材料的にもテクニカルにも目先は底打ち(19/9/16)(週報9月第3週)

先週のユーロドルは、最大の注目材料となったECB理事会において、理事会内でも賛否のあったQE再開も含め、市場参加者の思惑に対する満額回答という結果でした。

材料的にもテクニカルにも目先は底打ち(19/9/16)(週報9月第3週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、最大の注目材料となったECB理事会において、理事会内でも賛否のあったQE再開も含め、市場参加者の思惑に対する満額回答という結果でした。中銀当座は0.1%下げて―0.5%へ、そして金利の階層化は行われなかったことで単純にとマイナス金利の深堀りという形になりました。また、9月から長期オペが開始されることは既に決まっていたため、QE再開に関しては五分五分という見方でしたが、これも11月から月額200億ドル規模で再開し、フォワードガイダンスも期限が無くなり、結果が出るまでという日銀スタイルとなりました。

これら3つの統合的な緩和策と景気見通しに対する下方修正を受け、ドラギ総裁の会見直後には1.0927レベルと9月3日安値に並びましたが、そこからの下押しが出来なかったこと、また今回の理事会決定が予想以上の緩和となり当面次は無いであろうとの判断から、材料出尽くしで急速に値を戻すこととなりました。ただ、QEを再開したことで、今後の更なる緩和策としては債券購入額を増やすという流れも考えられますが、金曜には早くも一部理事会メンバーから理事会決定に対する不満が飛び出します。

オーストリア中銀総裁はもともとタカ派で知られていますが、オーストリアやドイツなど北側とイタリアを中心とする南側と欧州内部での南北格差を改めて露呈したこととなります。次期ECB総裁のラガルドIMF専務理事は当初候補であったドイツ連銀総裁と比較してハト派な立場と見られていましたが、同氏もまた今回の決定に必ずしも賛成していないと取れる発言をしたことで、おそらくラガルド新総裁就任後しばらくの追加緩和は遠のいたという見方でよさそうです。ただ、これも実際に就任してECB内のポリティクスの洗礼を受けた後はどう変わるかはわかりません。

色々と物議をかもしたECB理事会ですが、材料的には出尽くし感があり、テクニカルにも9月の安値がダブルボトムのパターンとなってきたことで、短期的には上値追いをしやすく、長期的には依然として大きな下降トレンドのなかにあるという流れです。

上記のテクニカルな点について日足チャートを見ながら説明を加えます。

今週の週間見通しと予想レンジ

ユーロドル日足

まず直近の動きとしては9月3日安値と先週安値が並び、ダブルボトムとなっての反発です。1.10の大台を2度トライしながらも定着しなかったということで、当面は1.09台半ばから後半にかけては買いが出やすくなってくると考えられます。

また上値については、8月26日の戻り高値1.1164とECB理事会直後の安値(チャート内では1.0926と表示)との78.6%(61.8%の平方根)戻しが1.1113(青のターゲット)とほぼ金曜の高値と一致し、6月高値からのレジスタンスラインも上ヒゲでかすかに抜けた程度の誤差の範囲で抑えられています。

今週はこのレジスタンスから先週高値にかけての水準を上抜けられるかどうかがポイントとなってきます。そうした中で週末にサウジアラビアの原油施設の攻撃があり、月曜早朝はリスクオフからユーロ円の売りがユーロの上値を抑えていますが、金融政策面では材料が出尽くしとなっていますし、英国では北アイルランド与党がバックストップ条項に対して軟化してきている発言が出てきました。合意無き離脱のリスクが下がったことで金曜にはポンドが大幅高となっています。

この動き自体はユーロにとっても好材料となりますので、今週は改めて上値を追いやすく6月からのレジスタンスラインを上抜けて目先は底堅くなる可能性が高いのではないかと見ています。今週はFOMCと日銀会合後に上下にやや振れやすい流れを考えつつも。ECB理事会直前の水準であった1.1025レベルをサポートに、1.1125レベルをレジスタンスとする流れを見ておきたいと思います。

今週のコラム

今週のコラム

今週もポンドの日足チャートを見ます。

議会閉会を前にして合意無き離脱はしないとの決議自体は英国の都合ではあるもののポジティブにとらえられ、金曜には北アイルランド与党DUPがバックストップ代替案を受け入れる意向を示しました。この代替案という言葉が、もし8月のジョンソン・メルケル会談で話題に上った30日以内の代替案と同じだとすると、代替案による合意のある離脱が10月のEUサミットにおいて決まる可能性が出てきたこととなります。

まだ、どうなるかは不透明な部分を残しているとはいえ、金曜の急反発が後から振り返るときっかけとなり、9月3日安値が安値だったということもあり得そうな感じです。これまで、最大のネックであったのが与党保守党内の虚構離脱派と閣外協力をしている北アイルランド与党DUPに対する配慮だったことを考えると、もしこれで良い方向に回るならばジョンソン首相は強運を持っているかもしれません。

テクニカルには、チャンネルを上抜け、6月のもみあい水準に戻す流れにつながる可能性がありそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

9月16日(月)
20:15 フィンランド中銀総裁講演

9月17日(火)
18:00 ドイツ9月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏9月ZEW景況感指数
18:40 フランス中銀総裁講演
26:10 クーレECB理事講演

9月18日(水)
17:30 英国8月PPI
18:00 ユーロ圏8月CPI
24:15 フランス中銀総裁講演
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見

9月19日(木)
**:** 日銀会合結果公表
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:30 英国8月小売売上高
19:00 クーレECB理事講演
19:30 フィンランド中銀総裁講演
20:00 英中銀MPC結果公表

9月20日(金)
15:00 ドイツ8月PPI
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

9月9日(月)
ユーロドルは、NY市場までは小動きながらも底堅い展開。NY市場の朝方にドイツが規制を回避して財政支出を検討との観測記事に一時1.1068レベルの高値をつけましたが、引けにかけてはやや小緩んで引けました。

9月10日(火)
ユーロドルは終日方向感がはっきりせず値幅も28pipsに留まる閑散相場が続きました。ECB理事会を控えて動きにくさを感じさせる様子見の一日でした。

9月11日(水)
ユーロドルは東京市場では動きが見られず、欧州市場以降に売りが強まりました。買い戻しが一巡したことと、ECB理事会における追加緩和思惑を材料に改めて売りが強まり、NY前場には1.0985まで水準を切り下げ、引けにかけては1.10台前半へと戻して引けました。

9月12日(木)
ユーロドルはECB理事会までは動かずでしたが、?0.5%へとマイナス金利の深堀り、11月から月額200億ユーロのQE再開、フォワードガイダンスの強化と市場参加者が事前に期待した全ての緩和策が実施されることとなりました。併せてユーロ圏の成長率見通しを下方修正したこともありユーロドルは一時1.0927レベルまで安値を拡大しました。しかし、その後はこれ以上の緩和期待は難しいとの見方も広がり材料出尽くしから一斉に買い戻しに走り、1.1087レベルまで急反騰後にやや押して引けました。

9月13日(金)
ユーロドルは、前日ECB理事会後の乱高下を経てNY市場でも底堅い動きとなっていたことを受け底堅いスタートを切りました。欧州市場に入りタカ派のオーストリア中銀総裁がECBの決定を誤り、ハト派の次期ECB総裁ラガルドIMF専務理事も現在の金融政策に縛られないと発言したことがユーロ買い材料とされ1.1109レベルまで上伸。NY市場ではドル高の動きもあって買われる前の水準に押して一週間を終えました。

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