ドル円見通し 「逆日銀ショック」による急伸は一時的、往って来いを超える反落(23/1/19)

ドル円は、18日夜の米PPI、小売売上高、鉱工業生産等が軒並み市場予想を下回ったことで米長期債利回りが一段と低下し23時台安値127.55円へ大幅続落となった。

ドル円見通し 「逆日銀ショック」による急伸は一時的、往って来いを超える反落(23/1/19)

「逆日銀ショック」による急伸は一時的、往って来いを超える反落

〇ドル円、18日夜の米経済指標が軒並み市場予想下回り米長期金利低下で127.55へ大幅続落
〇日銀は18日に金融政策の現状維持を決定、逆日銀ショックでドル円急伸するも短時間に終わる
〇声明発表前の水準を割り込んだことでかえって円高基調の継続感を強めた印象
〇米10年債利回りは前日比0.17%の大幅低下で3.38%、2020年10月以降の最安値更新
〇NYダウは前日比613.89ドル安の大幅下落、ナスダックは前日比138.10ポイント安で8日ぶりの下落
〇129円超えからは129円台中盤試しとするが129.50以上は反落警戒
〇18日夜安値127.55割れからは1/16昼安値127.21試し、底割れからは126円台後半への下落を想定

【概況】

ドル円は日銀が金融政策を現状維持としたことをサプライズとして直前安値128.38円から13時台高値131.57円へ3円を超える急伸となったが、日銀の出口戦略は今後も進み円高基調は変わらないとして買い一巡後は急落に転じた。日銀が長期金利ゼロ%誘導への許容変動上限を引き上げなかったことで日本10年債利回りが低下したことが波及して米長期債利回りが低下したことも円高を助長していたが、18日夜の米PPI、小売売上高、鉱工業生産等が軒並み市場予想を下回ったことで米長期債利回りが一段と低下したために23時台安値127.55円へ大幅続落となり、日銀声明発表前の水準を下回った。1月16日安値127.21円割れをひとまず回避し、NYダウが大幅下落する中でリスク回避的なドル買いが見られたことで128円台後半まで戻したが、19日午前序盤は失速気味の推移で128.50円を割り込んでいる。

【逆日銀ショックは一過性、異次元金融緩和終了プロセス変わらずとの見方を再確認】

日銀は1月18日昼前に金融政策の現状維持を決定した。12月20日の前回会合で長期金利ゼロ%誘導のための許容変動幅上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことを事実上の利上げと市場は受け止めてドル円が急落する「日銀ショック」が発生したが、日本10年債利回りが上限の0.50%を繰り返し超える上昇を見せたことや、1月12日の読売朝刊が「金融緩和政策の副作用点検」と報じたことで2会合連続での許容上限引き上げやYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)そのものの見直しが議論される可能性が高まっていると市場は見ていたが、日銀は市場の見通しに反して現状維持とした。何もしなかったことがサプライズとなり、12月20日の日銀ショックとは反対の逆日銀ショック商状によりドル円が急伸したのだが、急上昇は短時間に終わり、声明発表前の水準を割り込んだことによりかえって円高基調の継続感を強めた印象だ。

黒田総裁は4月8日で任期満了となるが、12月会合での政策修正を持って後任総裁による政策変更への布石とし、2会合連続の政策修正では見通しを誤ったと判断されることを嫌ったのだろうと思われる。次回3月会合でも現状維持となる可能性があるが、政府のアベノミクスからの脱却の動きと共にインフレの高止まりと長期金利上昇圧力が強まる状況にあって異次元金融緩和政策からの出口戦略へ進んでいることには変わりないと思われる。
10月21日からのドル円の大幅下落は日銀の出口戦略を意識した流れであるとともに米FRBによる超ハイペースでの利上げが減速して利上げのピークも近いとの認識で米長期債利回りが大幅低下に転じたことが大きい。今後も日銀の出口戦略入りと米長期債利回り低下による円高基調は継続してゆくと思われる。

【米PPI低下、経済指標の悪化目立つ】

1月18日夜の米経済指標は総じて市場予想を下回った。
米労働省による12月のPPI(生産者物価指数)は前月比0.5%低下で市場予想の0.1%低下を大幅に下回り4か月振りのマイナスとなった。11月分も速報の0.3%上昇から0.2%上昇へ下方修正された。前年同月比は6.2%上昇で11月の7.3%から大幅に鈍化して市場予想の6.8%を下回った。またコア指数も前月比0.1%上昇で予想と一致したが11月の0.2%上昇(速報の0.4%上昇から下方修正)を下回り、前年同月比は5.5%で11月の6.2%から大幅低下して市場予想の5.7%も下回った。
1月12日に発表された12月の米CPIが前月比でマイナスに転じたことと前年同月比が11月の7.1%から6.5%へと鈍化したことがドル円の下落を助長したが、PPIの大幅鈍化により1月のCPI上昇率もさらなる鈍化へと進みやすくなった印象だ。

米商務省による12月の小売売上高は前月比1.1%減となり市場予想の0.8%減を下回り11月の1.0%減(速報の0.6%減から下方修正)に続いて2か月連続のマイナスとなった。また変動の激しい自動車・同部品を除くと1.1%減で予想の0.4%減を下回り、ガソリンを除くと0.8%減、自動車・同部品・ガソリンを除くと0.7%減といずれも低調だった。
米FRBによる12月の鉱工業生産指数は前月比0.7%低下となり11月の0.6%低下(速報の0.2%低下から下方修正)に続いて2か月連続のマイナスで市場予想の0.1%減を大幅に下回った。また設備稼働率は78.8%で11月の79.4%から低下した。

【米10年債利回りは10月以降の最低を更新、ダウは急落してナスダックの連騰途絶える】

小売の低調さと鉱工業生産の予想以上の低下は金融引き締めによる景気減速を反映するものだが、軒並み予想を大幅に下回ったことで米株式市場にとってはソフトランディングへの楽観を後退させるものとなりNYダウは大幅下落、PPIの低下を見て米長期債利回りが大幅低下することとなった。
長期金利指標の米10年債利回りは前日比0.17%の大幅低下で3.38%となった。安値で3.37%を付けて12月7日の3.40%を割り込み10月21日に付けた2020年以降の最高値4.34%以降の最安値を更新した。30年債利回りは0.12%低下の3.54%、2年債利回りは0.12%低下の4.09%となり11月4日に付けた4.88%以降の最安値を更新した。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が18日に「政策金利は5%を上回る水準へ引き上げる」とし、セントルイス連銀のブラード総裁も「できる限り速やかに5%を上回る水準へ引き上げるべき」「フロントローング(前倒し利上げ)戦略が望ましい」「2023年末の金利水準を5.25〜5.50と想定する」と述べたが市場の反応は鈍かった。
一方でNYダウは取引開始当初に上昇していたが景気後退への不安が強まったとして前日比613.89ドル安の大幅下落となり、ナスダック総合指数は1月6日からの7連騰が途切れて前日比138.10ポイント安と8日ぶりに下落した。株安の連鎖がアジア、欧州市場へと波及するとリスク回避感が強まり、ドルストレートでドル高、クロス円で円高、ドル円でも円高へと進みやすくなるのではないかと警戒される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は1月11日夜高値132.87円からの大幅下落が1月16日昼安値127.21円で一服となり買い戻されていたが、日銀金融政策現状維持を受けて一時急伸したものの往って来いとなる急落に見舞われたため、1月18日午後高値を起点として下落期に入ったと思われる。1月16日昼安値を基準とすれば19日の日中から23日にかけての間が安値形成期と思われるが、乱高下が続く可能性もあると注意する。

60分足の一目均衡表では1月18日午後からの急落で先行スパンから一時転落してその後の反発で転落を回避しているが、再び転落しやすい位置にある。遅行スパンも同様のため、当面は26本基準線を戻り抵抗とし、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は18日昼前からの急騰と午後からの大幅下落により80ポイントに迫ってから30ポイント台まで低下し、その後も50ポイント以下での推移となっている。50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは下向きとして20ポイント台への低下を想定する。55ポイント超えからは戻りを試すとみて60ポイント前後試しとみるがその後の反落注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月18日夜安値127.55円を下値支持線、129.00円を上値抵抗線とする。
(2)129円以下での推移中は下向きとし、129円超えからは129円台中盤試しとするが129.50円以上は反落警戒とし、その後に128.50円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)1月18日夜安値割れからは1月16日昼安値127.21円試しとし、底割れからは126円台後半、下げ足が速まる場合は125円台への下落を想定する。

【当面の主な予定】

1/19(木)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 -4億ユーロ)
19:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
21:30 (欧) ECB理事会議事要旨
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.5万件、予想 21.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 163.4万人、予想 166.5万人)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算 (11月 142.7万件、予想 135.5万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 -0.5%、予想 -5.1%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算 (11月 134.2万件、予想 137.0万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 -11.2%、予想 1.4%)

22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (12月 -13.8、予想 -11.0)
23:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
25:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
27:00 (米) 10年インフレ指数連動債入札
27:15 (米) ブレイナードFRB副議長、講演

1/20(金)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (11月 3.8%、予想 4.0%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食品除く 前年同月比 (11月 3.7%、予想 4.0%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (11月 2.8%、予想 3.1%)
08:35 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -42、予想 -41)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 -0.4%、予想 0.5%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 -5.9%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 -0.3%、予想 0.4%)

16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 -5.9%、予想 -4.4%)
16:00 (独) 12月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (11月 -3.9%、予想 -1.2%)
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
23:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算 (11月 409万件、予想 396万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 -7.7%、予想 -3.3%)
27:00 (米) ウォラーFRB理事、講演

注:ポイント要約は編集部

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