トルコリラ円見通し ドル円の一段安で7.40円まで安値を切り下げる
〇トルコリラ円、米PPI鈍化によるドル円急落に同調、安値7.40に至る
〇対ドル、有事リスク報道にも比較的冷静、18.60台での持ち合い推移を再開
〇トルコ10月財政収支、2か月連続赤字示す、21日には中央政府債務を発表
〇11月中銀金融会合、9%台への連続利下げが予想の中心、インフレ収束しない限りリラ安は継続か
〇7.40割れからは7.30円台中盤への下落を想定、7.35以下は反騰注意とする
〇7.50超えからは7.53試しとするが、7.53手前は戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の11月15日は7.56円から7.40円の取引レンジ、16日早朝の終値は7.48円で前日終値の7.50円からは0.02円の円高リラ安となった。
11月10日夜の米CPI上昇率が市場予想を下回ったことによる米長期債利回り大幅低下とドル全面安を背景にドル円が146台序盤から暴落的な下落となり、10日夜と11日夜の二夜連続の大幅下落で12日未明には138.45円まで一段安となったが、トルコリラ円もドル円と同調して米CPI発表直前の7.87円近辺から12日早朝安値7.47円へと大幅下落した。
週明けの14日はドル円の暴落一服によりトルコリラ円は7.57円まで戻したものの、ドル円の戻りは続かず、15日夜は米PPI上昇率が市場予想を下回ったことでドル円が137.67円へ一段安すると、トルコリラ円も15日夜安値7.40円へ一段安となった。ドル円の急落一服で戻したことでトルコリラ円は16日未明に7.51円まで戻したがドル円の戻りに勢いは見られずトルコリラ円も16日午前序盤は7.50円以下での推移となっている。
当面はドル円の騰落を追いかける展開で下ブレ注意の状況と思われる。
【対ドルでは18.60リラを挟んだ膠着型の揉み合いを再開】
ドル/トルコリラの11月15日は18.63リラから18.54リラの取引レンジ、16日早朝の終値は18.60リラで前日終値の18.58リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
10月以降は18.50リラ前後で売られて18.60リラ台の安値は買い戻されるやや膠着した持ち合いで推移し、11月4日に18.67リラへ史上最安値を更新したところから11月8日早朝安値18.41リラへ上昇したところでは持ち合い放れを試したものの早々に18.60リラ前後の水準へ切り返され、11月10日の米CPI発表後のドル安局面でも18.44リラへ上昇したところで戻り売りされて元の持ち合い水準へ押し返された。
11月15日は米PPI上昇率が市場予想を下回ったところでドル安となったものの、ロシアのミサイルがポーランド領内に着弾したとの報道からリスク回避優勢となってユーロやポンドが反落するなどドル高反応が見られた。
トルコにとっては近隣で外交通商上の関係も深く休戦協定に尽力してきただけにトルコリラには圧迫要因となるところだが、トルコリラの市場反応は比較的冷静だった。
11月16日午前序盤に18.56リラへ上昇したところも売られて18.60リラ前後へ押し返されており、18.50前後で売られて18.60リラ台の安値を試す持ち合い圏での推移を再開している印象だ。
【トルコの財政収支、2か月連続の赤字】
11月15日夜に発表されたトルコの10月財政収支は832.5億リラの赤字で、9月の786.3億リラの赤字から2か月連続の赤字となった。今年に入ってからは1月と2月及び5月と6月に黒字だったものの、それ以外は赤字だ。昨年12月には1457.4億リラの最大赤字を記録しており、2021年までは500億リラを超えない範囲にとどまっていたところから逸脱して上下に大きな変動をみせていることは財政基盤への不安感を助長するものとなっている。11月21日には中央政府債務の発表もあるが、9月は367.5億リラへ急増しており、経常収支の構造的赤字と財政基盤の脆弱性にリラ安が輪をかける状況ともいえる。
来週の11月24日にはトルコ中銀の金融政策決定会合もある。11月会合で10.5%まで政策金利が引き下げられたが、年内に一桁へ低下させるというのがエルドアン政権の目標であり、市場予想はまだまとまっていないものの12月会合を待たずに9%台へと連続利下げされるのではないかとの見方が優勢となっている。
トルコ中銀は次回利下げで当面の利下げを終息させるとしているが、インフレが収まらなければリラ安も続きかねず、ウクライナ戦争の泥沼化や主要国の金融引き締めによる景気への悪影響が深刻化してくるようだとトルコ景気の足も引っ張られることになり、年末にかけてドル高リラ安が勢い付くケースも想定しておく必要があるかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは11月10日夜からの暴落が落ち着いて11月12日早朝安値で直近のサイクルボトムをつけて持ち直しを図っているところとしたが、15日午前時点では7.50円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して12日早朝安値試しとし、底割れからは17日未明から19日未明にかけての間への下落を想定するとした。
11月15日夜に7.40円まで一段安しているため、現状は11月14日夜高値を直近のサイクルトップとして底割れにより弱気サイクル入りしたところと思われる。ボトム形成期は17日未明から19日未明にかけての間とし、15日夜安値を割り込む場合は7.30ドル台中盤への一段安も警戒される。強気転換には7.50ドル台回復から7.53ドルを超えるような反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では11月15日昼への上昇時に先行スパンへやや潜り込んだところから転落し、遅行スパンも悪化している。15日夜からの反発も鈍く先行スパンからの転落が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。上昇再開には先行スパンを上抜き返す反騰が必要と思われる。
60分足の相対力指数は11月15日夜の一段安で30ポイントへ低下し、その後は40ポイント台へ戻しているものの50ポイントには届かずにいる。このため50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台への低下を想定する。50ポイント超えからは戻りを試す流れとみるが60ポイント手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.40円を下値支持線、7.50円を上値抵抗線とする。
(2)7.50円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、7.40円割れからは7.30円台中盤(7.37円から7.33円)への下落を想定する。7.35円以下は反騰注意とするが、7.50円以下での推移が続く場合や直前安値から0.07円を超える反騰へ進めないうちは17日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.50円超えからは7.53円試しとするが、7.53円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月17日
20:30 週次 外貨準備高 11/11時点 グロス (11/4時点 751.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11/11時点 ネット (11/4時点 145.3億ドル)
11月21日
17:00 10月 観光客数 前年同月比 (9月 55.84%)
11月22日
16:00 11月 消費者信頼感指数 (10月 76.2)
11月24日
16:00 11月 製造業景況感 (10月 100.3)
16:00 11月 設備稼働率 (10月 76.9%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.5%)
注:ポイント要約は編集部
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