【概況】
6月24日にWSJ紙が中国資本が25%以上の企業に対して米財務省が買収規制を検討中と報じられたことで週明け25日朝に下落、さらに26日未明に109.36円まで続落したが、その後は突っ込み警戒感から戻して27日未明には110.21円を付けたが、110円台を維持できずに27日の日中は失速していた。
6月27日夜、中国資本による米企業への投資規制についてトランプ大統領が「最も厳しい制裁にはならない」と述べたと報じられたことで貿易戦争全面化懸念の緊張感がいったん後退、ドル円は急伸反応となって27日未明高値を超え、さらにテクニカルな買い連鎖から27日深夜には110.48円まで続伸した。
27日深夜以降はこの緊張緩和が崩れたため110.50円越えには進めず、米国株が大幅下落に転じたためにドル円も110円台序盤まで押されている。
【米国の貿易戦争問題関連発言に一喜一憂】
6月27日、トランプ大統領発言が報じられ、中国への制裁は新たな措置によるものではなく既存の対米外国投資委員会(CFIUS)による買収計画審査等で対応が可能であり、中国への規制は最も厳しい選択にはならないとされた。これが米中貿易戦争全面化への懸念を後退させるとしてドル円は反騰した。
しかしその後、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長がフォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューで「大統領の説明は中国に対する態度の軟化を示すものではない」と発言したため、緊張緩和は時期尚早として上昇していた米国株が急落に転じた。NYダウは165.52ドル安、ハイテク株中心のナスダック総合指数も116.54ポイント安と大幅下落となった。
リスク回避で米長期債が買われて長期債利回りはやや低下したが、同じく貿易戦争問題を抱えるEUへの懸念からユーロが急落、英ポンドも大幅下落、豪ドルも一段安となるなどドル高が進んだが、貿易戦争問題でのリスク回避によるドルストレートでのドル高であり、株安と米長期金利低下、リスク回避優先となればドル円では円高が勝ってくるため深夜以降はドル円も下落という反応を見せている。
貿易戦争問題も含め、トランプ大統領発言等は強弱感がころころ変わるため、いったん強気反応してもその梯子が外されるリスクが常に付きまとう。貿易戦争問題も最終的な二国間協定への調印等までこぎつけないうちは協議による妥協への期待を持たせつつも、ちゃぶ台返しが繰り返されると心得るしかないだろう。
【中国株安、人民元安を警戒】
ドル円は6月14日未明のFOMC直後高値と6月15日の日銀金融政策発表後の高値をピークとして下落したが、そのきっかけは貿易戦争全面化への懸念によるリスク回避の円高であった。この時にドルストレートではドル高でドル指数が急騰しているが、中国の人民元急落も15日から始まっている。
6月27日には中国人民銀行の公表する基準値が6日続落となったが、もう一方では上海株が急落症状に入っており、27日は5日続落で年初来安値を更新、2016年6月以来の安値となっている。下落規模は2015年6月時点からの大暴落と比較すれば緩いが、2016年1月底から2年間をジリ高で推移してきた上昇トレンドが崩れて急落し始めている。
2015年6月天井からの中国株暴落は世界連鎖株安を発生させ、2016年1月への一段安により米連銀は2016年に3回の利上げを想定していたものの結局2016年12月に1回だけの利上げにとどまったという経緯もある。日経平均は2015年6月天井から急落後、同年12月へ戻したがその後にもう一段安の大幅下落に見舞われたが、ドル円も2015年6月に天井を付け、2016年1月から大幅下落期に入った。貿易戦争問題の中心でもある中国市場動向から目が離せなくなってきている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成のサイクルでは、6月19日安値から4日目となる25日午後安値とほぼ同値の26日未明安値で目先の底を付けて反騰入りした。今回の高値形成期は26日から28日にかけての間と想定されたが、27日未明高値を27日深夜に上抜いてから反落しているため、21日高値から4日を経過した27日深夜高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした可能性がある。27日午後安値109.68円を割り込まないうちは上昇再開の可能性もあるが、110円割れからは弱気サイクル入りと仮定して次の安値形成期となる29日から7月3日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では27日未明への上昇で先行スパンを上抜き、27日午後の反落でも転落を免れた。先行スパンからの転落回避中は上昇再開の可能性があるが、先行スパン転落からは戻り一巡による下落期入りと考える。
60分足の相対力指数は27日未明高値形成時と27日深夜高値形成期との間では70ポイント前後でほぼフラットとなる弱気逆行型を見せているので、60ポイント台回復から続伸という流れにならないうちは30ポイント割れへの下落へ進みやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、27日午後安値109.68円を支持線、110.25円から27日深夜高値110.48円までを抵抗線とみておく。
(2)110円割れを切り返すうちは110.25円越えからの上昇再開余地ありとするが、110円割れから続落なら27日午後安値試しとし、底割れからは109円前後を目指す下落期入りと考える。
(3)6月15日高値110.90円、21日高値110.75円と高値ラインが切り下がっており、26日からの上昇でも今のところは高値切り下がりの範囲にある。21日高値を超える上昇へ進む場合は高値切り上げ型への転身として強気見通しへ切り替わると思われるが、高値切り下がりの範囲にあるうちは下落再開から安値切り下がりへ進む可能性が高いのではないかとみる。
【当面の主な予定】
6/28(木)
EU首脳会議(28日〜29日)
17:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
21:00 (独) 6月 消費者物価指数 速報 前年比 (5月 2.2%、予想 2.2%)
21:30 (米) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前期比年率 (改定値 2.2%、予想 2.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想)
23:45 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
6/29(金)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -3.7%、予想)
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 6月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (5月 0.5%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前月比 (4月 0.5%、予想 -1.2%)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.2%、予想 5.2%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数(HICP、速報 前年比 (5月 1.9%、予想 2.0%)
21:30 (米) 5月 個人消費 前月比 (4月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年比 (4月 1.8%、予想 1.9%)
22:45 (米) 6月 シカゴPMI(5月 62.7、予想 60.5)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者態度指数・確報 (速報 99.3、予想 99.2)
6/30(土)
10:00 (中国) 6月製造業PMI (5月 51.9、予想 51.8)
10:00 (中国) 6月非製造業PMI (5月 54.9)
オーダー/ポジション状況
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