ドル高リラ安が加速、ドル円の反落も重なり4月28日以降の安値を更新
〇トルコリラ円はドル高リラ安と円高が重なり下落、19日午前序盤8.01へ安値切り下げ
〇対ドルでは、ドル全面高で売られ16リラ試し、5日から10営業日連続の下落
〇インフレ進行続き経常収支悪化の改善なければ中銀への利上げ催促的なリラ売り加速しかねない
〇エルドアン大統領は北欧2国のNATO加盟を拒否する姿勢表明、加盟は全会一致が原則
〇加盟拒否だけに終われば欧米からの孤立としてマイナス効果が拡大することも懸念される
〇8.07から8.10手前は戻り売りにつかまりやすい、8.00割れからは7.90台前半への下落を想定
〇8.10超えからは8.15前後への上昇想定するも8.15以上は反落要警戒
【概況】
トルコリラ円の5月18日は8.19円から8.02円の取引レンジ、19日早朝の終値は8.03円で前日終値の8.14円からは0.11円の円高リラ安となった。
ドル円の大上昇に押し上げられて3月11日安値7.76円から4月28日高値8.88円まで上昇してきたが、ドル円が131円台到達後に上昇一巡となって失速したことに加え、先週末にかけてのドル全面高の進行でドル高リラ安が加速したことにより4月28日高値を起点として下落に転じた。
5月9日に4月30日未明安値8.70円を下値支持線とした持ち合いから転落し、5月12日夜安値8.28円まで下げたところから三角持ち合いの様相となっていたものの5月16日に持ち合い下放れとなり下げ足が早まっていたが、5月18日はNYダウの大幅下落をきっかけにドルストレートではドル高が再燃してドル高リラ安となり、株売り債券買いにより米長期債利回りが低下したためにドル円も失速したため、トルコリラ円はドル高リラ安と円高が重なり8.10円を割り込む下落となった。
5月19日午前序盤には8.01円へ安値を切り下げて8円割れへの余裕も乏しくなっている。
【対ドルで10営業日続落、16リラへ余裕無し】
ドル/トルコリラの5月18日は15.98リラから15.74リラの取引レンジ、19日早朝の終値は15.96リラで前日終値の15.90リラから0.06リラのドル高リラ安となった。
5月5日のトルコ4月CPI上昇率の上ブレからリラ売りが加速し、5月9日に3月11日に付けた安値15.00リラを突破したことでさらい勢い付いてきたが、18日はNYダウ大幅下落によるリスク回避感からドルストレートではドル全面高となりユーロやポンドのメジャー通貨が反落し、豪ドルや南アランド等の資源輸出通貨も下落したため、トルコリラもドル全面高の中で売られて16リラを試している。
日足の終値ベースでは5月5日から10営業日連続の下落となっている。
【1ドル=16リラを巡る攻防】
ドル/トルコリラは昨年12月23日高値からの下落で1月10日に13.93リラまで下落した後はしばらく安値更新を回避して1ドル=14リラがトルコ中銀による防衛ラインと市場は受け止めていた。ウクライナ戦争勃発からの下落で14リラを割り込んでから3月11日に15.00リラを付けた後もしばらくは14リラ台での推移を続けたために15リラが新たな防衛ラインと市場は認識していたが、現状は15リラを割り込んで16リラに迫った状況にあり、果たしてトルコ中銀が16リラを防衛ラインと設定して公然非公然の市場介入を行ってリラ安阻止を試すのかどうか、挑発しつつもやや慎重に見定めようとしているところと思われる。
トルコリラの下落は、高インフレが進行する中での利下げ強行やインフレ対策としての利上げを拒否するエルドアン政権及び中銀の金融政策への不信が第一だが、為替市場全般のドル高基調による圧迫感も続いている。主要国が金融引き締めへ向かう中で新興国へ向かっていた投資マネーも細ってきている。トルコのインフレ進行が続いて経常収支悪化が改善しなければ、トルコ中銀への利上げ催促的なリラ売りが一層加速しかねないところだが、5月26日の次回トルコ中銀金融政策決定会合まではまだ日数もあり、16リラの防衛ラインが決壊することも懸念される。
【トルコの北欧2国のNATO加盟拒否】
ウクライナ戦争の長期化を巡り北欧で中立を守ってきたスウェーデンとフィンランドがNATO加盟を正式に申請したが、これに対してトルコのエルドアン大統領は両国の加盟を拒否する姿勢を表明している。NATO加盟は全会一致が原則であり、トルコの強硬な反対姿勢が波紋を呼んでいる。
トルコはフィンランドとスウェーデンの両国がクルド労働者党(PKK)及びシリアのクルド勢力支援組織を擁護していると批判している。スウェーデンはシリア情勢に関するトルコへの批判姿勢により2019年からトルコへの武器売却を停止している。トルコの通信社報道によればフィンランドとスウェーデンが過去5年間でトルコからの身柄引き渡し要請33件に応じていないとし、その中には2016年のクーデター事件に関与したとされる反エルドアン派の人物も含まれているという。
トルコはEUへの加盟を申請してきたが今まで実現していない。またロシア製ミサイルシステムの導入やギリシャ沖ガス田開発等を巡ってEUからの制裁を受けてきた経緯もある。ウクライナ戦争ではウクライナ・ロシア双方との関係が深かったことで停戦協議に尽力してきたが、今回の北欧2国のNATO加盟承認とトルコのEU加盟承認をバーターとする外交スタンスではないかとの見方も浮上している。このため、トルコのEU加盟申請への前向きな動きがみられるようだとエルドアン政権及びトルコリラにはプラス効果が出てくる可能性があるが、北欧2国の加盟拒否だけに終われば欧米からの孤立としてマイナス効果が拡大することも懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月12日夜安値を起点とした三角持ち合いから下放れて弱気サイクル入りしたとして5月17日夜から19日夜にかけての間への下落を想定してきた。
5月19日午前へ続落しているので引き続きボトム形成中とみるが、17日夜にいったん戻してから一段安しているため、17日夕安値でボトムを付けて既に底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性もあり、その場合はボトム形成期が20日夕から24日夕にかけての間へと延びる可能性もあると思われる。このため8.10円を超えないうちは安値試し継続とし、8.10円超えからは強気サイクル入りとして19日夕から20日の日中にかけての間への上昇を想定するが、戻りは短命の可能性もあるとみてその後の反落注意とする。
60分足の一目均衡表では、5月16日の持ち合い下放れにより遅行スパンが悪化し、先行スパンからの転落も継続しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンを超えないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は5月17日夕刻に20ポイント割れへ低下したが、その後に相場が一段安しているものの指数のボトムは切り上がり強気逆行の気配となっている。45ポイントを超えないうちはもう一段安警戒とし、45ポイント超えからは50ポイント台回復を目指す反騰を想定するが、戻りは短命の可能性もあると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.00円を下値支持線、8.10円を上値抵抗線とみる。
(2)8.07円から8.10円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。8.00円割れからは7.90円台前半への下落を想定する。7.93円以下は反騰注意とするが、8.05円以下での推移が続く場合及び直近の安値から0.10円を超える反騰が見られない場合は20日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.10円を超える場合は8.15円前後への上昇を想定するが、8.15円以上は反落警戒としてその後に8.05円を割り込むところからは下げ再開みる。
【当面の主な予定】
5月20日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 67.3)
20:30 週次 外貨準備高 5/13時点 グロス (5/6時点 660.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/13時点 ネット (5/6時点 149.9億ドル)
23:30 4月 中央政府債務 (3月 310.9億リラ)
5月23日
16:00 5月 製造業景況感 (4月 109.7)
16:00 5月 設備稼働率 (4月 77.8%)
17:00 4月 観光客数 前年比 (3月 129.7%)
5月26日
16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 94.7)
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高
注:ポイント要約は編集部
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