ユーロ週報 ECB理事会次第でどちらにも動きうる(9月第2週)

リスクオフの巻き返しによるユーロ円の買いとなり、一時1.1085レベルまで買い戻されましたが、週末にはポジション調整も加わり、1.10台前半へと押しました。

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ユーロ週報 ECB理事会次第でどちらにも動きうる(9月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週は週初に今週のECB理事会に向けての緩和思惑と英国議会の夏休み明け後の動向に対する懸念とが重なって、ユーロドルは2018年5月以来の1.0928レベルまで水準を下げました。しかし、英国議会で合意無き離脱をしないとの決定、また香港の条例撤回からリスクオフの巻き返しによるユーロ円の買いとなり、一時1.1085レベルまで買い戻されましたが、週末にはポジション調整も加わり、1.10台前半へと押しました。

今週は細かな経済指標の発表はありますが、12日のECB理事会が唯一最大の材料となってきます。現時点で確実視されているのは利下げです。これは前回の理事会において、今回の理事会において利下げとQE再開の可能性について言及したことによります。しかし、既にECBはマイナス0.4%と先進国の中でもマイナス金利が大きく、マイナス金利が与える影響にも考慮すべきという考え方も多い状態です。

そこで、今回はマイナス金利の深堀に伴って、金利の階層化が採用されるという見方が広がっています。これは、既に日本で日銀が実施しています。日銀の場合、日銀当座預金を3つに分類(基礎残高、加算残高、政策金利残高)し、基礎残高には+0.1%付利、加算残高はゼロ金利、いわゆるマイナス金利(−0.1%)は政策金利残高(当座全体の5%程度)にのみ適用されています。日銀と同じとは限りませんが、ECBに預けるお金を分類して一部の当座預金のみマイナス金利を拡大するという考え方です。ただ、この階層化には反対意見も多く単純にマイナス金利の拡大となる可能性も高そうです。

また、今回の理事会では債券購入の再開、フォワードガイダンスの強化といったこともテーマになりそうです。ECBは債券購入を停止し現状では再投資のみが行われていますが、債券購入を再開することで利下げとともに緩和を補強することになります。しかし、これもまた前回理事会の議事録を見る限り反対意見もあって、実現可能なのかどうかは怪しいところです。ECBは3月理事会で9月からLTRO(長期貸し出しオペ)を開始するとしていましたので、このLTROの運用を柔軟化する方向かもしれません。

そして、フォワードガイダンスの強化ですが、これは決定事項に加えて長期的に緩和を継続することを市場に確約することとなるでしょうが、日銀同様にまったく出口が見えない方向へと逆戻りすることだけは確かです。全体として、どのような内容となるのかは蓋を開けてみないとわからないものの、理事会議事録よりも市場参加者の緩和思惑の方が強い印象ですから、結果によっては失望的な動きとなりユーロ買い戻しのきっかけを与えるかもしれません。いずれにしても12日待ちです。

英国議会は10月中旬まで議会が閉会となります。閉会前のここまでの出来事としては英国議会は合意無き離脱はしない、総選挙はしない、離脱延期を求めると、これまでと何も変わっていないどころか、ジョンソン首相の強硬離脱示唆に反発する保守党議員も多く過半数割れというこれまで以上に混とんとした動きとなってきました。それに対してEU側も呆れているというのが正しいと思いますが、今のままでは更なる離脱延期は認めないという発言が出始めてきました。

となると、今の合意案では英国側が認められないわけですから、10月の議会再開直後のEUサミットにおいて合意無き離脱が決まる方向の可能性が高くなっているということになります。8月のジョンソン・メルケル会談でメルケル独首相が代替案についての言及がありましたが。この話はどこに行ってしまったのか、英国EU双方とも確定まで何も言えないのはわかりますが、もしEUサミット前に双方が合意できる代替案が出てくるのかどうか、それ次第という状況かと思います。まだ、しばらく時間はありますが、ブレグジットの不透明感がポンドの上値を抑え、その動きがユーロにも影響するという構図は変わらなそうです。

テクニカルにはどうでしょうか。長期的には先週示した週足チャートにおける1.0816レベルをターゲットとしている流れに変化はありません。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

ユーロドル 日足

中期的な6月高値からの下降チャンネルの中での動きにも変化は無く、直近では年初来安値からの反発が8月26日高値との61.8%戻しの水準で止まり下げに転じてきている頃ことから、これらの各点を基準とした逆N波動から短期の動きを検討することとなります。

年初来安値手前のターゲットとしては50%エクスパンションと61.8%エクスパンションの間となる1.09台半ば。動きが少ない場合の安値は同水準が目途となりますが、年初来安値を割り込んだ場合には78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションをターゲットに1.09割れを目指すこととなります。100%エクスパンションの1.08台半ばも十分視野に入るでしょうが(どちらもピンクのターゲット)、全てECB理事会次第です。上値は仮にECB理事会が想定よりも緩和的でないと市場が判断した場合でも1.11を若干超える程度ではないかと思われます。

今週は、理事会後の振れも考慮して1.0850〜1.1111をレンジとして考えますが、中心となるレンジは1.10の大台近辺という流れを見ておきます。

今週のコラム

英国議会では相変わらず「英国の都合だけ」でいくつかのポジティブな動きが見られた一週間でしたが、閉会を前にEUからは離脱延期に否定的な発言が出ている割にポンドは底堅い動きをしています。ポンドは悪材料を無視して買いが強い時には警戒的にならざるを得ません。日足チャートをご覧ください。

今週のコラム

ボンド/ドル日足

既にポンドも9月に入ってから2016年10月以来の安値を更新していますが、直近では8月高値を上抜ける動きを見せています。8月と9月とで底を打ったようにも見えるのですが、どうもこれがダマシになるのではないかと警戒してしまいます。

青い水平線に注目してほしいのですが、これは7月下旬に下げるまでの安値である1.2383レベルです。テクニカルには強いレジスタンスとなりうる水準ですから、今の水準から上値の余地は100pips程度ではないかと見ています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

9月9日(月)
15:00 ドイツ7月貿易収支
17:30 英国7月GDP
17:30 英国7月貿易収支
17:30 英国7月鉱工業生産

9月10日(火)
15:45 フランス7月鉱工業生産
17:30 英国8月失業率


9月11日(水)
 (特になし)

9月12日(木)
08:01 英国8月住宅価格指数
15:00 ドイツ8月CPI
15:45 フランス8月CPI
18:00 ユーロ圏7月鉱工業生産
20:45 ECB理事会結果公表
21:30 ドラギECB総裁会見


9月13日(金)
15:00 ドイツ8月PPI
18:00 ユーロ圏7月貿易収支

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月2日(月)
ユーロドルは東京市場米中双方の追加関税の影響も受けず動きは見られませんでした。しかし、海外市場に移りジョンソン英首相がブレグジット延期の場合は解散総選挙もと述べたことをきっかけにポンド安、その動きがユーロにも波及しました。一時安値をわずかに更新したものの、その後は安値圏でのもみあいのまま引けました。


9月3日(火)
ユーロドルは、東京前場に前日安値を下回ると仕掛け売りも加わる流れでスタート。その後も12日のECB理事会での緩和思惑が上値を抑え、ポンド売りとともに一時1.0928レベルの安値をつけました。NY市場ではドル売りの動きとポンド買い戻しにも引っ張られて高値圏での引けとなりました。


9月4日(水)
ユーロドルは、欧州市場序盤は香港の条例撤回のニュースからリスクオフの巻き返しでユーロ円の買いがリードしてのユーロ高、その後は英国議会の合意無き離脱をしないとの決定を受けたポンド買い戻しに引っ張られてのユーロ買いの動きとなりました。ユーロドルも1.1038レベルまで買い戻されて高値引けとなりました。

9月5日(木)
ユーロドルは、東京市場では動きが鈍かったものの欧州市場に入り前日からの英国議会の動きを好感したポンド買いがユーロにも波及、ユーロ円もリスクオンの買いが前日に続いて目立ち、一時1.1085レベルをつけました、しかし、NY市場ではドル買いの動きへと転じて引けにかけては1.10台前半へと押して引けました。


9月6日(金)
ユーロドルは、目立った材料が無い中で東京市場ではじり高、欧州市場序盤はじり安となっていました。その後、欧州市場では弱めのドイツ経済指標に反応しドイツ金利が低下する動きとともにユーロはじり安。NY市場では雇用統計後のドル売りとともに反転しましたが、引けにかけては改めてユーロ売りが強まり、安値圏に近づいての引けとなりました。

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