今週はやや上値が重たいもみあい
〇先週のドル円、日銀の貸付拡充策が緩和的と取られ短期筋の損切も出て131円台半ばまで上昇
〇しかし長期的には緩和縮小の方向は変わらず、その日のうちに行って来いに
〇今週は金融イベントの狭間の週、中国は春節で一週間休み、積極的な動きは出にくい
〇FRBとECBの経済指標の結果次第で利上げペース減速思惑が強まることも、米ドル全般の動きに注意
〇上がったところではドル売りが出やすい、短期的には下も上も見て今週はどちらも抜けられない
〇今週は127.80レベルをサポートに、130.20レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円はイールドカーブコントロールの撤廃を含め更なる緩和縮小の思惑が根強かったのに対して現状維持となったこと、また日銀による貸付の拡充策が示されたことが緩和的であると取られたことから短期筋の損切も出て131円台半ばまで上昇しました。しかし長期的には緩和縮小の方向は変わらないことや、現状維持もいつまで続くかわからないこともあり、結局はその日のうちに行って来いとなり、週後半は再び円安方向へとじりじりと進むという流れでした。
日銀もイールドカーブコントロール変更の翌月は貸付拡充と長期金利市場をかく乱させようとしているのではないかと思いたくなる展開ですが、貸付拡充は日銀による無利子の貸付期間を10年まで延長したことで、金融機関は借りた資金で債券を買えば自動的に利益が出るというもので、この政策が当面は長期金利の上昇を抑え、投機筋が売っていた債券を買い戻す動きにつながるという目論見です。
11月以降の5年債から15年債までのイールドカーブの動きを見てみましょう。
黄色が5年債、オレンジが7年債、青が10年債、緑が15年債の利回りです。10年債利回りが低く抑えられていること、利回りの動きが他の期間の債券に比べ上下が少なく不自然な形状となっていることがわかります。これらは日銀によるイールドカーブコントロール(YCC)の影響で、本来であれば7年債(オレンジ)と15年債(緑)の間でもう少し利回りが高い水準(直近であれば0.7%程度)が自然なのですが、良くも悪くもYCCの影響が明確に出てしまっています。
先週の日銀会合で決定された貸付拡充策で10年債利回りも上限0.5%超えの水準から0.4%割れの水準となってきました。動きとしては日銀の思った通りというところでしょうが、実質的な利益補給政策をいつまで続けるのか、改めてYCC撤廃といった思惑は今後も出続けることは間違いないでしょう。
今週は金融イベントの狭間の週となり中国は春節で一週間休みとなり、積極的な動きは出にくい週となりますが、FRBとECBの経済指標の結果次第で利上げペース減速思惑が強まることもありますので、米ドル全般の動きにも注意しておきたいところです。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
先週の週報で書いた通りで長期的なターゲットとして127円台はいくつかのターゲットが重なっていたこともあったかと思いますが、先週安値の127円台前半はまさにターゲットを達成したという展開です。短期的には下も上も見て今週はどちらも抜けられない前提で考えていきます。
安値127.21と高値131.56との半値129.39(それぞれ青の水平線)を示してありますが、この半値が現在のニュートラルな水準であると考えられます。そして長期的に日銀の緩和縮小思惑が続くことを考えると上がったところではドル売りが出やすいという動きでしょう。今週は半値の上下の値幅を若干下側にシフトさせて、127.80レベルをサポートに、130.20レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
1月23日(月)
**:** シンガポール(〜24日)、香港(〜25日)、中国(〜27日)市場休場
08:50 日銀会合(12月20日)議事要旨公表 ☆
22:30 イタリア中銀総裁講演
23:30 パネッタECB理事講演 ☆
24:00 ユーロ圏1月消費者信頼感速報値 ☆
24:00 米国12月景気先行指数
25:00 オーストリア中銀総裁講演
26:45 ラガルドECB総裁講演 ☆
1月24日(火)
09:30 豪州12月企業景況感
16:00 ドイツ2月消費者信頼感
16:45 フランス1月企業景況感
17:10 オランダ中銀総裁講演
17:15 フランス1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:45 米国1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
24:00 米国1月リッチモンド連銀製造業景況指数
30:45 NZ10〜12月期CPI ☆
1月25日(水)
09:30 豪州10〜12月期CPI ☆
18:00 ドイツ1月企業景況感
24:00 カナダ中銀政策金利発表 ☆
24:30 週間原油在庫統計
1月26日(木)
08:50 日銀会合(1月18日)主な意見公表 ☆
18:30 南ア12月PPI
**:** 南ア中銀政策金利発表
22:30 米国10〜12月期GDP速報値 ☆
22:30 米国12月耐久財受注、卸売在庫
22:30 米国新規失業保険申請数
24:00 米国12月新築住宅販売
1月27日(金)
08:30 本邦1月東京区部CPI ☆
09:00 NZ1月企業信頼感
09:30 豪州10〜12月期PPI ☆、輸入物価
16:45 フランス1月消費者信頼感
22:30 米国12月個人所得・消費支出 ☆
24:00 米国12月住宅販売保留件数
24:00 米国1月ミシガン大消費者信頼感
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
1月16日(月)
東京前場は前週同様に18日の日銀会合に向けての思惑から一段の円買いの動きとなり127.22レベルと昨年5月以来の安値をつけました。しかし後場以降は利食いの買い戻し、またユーロドルがユーロ売りに転じるなど全般的にドル買い戻しの動きとなり、128.87レベルまで買い戻されました。海外市場は米国市場が休場となることもあって128円台半ばでもみあいのまま引けました。
1月17日(火)
ドル円は日銀会合を前に動きにくくなってきていたものの、財務省が10年債利回り1.6%を想定しているとの観測記事に上値が重たい展開が続きました。ただポジション的にはすでに円買いポジションが積み上がっていたことからポジション調整のドル買いオーダーも入っていた様子で上下ともに限定的な値動きとなりました。
1月18日(水)
ドル円は日銀会合後に乱高下する1日となりました。会合結果は現状維持、さらに日銀による貸付の拡充策が示されたことで、緩和の強化という側面があり、その結果為替市場では発表後に円安が進行、昼過ぎには131.57レベルの高値をつけました。しかし、米金利は東京前場から低下が進み、欧州市場ではユーロ買いの動き、また次回会合が3月10日と先であることから、催促相場になっていく可能性から急速に行って来いの動きとなり、NY市場前場には弱いPPIも手伝って127.57レベルと日銀会合前の安値を割り込み、高値から4円も下げる激しい動きとなりました。引けにかけては128円台後半へと戻しました。
1月19日(木)
東京市場のドル円は前日行って来いと上値の重さを見たこと、米金利低下の動きも重なって売りが強まり一時127.76レベルの安値をつけました。しかし欧州市場序盤以降は米金利が上昇に転じ朝方の水準に戻した後は、もみあいのままNY市場を引けました。
1月20日(金)
ドル円は米金利上昇の動きとともにドル買いが強まり、黒田日銀総裁が緩和継続に言及したことも重なってNY市場朝方には130.61レベルまで上値を伸ばしました。ただ日銀会合後の下げがまだ記憶に新しく130円台では売りも出たこと、週末前の利食いも入ってきて、引けにかけては129円台半ばへ押しました。
ディスクレーマー
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