00 12月設備稼働率 (11月 77.2%)
12月30日
16:00 12月経済信頼感 (11月 91.3)
12月31日
16:00 11月貿易収支(10月 -18.1億ドル)
1月02日
16:00 12月のイスタンブール製造業PMI(11月 49.5)
1月03日 12月消費者物価 前年比 (11月 10.56%)
12月消費者物価 前月比 (11月 0.38%)
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2019.12.25
トルコリラ円見通し 12月20日未明から下げ渋るが底割れへの余裕乏しい(19/12/25)
今週も23日午後高値18.44円、24日午後高値18.41円と戻り高値が切り下がってきており、12月20日未明安値に対する余裕が乏しくなっている。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:山中 康司
2019.12.23
トルコリラ円ショートコメント(2019年12月23日)
トルコリラは対円だけでなく対ドルでも大きく下落し、このままで行くと6.00の大台をも視野に入れそうな勢いです。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。