2017年安値更新は必至
〇先週のユーロ、材料は金利市場とフィンランドとスウェーデンのNATO加盟の動き
〇ロシアが2カ国のNATO加盟に対しエネルギー輸出停止など経済制裁報復行えば欧州の景気減速加速か
〇景気悪化と利上げのスタグフレーション懸念続き、2017年安値をいつトライしてもおかしくない状況
〇今週はユーロドルの1.03トライに合わせてユーロ円の132円トライも見ることとなりそう
〇今週は1.0280レベルをサポートに、4月安値に近い1.0480レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、金利市場とフィンランドとスウェーデンのNATO加盟の動きとがユーロの材料となりました。金利市場は米金利だけでなくドイツ金利の動きにも注目が集まりましたが、ドイツ金利はドイツの材料というよりも米金利に追随して動いていただけともいえ、結局のところは米金利の動きが材料であったと言えます。
参考までに米金利(青)とドイツ金利(オレンジ)の先週の1時間足チャートの比較を載せておきますが、先週に関して言えばほぼ米金利に追随した動きであったと言ってよいでしょう。なお、ドイツ金利は24時間のフィードでは無いため直線的な部分がアジア時間に存在しています。
もうひとつの材料がフィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請ですが、フィンランドとロシアは隣国でかつ国境が1300qにも及び、ロシアは中立国がNATOに加盟することを非難し、フィンランドは第2次大戦時にソ連に侵攻されたこともあり、ウクライナ危機を見てロシアの脅威を改めて感じることになったというところです。
これまでもロシアはNATOの東方拡大に強い難色を示してきたことから、今回の2か国の加盟によって欧州への経済制裁報復としてエネルギーの輸出などを停止する可能性もあり、欧州の景気減速に輪をかける流れになってくると考えられます。
欧州ではインフレが激しく年後半のどこかの時点でECBによる利上げが行われるとの見方がコンセンサスとなって来ていますが、景気悪化と利上げというスタグフレーション懸念が今後も続き、ユーロは2017年安値をいつトライしてもおかしくない状況です。
日足チャートをご覧ください。
テクニカルに現状もっとも気になる水準は長期的な最終ターゲットとなる2017年年初の安値1.0340レベルですが、既に手前のターゲットは全て到達したことから、今週はいよいよこの1.0340レベルをトライしに行くと見ています。そして同水準を下抜けると長期的には次のターゲットとしてパリティ(1ユーロ1ドル)が視野に入ってくることとなります。
今週は2017年安値をどこまで更新できるかに注目ですが、一気に通り抜けるとも考え難く1.0280レベルをサポートに、4月安値に近い1.0480レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週もユーロ円の日足チャートです。先週考えた以上にユーロ安となったことでユーロ円も一時132.66レベルの安値をつけました。ユーロドルが一段安となる展開を考えていますので、ユーロ円も更に売られる展開となりそうです。ここからのターゲットをテクニカルに考えます。
年初来安値と年初来高値の38.2%押しを下抜けた後にやや戻している段階ですが、チャートの形も悪く次のターゲットとしては半値押しの132.19レベルが視野に入る展開です。今週はユーロドルの1.03トライに合わせてユーロ円の132円トライも見ることとなりそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
5月16日(月)
17:20 パネッタECB理事講演
17:40 レーンECB理事講演 ☆
18:00 ユーロ圏3月貿易収支
23:15 英中銀総裁講演 ☆
5月17日(火)
15:00 英国4月失業率
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP改定値 ☆
26:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
5月18日(水)
15:00 英国4月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4月CPI ☆
5月19日(木)
18:00 ユーロ圏3月建設支出
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
21:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
5月20日(金)
08:01 英国5月消費者信頼感
15:00 ドイツ4月PPI ☆
15:00 英国4月小売売上高
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月9日(月)
ユーロドルはロシアの戦勝記念日でのプーチン演説に警戒感が広がっていたことと米金利上昇により欧州市場序盤には1.0495レベルと大台を割り込んでいました。しかし、東京時間16時からのプーチン演説はウクライナ侵略を肯定する程度の内容であったことや大台割れの買いも根強く反転。その後はドル円同様に米金利低下の動きからユーロ買い・ドル売りの動きで引けました。
5月10日(火)
ユーロドルは東京昼過ぎまでは底堅い動きとなっていましたが前日高値は超えられず、その後は終日じり安の展開を辿りました。しかし下値も1.0526レベルまでと1.05の大台割れにはまだまだ買いが残っていそうな地合いとなっていました。
5月11日(水)
ユーロドルは東京市場からじり高の動きとなっていましたが前日高値をトライしきれない状態でやや上値が重くなり始めたあたりでNY市場入り。強いCPI後の乱高下でユーロドルも1.0502レベルまで下落後に1.0577レベルまで急騰と、CPI直後に1日のレンジをつけに行く展開となりました。引けにかけては改めて売りが強まり1.05台前半へ押して引けました。
5月12日(木)
ユーロドルは前日NY市場以降の急速なドイツ10年債利回りの低下から上値が重くなっていましたが、フィンランドがNATOへの加盟を申請したことから西側とロシアとの国境がスカンジナビア半島東側まで延びることとなるためにロシアは反発。今後緊張が高まることであろうことからユーロ売りの材料となりました。
5月13日(金)
ユーロドルは東京市場ではドル円とともにユーロ円も底堅かったことからじり高となっていましたが、戻り売りも根強く欧州市場では反転下落、一時1.0349レベルと前日安値をわずかに下回りました。その後は2017年安値1.0341レベルを試しきれなかったことから週末を前にした買い戻しが入り、1.04前後でもみあいのまま引けました。
ディスクレーマー
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