今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週を通して上下しながらもじり安の傾向が見られ、先々週の上げに対して全てを下げ、更にドル高地合いも加わって金曜には1.1017レベルと10月15日以来の安値をつけています。欧州の景気自体は弱いままですが、それに英国のブレグジットが総選挙に向けていまだ不透明であることや、英中銀のMPCで利下げを主張する委員が前回のゼロから2人に増えたことも重なりポンドも10月17日以来の安値となったこともユーロの足を引っ張ることとなりました。
ドル要因としてはドル円の週報に書きましたので、簡単に触れるに留めますが、米中通商協議が進展していることが株式市場で米国主要3株価指数を揃って史上最高値へと押し上げ、リスクオンの動きがドル高として捉えられてこととなります。欧州のファンダメンタル要因自体には目立った変化はありませんが、政治面ではいくつかの材料があります。
昨日はスペインで連立組閣失敗のため今年4月のやり直し総選挙が行われ、今朝の開票速報では与党は120議席程度と第1党ではあるものの過半数175には到底届かず、またカタルーニャ独立反対を掲げる極右VOXが議席倍増の52議席程度と躍進したものの右派をまとめても過半数には届かず、ますます連立組閣が難しい状況となっています。与党と少数議席を取っている各政党との連立となるという見方もあるようですが、またしばらく混乱は続きそうです。
そして、12月の総選挙まで1か月となった英国の各政党の状況ですが、英国政治の世論調査はおよそあてにならないものの、週末段階の集計ではだいたいどの調査機関も似たような結果となっていて、与党保守党の支持率が41%、労働党が29〜30%となっていて、自由民主党が15〜16%、ブレグジット党が6%、スコットランド民族党が5%といったところです。これも保守党とブレグジット党を離脱派、それ以外の主要政党を残留派と大雑把にカウントしても過半数となっていません。ここから選挙終盤まであくまでも参考にしかならないものの支持率の変化がどのように推移していくのか注目材料ではあります。
しかし、今週時点で言えることは現在進行形で動いている欧州の政治材料は不透明、つまりユーロの上値を抑える材料とされやすいとは言えます。また、今週は目立ったイベントは無いもののドイツとユーロ圏のGDP、ECB理事の講演が注目材料となりますが、これらも欧州の景気低迷が続く中で悪材料に反応しやすい傾向がありますので、なかなかユーロを買う材料が見つけにくい状況が今週も続きます。
外部要因として、米中協議進展から難航へといったドル売り材料が出てくるとすれば、それがユーロ買いに繋がる可能性はありますが、まだ協議がすぐに終わる感じでは無さそう(米政権も慎重に12月にずれ込む見通しでいる様子)ですから、基本的には戻り売りが出やすく、1.10の大台をトライし下値を探る展開を考えた方が素直な見方と言えるでしょう。
テクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。
10月初めからの上昇チャンネル(ピンクの細線平行線)は先週の下げで明確に下抜け、さらに10月と11月の高値でダブルトップの反転パターン(ピンクの楕円)を形成し、そのネックライン(ピンクの太線水平線)も下抜ける動きを見せました。これらを考えるとテクニカルには一段の下押しを試しやすいということになります。
下げのターゲットとしては10月安値と11月高値との61.8%押しとなる1.0994はあまりに近すぎますので、78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.0943(青のターゲット)を1.10大台トライ後の下値の目途と考えておくとよいでしょう。いっぽうでレジスタンスは下抜けたネックラインの水準1.1075レベルとなります。
多少の誤差も考え今週は1.0950レベルをサポートに、1.1080レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートを見ます。
ユーロ円は8月初めから10月中旬にかけて変形ダブルボトムの反転パターンを形成し、そのネックライン(青の太線水平線)を上抜けて上昇したものの、ここ1か月ほどは121円台前半から半ばにかけて非常に上値が重たい流れとなっていました。
直筋ではユーロドルの下げとドル円の上げで前者の勢いがやや強かったことから、ネックラインに近づいて次の動きを伺っている状況です。このネックラインが今度は10月中旬から先週までのラウンドトップの反転パターンのネックラインとなっていて、サポートでありながらも下抜けた場合はかなり下げが加速しそうなチャートに見えてきます。
ユーロの上値が重たい中でリスクオンの巻き返しによる円高が重なるとすれば、10月安値と高値の半値押しにあたる119円台前半を視野に入れてくる流れとなる可能性を指摘しておきます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
11月11日(月)
**:** NY市場休場
18:30 英国9月貿易収支
11月12日(火)
17:00 クーレECB理事講演
18:30 英国10月失業率
19:00 ドイツ11月ZEW景況感
11月13日(水)
16:00 ドイツ10月CPI
18:30 英国10月CPI・PPI
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
11月14日(木)
16:00 ドイツ7〜9月期GDP改定値
16:45 フランス10月CPI
18:30 英国10月小売売上高
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値
23:00 オランダ中銀総裁講演
11月15日(金)
17:00 メルシュECB理事講演
19:00 ユーロ圏9月貿易収支
19:00 ユーロ圏10月CPI
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月4日(月)
ユーロドルは東京市場が休場となったことからドル円同様にアジア市場では凪相場。欧州市場以降は株高の動きがリスクオンのドル高となったことから、ユーロドルも終日水準を切り下げ、1.1125レベルへと下げて安値引けとなりました。ラガルド新ECB総裁の講演では金融政策に関する言及は無く今後の発言へ先送りとなりました。
11月5日(火)
ユーロドルは、東京市場では前日の流れを受けたドル高ユーロ安が先行しましたが、欧州市場序盤にはリスクオンのユーロ円の買いもあって一時的に上昇する場面も見られました。しかし、その後は改めてドル高に追随する動きとなり、1.1064レベルまで売られての安値引けとなりました。
11月6日(水)
東京市場のユーロドルはドル円が若干ドル安の動きとなったからユーロも底堅い動きとなっていました。欧州市場序盤には経済指標が強めだったことに反応しやや買いが強まったものの、NY市場ではユーロ円の売りに押されて東京前場の水準へと押し、ユーロドルのレンジはわずか28pipsと動意薄の一日でした。
11月7日(木)
ユーロドルは、欧州市場序盤まではユーロ円のじり安とその後の急反発の動きからドル円と似た動きを見せていました。その後、英中銀MPCで利下げを主張したメンバーが2人いたことからポンド売りがユーロ売りに波及し、NY市場では1.1036レベルまで下押ししましたが、引けにかけては安値圏でのもみあいのまま引けました。
11月8日(金)
ユーロドルは、欧州市場に入るまではわずか10pipsレンジでまったく動意の無い展開となっていましたが、前日までの上値の重たい流れに改めて目が向いたことや、NY市場に入ってからのドル円での売りがユーロ円にも波及したことから水準を下げ、1.1017レベルの安値をつけそのまま安値圏での引けとなりました。週末に投票が行われるスペインのやり直し総選挙もユーロの重石となっていました。
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