ドル円は7月14日高値を超えて昨年1月底以降の最高値更新
〇ドル円、1日朝に139.44をつけ7/14高値139.39を超え2021/1/6底102.57以降の最高値更新
〇140円台到達からは1998年8月天井147.63を目指す可能性も出てくるところと思われる
〇今週末の米雇用統計がドル円の上昇を加速させるきっかけになるのか注目
〇8/31のNYダウは前日比280.44ドル安で26日から4営業日続落に終わる
〇10年債利回りは前日比0.09%上昇の3.20%、6月下旬以来の高水準
〇138.70以上での推移中は一段高余地ありとして140円を試すとみる
〇138.70割れから続落の場合は138.25前後への下落を想定
【概況】
ドル円は9月1日朝に139円台を回復、8時台終盤には139.44円を付けて8月30日夜高値139.06円及び7月14日高値139.39円を超えて2021年1月6日底102.57円以降の最高値を更新した。
8月31日夜は3か月振りに発表されたADP民間雇用報告での就業者増加数が予想外に低調だったところで一時的にドル安反応が見られたものの米FRBによる大幅利上げ継続感が強まる中で米長期債利回りが上昇、ユーロドルがパリティを挟んだ揉み合いにとどまるも、ポンド、豪ドル、南アランド等が8月26日夜のパウエルFRB議長によるジャクソンホール講演以降の安値を更新してドル高感が強まっている。
ドル円は7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9.00円の下落が入ったもののV字反騰で切り返して既に10円を超える上昇規模となっているが、この間の勢いは5月24日からの上昇時や2月末から5月9日高値にかけての上昇時に匹敵しており、140円台到達からは1998年8月天井147.63円を目指す可能性も出てくるところと思われる。今週末の米雇用統計がドル円の上昇を加速させるきっかけになるのか注目される。
【米ADP統計は予想下回る、NYダウは4日続落で景気後退懸念先行】
米ADPによる8月全米雇用報告では民間部門就業者数が前月比13万2000人増となり市場予想の30万人増及び7月の27万人増を大幅に下回った。ADPは集計方法の変更により6月と7月はデータ公表を見送っていたが、2か月連続で伸びが鈍化した。発表後には一時的にドル安反応も見られたが、あくまでも週末の米労働省雇用統計を見定めたいとして限定的な動きにとどまった。
米MNIインディケーターズが発表した8月シカゴ購買部景況指数(シカゴPMI)は52.2となり7月の52.1からわずかに上昇して市場予想の52.0を上回ったが、市場の反応は限定的だった。
8月31日のNYダウは前日比280.44ドル安と下落した。8月26日にパウエル米FRB議長講演での大幅利上げ継続姿勢からリセッション入りへの懸念が強まったとして前日比1008.38ドル安の大幅下落となったが、29日に前日比184.41ドル安、30日に前日比308.12ドル安となり、31日も4営業日続落に終わった。ナスダック総合指数は前日比66.94ポイント安と下落し、8月26日の前日比497.56ポイント安、29日の前日比124.04ポイント安、30日の前日比134.53ポイント安からの続落となった。
ロシアのガスプロム社が欧州向けのノルドストリームによる天然ガス供給を一時停止したことで先行きの天然ガス不足不安と欧州の景気後退感が強まり、中国の感染再拡大により深センや大連等で経済活動規制が強化されていることで中国景気の悪化懸念も強まっている。米国でも米FRBによる「景気よりもインフレ抑制」への決意が強いことで6月から反騰してきたダウとナスダックが揃って大幅下落に転じている状況だ。
通常なら株安の連鎖からリスク回避的に円が買われるところだが、現状は日米金利差拡大による歴史的な円安情勢にあるために株安はブレーキとなっていない。
【米長期債利回りは総じて上昇、2年債と10年債・30年債との逆イールドも継続】
8月31日の米長期債利回りはFRBによる大幅利上げを想定して総じて債券安・利回り上昇となった。長期金利の指標である10年債利回りは前日比0.09%上昇の3.20%で、8月2日の2.52%を起点とした上昇を継続して6月下旬以来の高水準へと切り返している。30年債利回りは0.08%上昇の3.30%。利上げに敏感な2年債利回りは0.05%上昇の3.50%で1昨年来の最高値を更新、先週末からは15年ぶりの高水準で推移している。
8月26日の米FRB議長によるジャクソンホール講演ではインフレ抑制への強い決意が改めて示されたためにドル全面高となり、8月29日夜にかけては反応も落ち着いて揺れ返しのドル安となったものの、中長期的なドル高基調は継続しており、ドル指数は8月29日に109.48ポイントを付けて2002年10月以来の高水準とした後も高値圏を維持している。
米クリーブランド連銀のメスター総裁は8月31日に「来年初頭までに政策金利を4%をやや上回る水準まで引き上げ、その後も同水準を維持する必要がある」とし、来年の利下げを否定した。年内はあと3回のFOMCが予定されており、現状の政策金利は2.25-2.50%であり、0.50%ずつ3回の利上げか、前倒し的に9月会合で0.75%利上げを行うか、今週末の米雇用統計で判断してゆくことになると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月26日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして8月29日夜から31日深夜にかけての間への上昇を想定してきた。8月29日からは138円台中心の持ち合いだったが9月1日朝に8月30日夜高値を超えて一段高に入っているため、持ち合い後半の8月31日夕安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと仮定する。高値形成期は9月2日夜から6日夜にかけての間と想定し、弱気転換は8月31日夕安値138.25円割れからとする。
60分足の一目均衡表では9月1日朝の一段高で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた状況を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合はいったん下落期に入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月30日夜と31日夕に40ポイントまで下げたところから切り返して70ポイントを超えてきている。80ポイント以上は反落注意とするが、50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし、弱気転換は50ポイント割れからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.70円を下値支持線、140円を上値抵抗線とする。
(2)138.70円以上での推移中は一段高余地ありとして140円を試すとみる。140円到達では利益確定売りも出やすいとみるが139円以上での推移なら9月2日の日中にかけても高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)138.70円割れからは反落警戒とするが、その後に139円台を回復するところからは上昇再開とみる。138.70円割れから続落の場合は138.25円前後への下落を想定するが、138.25円から138.00円にかけてのゾーンは押し目買いされやすい水準とみる。
【当面の主な予定】
9/1(木)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1-3月 -0.3%、予想 0.4%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 50.4、予想 50.2)
15:00 (独) 7月 小売売上高 前月比 (6月 -1.6%、予想 0.0%)
15:00 (独) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -9.8%、予想 -6.5%)
16:55 (独) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 49.8、予想 49.8)
17:00 (欧) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 49.7、予想 49.7)
17:30 (英) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 46.0、予想 46.0)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 6.6%、予想 6.6%)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -4.6%、予想 -4.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.3万件、予想 24.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 141.5万人、予想 143.8万人)
22:45 (米) 8月 S&Pグローバル製造業PMI改定値 (速報 51.3、予想 51.3)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 52.8、予想 52.0)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.1%、予想 -0.4%)
28:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
9/2(金)
08:50 (日) 8月 マネタリーベース 前年同月比 (7月 2.8%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 64億ユーロ、予想 46億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (6月 1.1%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (6月 35.8%、予想 35.8%)
21:30 (米) 8月 非農業部門就業者数 前月比 (7月 52.8万人、予想 29.0万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 3.5%、予想 3.5%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 5.2%、予想 5.2%)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 2.0%、予想 0.2%)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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