145円手前へ急伸して上昇一服だが、調整を警戒しつつ上値期待が続く
〇ドル円、7日夜高値で144.98をつけ2021/1/6底102.57以降の高値更新
〇その後高値警戒感から売られ8日早朝に143.66まで反落するも、押し目買いされ144円台回復
〇7日の米長期債利回りは総じて低下、NYダウは前日比435.98ドル高と反発
〇急上昇中の急落調整型となる場合は直前高値から4円前後規模の反落もあり得ると注意
〇7日午後に鈴木財務相「円安に一方的に振れていることを憂慮している」と口先介入的な発言
〇8日早朝安値143.66割れからは142円台後半(143.00から142.50)への下落を想定
〇7日夜高値144.98超えからは146円台への上昇を想定、146円到達では売られやすいと注意
【概況】
ドル円は9月7日夜高値で144.98円を付けて2021年1月6日底102.57円以降の高値を更新、1998年8月天井の147.63円以降の最高値としたが、6日に大幅上昇していた米長期債利回りが修正的な低下となったことをきっかけに6日午前安値140.23円からの5円近い急上昇に対する高値警戒感から売られて8日早朝には143.66円まで反落した。しかし先高感は継続として押し目買いされて8日午前序盤には144円台を回復している。
【米長期債利回りは反落、ダウ3日ぶり反発、ナスダック8日ぶり反発】
9月7日の米長期債利回りは総じて低下、前日は米国市場連休明けで大幅上昇したがその反動で低下した印象だ。上昇基調への急激な変化というよりも速度調整的な低下と思われる。
米10年債利回りは9月6日に前日比0.16%上昇の3.35%となり8月2日の2.52%以降の最高値としたところから7日は前日比0.08%低下の3.27%となった。30年債利回りは6日に前日比0.16%上昇の3.51%となり2014年5月以来の高水準としたところから7日は前日比0.09%低下の3.42%となった。2年債利回りは6日に前日比0.12%上昇の3.51%として9月1日に付けた15年ぶり高値3.55%に迫ったが7日は0.07%低下の3.44%となった。
一方でNYダウは前日比435.98ドル高と反発した。8月26日のパウエル米FRB議長講演からの大幅利上げ観測から急落して6日は前日比173.14ドル安となり8月16日以降の安値を更新したが、7日は安値更新を回避して3日ぶりに反発した。ナスダック総合指数は8月25日から7営業日続落していたが7日は前日比246.99ポイント高となり8日ぶりに反発した。いずれも米長期債利回りが低下したことと原油相場が急落したことでインフレが落ち着く期待もあり買い戻し優勢となった印象だ。
【急上昇中の短期修正にも注意】
8月2日安値130.39円から9月7日夜高値144.98円まで14.59円の上昇幅となっているが、この間の上昇角度はウクライナ戦争勃発をきっかけに2月24日安値114.39円から5月9日高値131.34円まで16.95円の大上昇となった時に近い。
当時は3月26日高値へ急伸したところから3月31日安値121.26円まで3.84円安の短期的な反落が入ったところを買われて急騰を再開しているが、5月24日から7月14日への一段高においても6月15日高値135.58円から8月16日安値131.48円まで2日間で4.10円の急落調整が入り、8月2日からの上昇当初も8月8日高値135.57円から8月11日安値131.72円まで3.85円の短期的な下落が入っている。今回も直近高値から1円強レベルの反落は小反落に過ぎず押し目買いされやすいところとみるが、急落調整型となる場合は直前高値から4円前後規模の反落もあり得ると注意し、そこはまた歴史的な円安基調が変わらなければバーゲンハント買いが入りやすいところと考える。
【口先介入では円安基調は変わらず】
鈴木財務相は9月7日午後に「円安に一方的に振れていることを憂慮している」「継続するならば必要な対応を取る」と口先介入的な発言をした。財務相は3月からの円安進行に対してこれまでも「急激な変動は望ましくない、為替市場動向をしっかりと注視」や、「必要な場合には適切な対応を取る」、「緊張感を持って注視」等と発言してきたが、現状での政府・日銀による為替介入はないと市場は見ている。
米国がインフレに悩まない状況ならば輸出促進策としての円安に対しては米国が牽制する。2015年6月に125.84円へ急伸したところで黒田日銀総裁が「これ以上の円安は考えられない」と述べたことを黒田ラインとして円安がストップした背景も米国からの牽制を踏まえた動きだったと思われる。しかし現状では円安ドル高は米国にとっては輸入インフレ抑制効果があり、景気回復力に乏しい日本経済と金融緩和を続けざるを得ない日銀の姿勢はファンダメンタルズに即したものとしてIMF等も批判対象としていない。
当面は市場自身が過剰な上昇に対して高所恐怖症的な不安から急落調整を入れたり、突っ込んだところを買われたりしながらも円安基調はまだ継続してゆくのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月2日夜高値を前回のサイクルトップとして高値更新から新たな強気サイクル入りとし、6日の一段高により9月6日午前安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたとして高値形成期を7日夜から9日夜にかけての間と想定した。
9月7日夜に145円に迫ってから1円を超える反落となったため、7日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は9日午前から13日午前にかけての間と想定するが、調整安を短縮して上昇再開に入る可能性もあると注意し、9月7日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして12日夜から14日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9月6日の急伸で遅行スパンが好転、先行スパンの上限に到達したところから大きく上方へ乖離してきたが、7日夜高値からの反落で遅行スパンは悪化しやすい位置にある。遅行スパン悪化からは安値試し優先として先行スパンの上下限を試すとみるが、9月7日夜高値を超えるところからは上昇継続として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は9月6日夜から7日夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生して8日早朝には50ポイントまで低下した。65ポイント超えからは上昇再開とするが、65ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとし、50ポイント割れからは40ポイント前後への低下を想定する。現状から65ポイントを超える場合及び40ポイント台へ低下してから55ポイントを超える場合は上昇再開として80ポイントを目指す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月8日早朝安値143.66円を下値支持線、9月7日夜高値144.98円を上値抵抗線とする。
(2)143.66円割れからは142円台後半(143.00円から142.50円)への下落を想定する。142.50円以下は反騰注意とするが、144円以下での推移が続く場合は9日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.98円超えからは146円台への上昇を想定する。146円到達では売られやすいと注意するが、7日夜高値を超えた後も144円台中盤以上での推移なら9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/8(木)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 176.70億豪ドル、予想 145.00億豪ドル)
12:05 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断 (7月 43.8、予想 44.9)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断 (7月 42.8、予想 44.9)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀)、政策金利 (現行 0.50%、予想 1.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 143.8万人、予想 143.5万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
22:10 (米) パウエル米FRB議長、講演
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 401.5億ドル、予想 330.0億ドル)
24:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
9/9(金)
EUエネルギー担当相、臨時会合
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 3.4%、予想 3.4%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.8%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 4.2%、予想 3.2%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 1.8%、予想 0.8%)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、開会挨拶
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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