ユーロ 材料的にもテクニカルにも一段安が燻る(週報1月第5週)

先週のユーロはFOMCに向けタカ派的な結果になるとの思惑からドル買いが先行していましたが、実際に最初の利上げが3月と示唆されて対ユーロでもドル一段高となりました。

ユーロ 材料的にもテクニカルにも一段安が燻る(週報1月第5週)

材料的にもテクニカルにも一段安が燻る

〇先週のユーロ、米FOMC3月利上げ示唆でドル一段高、1.1235レベルへ
〇米金融引き締め前倒し、ウクライナ情勢緊迫に伴う地政学リスクがダブルパンチ
〇今週はユーロ圏CPI速報値 、英中銀MPC、ECB理事会、 ラガルドECB総裁会見予定
〇英中銀は利上げ予想、ECB緩和継続の動きに変化出れば買い戻し入る可能性
〇今週は1.1080レベルをサポートに1.1220レベルをレジスタンスとする週とみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロはFOMCに向けてタカ派的な結果になるとの思惑から既にドル買いが先行していましたが、実際に最初の利上げが3月になると示唆されたことから対ユーロでもドル一段高の動きとなりました。

また年明け以降緊張が高まっているウクライナ情勢ですが、米国がロシアに対してNATO軍の東欧からの撤退を拒否するなど米ロ間の協議にまったく進展が見られないことから、ロシア侵攻の可能性は高まっていると言われています。しかしNATO軍はロシアに配慮してウクライナ国内への派兵は考えていないと表明したため、ウクライナ市民は軍事訓練に参加するなど、かなり国内の情勢は緊迫している様子です。

西側諸国はロシアが動いた場合は厳しい経済制裁を行うとしていますが、バイデン政権はそれに加えロシアの銀行との取引を停止し、ロシアの金融を麻痺させることを計画していると述べました。ロシア資源の輸出代金を受け取れないだけでなく、グローバルな決済に必要なSWIFTからの締め出しも検討されるなど、金融制裁は過去に見たことが無いものになる可能性があります。

逆にそれだけウクライナ情勢が緊迫してきていることの裏返しでもあり、米国の金融引き締めの前倒しと合わせて地政学リスクがユーロにとってダブルパンチとなる流れが今週以降も続くと考えられます。ただ、金融制裁はロシアだけでなく欧州を中心に世界経済への影響が大きく、それを発端とする景気急減速にもつながりかねないため、ロシアがウクライナに侵攻した場合でも実施の可能性は疑わしいとする向きも欧州を中心に多いようです。

材料的には悪材料しか見当たりませんが、今週は英中銀が利上げに動くと考えられ、その直後のECB理事会も気になるところです。これまでのECBの緩和継続の動きに対して何らかの変化が出てくるようであれば、ポンドとともに一時的に買い戻しが入る可能性もありますし、金曜の米国雇用統計で非農業者部門雇用者数が下振れしてマイナスということになれば、ドル売りによる買い戻しという可能性もあります。

ただ、テクニカルにはもう少し下げるとターゲット達成となることから、今週はもう一段の下げを見ていた方が良いように思えます。まず週足チャートをご覧ください。

材料的にもテクニカルにも一段安が燻る

2020年安値と2021年高値との78.6%(61.8%の平方根)押しがちょうど1.10の大台と一致していることがわかり、現在は大台1.10をターゲットに一段安を試しやすい流れにあると言えます。いつもの日足チャートもご覧ください。

材料的にもテクニカルにも一段安が燻る 2枚目の画像

大きな下降トレンドの中で11月安値からのサポートラインと平行に引いたラインによる上昇チャンネル(青)がフラッグパターンとなって短期的にも一段安の動きを加速しやすい流れとなっています。10月末の高値を起点とした逆N波動(ピンク)でターゲットを求めると78.6%(61.8%の平方根)%エクスパンションが1.1083となっていて、短期的にはこの水準がターゲットです。

今週はこの短期ターゲットを参考に1.1080レベルをサポートに、上値は12月安値を参考に1.1220レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

ユーロドルだけでなくユーロ円でもユーロ安地合いが続いていますが、今週はユーロ円の週足チャートを見ます。

材料的にもテクニカルにも一段安が燻る 3枚目の画像

昨年5月高値以降着実に高値を切り下げ、12月安値の127円台前半がサポートとまだ距離はありますが、サポートを下抜けると下げが加速しそうなチャートとなっている点には注意が必要です。ユーロドルが一段安の動きとなってきた場合に、それがウクライナ問題が原因で株式市場が下げる動きとなるとユーロ円の急落につながりやすいため、ユーロ関連はウクライナ情勢がしばらくカギを握っているということになるでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

1月31日(月)
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP速報値 ☆
22:00 ドイツ1月CPI速報値 ☆

2月1日(火)
16:00 ドイツ12月小売売上高
16:00 英国1月住宅価格
16:45 フランス1月CPI速報値 ☆
17:50 フランス1月製造業PMI
17:55 ドイツ1月製造業PMI
17:55 ドイツ1月失業率
18:00 ユーロ圏1月製造業PMI
18:30 英国1月製造業PMI
19:00 ユーロ圏12月失業率

2月2日(水)
19:00 ユーロ圏1月CPI速報値 ☆
**:** 英中銀MPC(〜3日)

2月3日(木)
17:50 フランス1月サービス業PMI
17:55 ドイツ1月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏1月サービス業PMI
18:30 英国1月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏12月PPI ☆
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
21:30 英中銀総裁会見 ☆
21:45 ECB理事会 ☆
22:30 ラガルドECB総裁会見 ☆

2月4日(金)
16:00 ドイツ12月製造業新規受注
16:45 フランス12月鉱工業生産
18:30 英国1月建設業PMI
19:00 ユーロ圏12月小売売上高
22:30 米国1月雇用統計 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

1月24日(月)
ユーロドルはウクライナ懸念が重石となって東京朝方から対ドル、対円ともに下げる動きが続きました。NY朝方にユーロドルが1.1290レベル、ユーロ円も128.41レベルの安値をつけ、その後は買い戻しが目立ち東京市場の水準に戻して引けました。

1月25日(火)
ユーロドルはウクライナ問題を懸念して下落、週間安値を下回りテクニカルな売りも入ったことからNY前場には1.1263レベルの安値をつけました。しかし売り手が短期筋の仕掛けと見られたこと、FOMCを控えていることもあり引けにかけては欧州市場序盤の水準に戻しました。

1月26日(水)
ユーロドルはFOMCがタカ派的になるとの思惑からドル買いの動きとなりやや上値が重たい取引が続きました。FOMCは市場参加者の予想通3月から利上げを行うことを示唆する内容となり為替市場はドル買いで反応、ユーロドルも1.1235レベルへとドル買い・ユーロ売りが進みました。

1月27日(木)
ユーロドルは前日のFOMC後もドル買いの流れが終日続き、昨年安値を下回るとテクニカルな売りも加わりました。安値を1.1131レベルまで切り下げ、そのまま安値圏での引けとなりました。

1月28日(金)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入りドル高の動きの中で一時1.1121レベルと2020年6月以来の安値をつけました。その後はドル円と歩調を揃えNY市場ではドル売りの動きとともに1.1174レベルまで値を戻し、引けにかけては若干押して引けました。

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