ダマシを経て再びユーロ安の流れに(週報1月第4週)

先週のユーロは、株安によるユーロ円の売りも重なり上昇前のもみあい水準へと押す動きとなりました。

ダマシを経て再びユーロ安の流れに(週報1月第4週)

ダマシを経て再びユーロ安の流れに

〇先週のユーロ、1.13台のレジスタンス抜け上昇するも地政学的リスクなどで上昇前水準へ押す
〇株式市場が短期的に下降トレンド入り、ユーロ円の売りが入りやすい地合いに
〇米国利上げと株安は織り込み済み、今週はウクライナ問題がユーロにとって気になるところ
〇今週は1.1230レベルをサポートに1.1370レベルをレジスタンスとする週とみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは前週に12月の高値圏であった1.13台半ばから後半のレジスタンスを抜けたことで上昇に弾みがつくかと思ったところで急速にウクライナ問題の懸念から地政学的リスクでユーロに売りが入り、また毎週のように米国利上げ思惑が前倒しとなって来ていることから株安によるユーロ円の売りも重なり、結局は上昇前のもみあい水準へと押す動きとなりました。

米国の利上げ前倒し思惑はドル円週報に書きましたので簡単に触れるに留めますが、現状では年内4回の利上げ、1回目の利上げは3月FOMCと急速に前倒し思惑が広がってきました。FRBによるバランスシート縮小も年後半には始まると見られ株式市場は長期上昇トレンドが終わり、短期的には下降トレンド入りした可能性からユーロ円の売りが入りやすい地合いが続いています。

対ドルでのユーロ売りと対円でのユーロ売りというダブルパンチでユーロは一時的な上昇がダマシとなり再び12月のもみあい水準へと押してきましたが、米国利上げと株安は市場参加者はある程度織り込んでいるため、今週はウクライナ問題がどうなるのかがユーロにとっては気になるところでしょうか。米露間の協議は継続して行われるとはいうものの、ロシアとウクライナの国境では一段と緊張が高まっていて、米国はウクライナの大使館職員と家族に国外への退避命令を出しました。

ホワイトハウスもウクライナでの緊張を受けて東欧へ1000〜5000人の部隊を派遣し、必要であれば10倍に増やすとしています。英国外務省も週末にプーチン大統領がウクライナで親ロシア政権樹立を画策していると発表するなど、多くの西側諸国はロシアの動きに対して一段と警戒を強めています。

いっぽうドイツはロシア産天然ガスへの依存度が高く態度を決めかねるのではといった見方が根強かったのですが、先週シュルツ首相はノードストリーム(ロシアからの海底パイプライン)停止に言及するなど、エネルギー危機よりも対ロシアの強調を重視する姿勢を示しています。このまま行くとウクライナ問題は米国と欧州だけの問題では済まず、世界を巻き込んで西側諸国対ロシアという構図になりそうです。そうなると問題の長期化が株式市場の悪材料となり、米国の利上げ思惑と相まって更なるリスクオフ相場となるでしょう。

リスクオフで円買いというのは良いとして、米ドルとユーロという比較では近いという地政学的な面でもユーロ安になりやすいと見られ、しばらくは通貨の強弱的に、円>米ドル>ユーロという順序で考えることが妥当に思えます。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

ダマシを経て再びユーロ安の流れに

先々週の上げが大きなダマシとなりましたので、11月安値からのサポートライン(青)を残してラインは引き直しです。あまり綺麗ではありませんが、このサポートラインと平行に引いたラインとで緩やかな上昇チャンネル(青)を描いてみましたが、おそらくはこのサポートを下抜けて、このチャンネルが長期下降トレンドのもみあい局面だったという流れとなる動きを考えてみました。

単純にFRBとECBとの金融政策の温度差のみを考えていた時とファンダメンタル的には同じですが、そこに株安とウクライナ問題が加わり、ユーロドルも下げを再開するとなると、10月末の高値を起点とした逆N波動(ピンク)が短期的なターゲットを求めるによさそうです。フィボナッチ・エクスパンションを計算すると50%エクスパンションが1.1228となり、短期的にはこの水準を試しやすく、そこを抜けると11月安値1.1185を視野に入れる展開です。

上値については先週下げてからの戻りは12月高値圏となっていて、引き続き1.13台半ばから後半の上値は重いと見てよさそうです。今週は1.1230レベルをサポートに1.1370レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

今週はルーブルの週足を見てみましょう。紫の四角が1年、青の四角が1か月です。

ダマシを経て再びユーロ安の流れに 2枚目の画像

ロシアルーブルは新興国通貨のひとつという見方をされていて、国内でも取り扱っているFX業者もあります。政策金利が8.5%という点も本邦個人投資家にとっては高金利通貨として考えられています。しかし、新興国通貨は何も無い状態でも米国の金利上昇局面では弱くなりがちですし、ウクライナ問題で緊張が高まっていることを考えると売られやすいと考えた方が自然です。

テクニカルには長期レジスタンスラインを試している段階で、昨年高値を上抜けると一段とドル高・ルーブル安が進みやすくなりそうなチャートです。ウクライナ問題はルーブル安にも影響を与えていると見てよいでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

1月24日(月)
17:15 フランス1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国1月製造業・サービス業PMI速報値 ☆

1月25日(火)
18:00 ドイツ1月企業景況感

1月26日(水)
16:45 フランス1月消費者信頼感
28:00 FOMC結果発表 ☆
28:30 パウエルFRB議長会見 ☆

1月27日(木)
16:00 ドイツ2月消費者信頼感
22:30 米国10〜12月期GDP速報値 ☆

1月28日(金)
16:45 フランス10〜12月期GDP速報値 ☆
16:45 フランス12月PPI
18:00 ドイツ10〜12月期GDP速報値 ☆
19:00 ユーロ圏1月消費者信頼感

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

1月17日(月)
NY市場が休場で取引が活発では無い一日でした。ユーロドルは終日狭い値幅での取引が続き、1.1410レベルをもみあいの中心として横方向の動きとなっていました。

1月18日(火)
ユーロドルは東京後場の日経平均の下げ、海外市場ではダウ先物の下げと株式市場に売りが強まったことによるユーロ円の下げ、ホワイトハウスがロシアによるウクライナ攻撃の可能性について言及したことでユーロが全般に売られる結果となりました。

1月19日(水)
ユーロドルはドル売りの動きからじり高の展開ではあったものの株安によるユーロ円の下げもありドル円以上に動きが鈍い1日となりました。前日大きく下げたこともあり戻りも鈍い印象でした。

1月20日(木)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤にラガルドECB総裁がインフレに対処する用意があるとの発言を受け一時的に買いは出たものの、少なくとも年内の緩和は継続されるであろうことからすぐに元の水準へと戻しました。前日に続いてウクライナ問題がユーロ売り材料となりじり安の展開で1.13間近の水準での引けとなりました。

1月21日(金)
ユーロドルは東京前場に1.1301レベルの安値をつけたものの1.1300には買いオーダーも入っていたようで下げきれず、その後はNY市場まで週末前のポジション調整と見られるユーロ買いが目立ちました。NY後場はダウの下げに反応してユーロ円の上値が重くなっていたこともあり、ユーロドルも若干水準を下げての週末クローズとなりました。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る