FOMC直後の一時的上昇から反落、6月9日からの底上げ基調崩れる
〇ドル円、FOMCでの0.75%の大幅利上げ決定で直後はドル高反応、一旦134.94まで上昇
〇その後は当面のドル高材料消化で揺れ返しのドル安へ流れ変わり、16日早朝に133.49まで下落
〇パウエル議長、今回の超大幅利上げは「非常に異例」とコメント、経済ソフトランディングにも自信示す
〇米10年債利回りは前日比0.19%低下の3.29%、NYダウは6日ぶり反騰で前日比303.70ドル高
〇16日午前は134円台回復、イベント通過後の調整を消化しつつ次の一段高へ向けた足場固めという局面か
〇16日早朝安値133.49割れからは132円台中盤を目指す下落を想定
〇134.50超えからは上昇再開の可能性ありとみて16日未明高値134.94試し
【概況】
ドル円は6月15日早朝に135.58円へ上昇して1998年10月以来24年ぶりの高値水準に達したが、16日未明の米FOMCを控えてのポジション調整的な動きで134円台序盤下落、FOMCが0.75%の超大幅利上げを決定したことでいったんドル高反応となって134.94円まで戻したものの当面するドル高材料消化として揺れ返しのドル安へと全般の流れが変わり、16日早朝には133.49円まで下落した。
6月16日朝には134円台をいったん回復したが、6月8日に134円台に到達してから戻り高値を切り上げつつその後の調整安でも底上げ基調を維持してきたところ、6月13日夜安値133.58円を割り込んだために底上げ基調が崩れている。
事前にWSJ紙報道により0.75%の利上げがあり得るとされたことで市場もサプライズ感はないと受け止めたが、次回会合でも0.50%から0.75%の利上げとなる可能性があると指摘されたことで中長期的な米長期債利回りの上昇基調と日米金利差の乖離拡大がドル円の歴史的な大上昇基調を継続させやすい環境が続くとすれば、当面する重要イベント通過後の調整を消化しつつ、次の一段高へ向けた足場固めという局面ではないかと思われる。
【FOMCはWSJ紙報道通りの0.75%利上げ】
米連銀(米連邦準備制度理事会=FRB)は6月14-15日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)で通常利上げの0.25%に対して3倍となる0.75%の超大幅利上げを決定した。0.50%利上げ主張者が1名で全会一致ではなかったが、3月会合で0.25%利上げを行い、5月会合では0.50%の通常の2倍となる大幅利上げを決定して6月と7月も0.50%ずつの利上げ姿勢を示した状況からはインフレが一段と深刻化してきたことを踏まえて異例の0.75%利上げという超大幅利上げを決定した。0.75%の利上げは1994年11月以来27年半ぶりとなる。
パウエル議長は記者会見で、次回7月のFOMCにおいても「0.50%か0.75%の利上げを行う可能性が高い」との認識を示し、「政策金利を通常の水準へ速やかに動かし、7月に最大0.75%利上げを行えば一段と通常の水準になる」とし、「その後は引き締めペースの選択肢が増える」と述べた。
中間選挙が11月に迫る中でインフレ深刻化がバイデン政権の支持率低下を招いていることもあり、バイデン政権も米連銀もインフレ抑制が最優先課題であり、FOMC参加者の見通しでは年末時点では中立水準を超えて「3.00%から3.50%の景気引き締め的な水準」まで引き上げられる見通しとなっている。
パウエル氏は、「先週の5月CPIがサプライズな上昇」だったことなどが0.75%利上げに踏み切らせたとしたが、今回の超大幅利上げは「非常に異例」とし、「景気後退を引き起こすつもりはない」「ソフティッシュなランディングは可能だ」と述べた。
【米長期債利回りは高値更新から急低下】
米10年債利回りは6月13日に前日比0.21%の上昇で一時3.38%を付けて5月9日の3.20%及び2018年10月の3.26%を超えてパンデミック以降の最高値を更新し、6月14日も前日比0.11%上昇の3.48%として一時は3.49%を付けて2011年4月以来11年ぶり高水準に達していた。いったん3.27%まで下げたところからFOMCの利上げ発表直後には3.45%へ上昇したが、材料消化から低下に転じて前日比0.19%低下の3.29%へと下げた。
2年債利回りも前日比0.24%の大幅低下で3.20%とし、前日に高値で3.46%を付けて2007年11月以来の高水準に達していたところからは大幅な低下となった。30年債利回りも0.09%低下の3.34%となった。
米長期債利回りが低下に転じたことでそれまでのドル全面高からドル安へと風向きが変わりドル円も下落したが、この長期債利回り低下が数日続くのか、今後も大幅利上げは継続してゆくと再認識して早々に上昇再開へ向かうのか、16日夜の米国市場動向で見定める必要があるだろう。
【NYダウは6日ぶり反発、ナスダックは連騰】
米連銀の金融引き締め強化による景気減速懸念で前日まで5日間の大幅続落となり1月5日の史上最高値以降の安値を更新していたNYダウは6日ぶりの反騰で前日比303.70ドル高と上昇した。一時は600ドル高を超えたが金融引き締めは継続するとして上昇一巡後は上げ幅を削った。ナスダック総合指数は6月13日まで続落したところから14日は前日比19.12ポイント高と小幅反発したが、15日は270.81ポイント高の続伸となった。ひとまずイベント通過で買い戻されている印象だが、今後の金融引き締めによる景気鈍化、中国の感染規制が終息しきれないこと、ロシア制裁の影響長期化等の懸念は継続している。
6月15日に発表された5月の米小売売上高は前月比0.3%減となり4月の0.7%増から悪化して市場予想の0.2%増を下回った。自動車を除いても前月比0.5%増で4月の0.4%増からやや改善したものの市場予想の0.8%増には届かなかった。
NY連銀の6月景況指数はマイナス1.2となり5月のマイナス11.6から大幅に改善したもののマイナスにとどまり市場予想の3.0を下回った。
5月の輸出入物価指数は輸入物価の前月比が0.6%上昇で4月の0.4%から伸びが加速、輸出物価は2.8%上昇で4月の0.8%から大幅に伸びている。
6月のNAHB住宅市況指数は67となり5月の69から悪化して市場予想の68を下回った。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては6月15日午前高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。ボトム形成期は9日夜安値を基準とすれば14日夜から16日夜にかけての間と想定されて既に反発注意期となるが、13日夜安値を基準とすれば16日夜から20日夜にかけての間へと長引く可能性がある。強気転換はFOMC直後の高値134.94円超えからとし、その場合は新たな強気サイクル入りとして20日午前から22日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では6月15日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、先行スパンを上抜くところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月16日早朝への下落で20ポイント台へ低下したため売られ過ぎからの反発注意とみるが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行はまだ見られないのでもう一段安の懸念が残る。16日早朝安値を割り込んで一段安する際に強気逆行が見られる場合は反騰警戒とし、50ポイント超えからは上昇再開へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月16日早朝安値133.49円を下値支持線、16日未明高値134.94円を上値抵抗線とする。
(2)134.94円を下回るうちは一段安余地ありとし、133.49円割れからは132円台中盤を目指す下落を想定する。132.50円以下は反発注意とするが、134円以下での推移が続くうちは17日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)134.50円超えからは上昇再開の可能性ありとみて16日未明高値試しとし、高値更新からは一段高を目指す流れを見込み136円台への上昇を想定する。また134.94円を超えた後も134.50円以上での推移なら17日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/16(木)
休場、南ア
日銀・金融政策決定会合初日
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 0.40万人、予想 2.50万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 3.9%、予想 3.8%)
17:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 1.00%、予想 1.25%)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数・年率換算件数 (4月 172.4万件、予想 170.7万件)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 前月比 (4月 -0.2%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 5月 建設許可件数・年率換算件数 (4月 181.9万件、予想 178.7万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 前月比 (4月 -3.2%、予想 -2.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 130.6万人、予想 130.1万人)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 2.6、予想 5.5)
21:45 (米) パウエル米連銀議長、米連銀主催会議開会挨拶
6/17(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 -0.10%、予想 -0.10%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 1.4%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -4.9%、予想 -4.3%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 1.4%、予想 -0.9%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・徐自動車 前年同月比 (4月 -6.1%、予想 -5.0%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、記者会見
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.0%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 3.3%)
18:00 (欧) 5月 HICP消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 8.1%、予想 8.1%)
18:00 (欧) 5月 HICP消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 3.8%、予想 3.8%)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 1.1%、予想 0.4%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 79.0%、予想 79.2%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.4%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:橋本 光正
2022.06.16
米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利記者発表(22/6/16)
昨日開催されたFOMC金融政策会合の記者発表要旨が公表されました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.06.16
ドル円、高値更新後に急反落。パウエルFRB議長の慎重な発言を材料視(6/16朝)
15日(水)のドル円相場は高値圏から急反落。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。