ドル円 FOMCで材料出尽くしによるドル売りか(週報12月第2週)

先週のドル円は、前週末の下げに対する買い戻しが先行していましたが、ベースにはオミクロン株への警戒感が薄まっていたことがありました。

ドル円 FOMCで材料出尽くしによるドル売りか(週報12月第2週)

FOMCで材料出尽くしによるドル売りか

〇先週のドル円、ファイザーが3回接種でオミクロンに効果と発表で週半ばに114円近くまで戻す
〇週後半はエバーグランデの部分的デフォルト、CPI予想通りで113円台前半へ押しての引け
〇今週は15日FOMC、16日英中銀MPC、ECB理事会、17日の日銀会合と続く金融政策ウィーク
〇FOMC、テーパリングは1月から毎月300億ドル減額とし従来より3か月早く終了の可能性高い
〇今週は113.00レベルをサポートに、114.00レベルをレジスタンスとする流れと見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、前週末の下げに対する買い戻しが先行していましたが、ベースにはオミクロン株への警戒感が薄まっていたことがありました。そこにファイザーが3回接種でオミクロン株にも効果と発表したことから週半ばには114円近くまで戻しましたが、114円台では売りも多く反落。週後半はエバーグランデの部分的デフォルト(米ドル建て社債の利払いできず)、警戒されていた米国CPIが予想通りだったことから113円台前半へと押しての引けとなりました。

今週は金融政策ウィークで15日のFOMC、16日の英中銀MPC、ECB理事会、17日の日銀会合と続きます。日銀会合は蚊帳の外であること、MPCとECB理事会についてはユーロ週報で扱うため、ここではFOMCについて取り上げることとします。

前回11月3日のFOMC以降のFRB関係者の発言や11月30日に行われたパウエルFRB議長の議会証言から今週のFOMCで決められるであろうことは、テーパリングの加速と金利見通しにおける利上げ前倒しの2つがコンセンサスとなっています。

テーパリングは月額1200億ドルから毎月150億ドル(国債100億ドル、MBS50億ドル)ずつ減額し6月末に終了というのが現在のスケジュールです。しかし多くのFRB関係者がテーパリングの加速に言及しているため、1月から倍額の毎月300億ドルとし3月末に終了と従来よりも3か月早くなるという動きがもっとも可能性が高いものとなっています。

この場合、3か月早く利上げに動くことも出来、おそらく半年後の9月あたりから利上げに動く可能性が最も高いのではないかと思われます。現在のFF先物の取引状況を見てみましょう。

FOMCで材料出尽くしによるドル売りか

下から2022年9月限(ピンク)、2022年12月限(赤)、2023年12月限(紫)で既に9月時点での1〜2回の利上げを織り込んでいます。市場参加者の取引水準はFRBの動きよりも過敏であることから、現在のような高いインフレ率が今後も続くとすれば9月の利上げは想定内ということになります。

パウエル議長は議会証言でインフレに対して一時的という形容詞を取り下げ、またFOMCメンバーはパウエル議長よりもタカ派的なメンバーの方が多いであろうことから、金利見通しは前回の2022年末時点で五分五分から、2022年内の利上げという流れに代わるはずです。

金曜に発表された米国CPIは39年ぶりの高さとなりましたが、バイデン大統領はピークを打ったと発言し、市場はドル売りで反応しましたが、それでもFRBが想定するインフレターゲットを大きく超える状態は今後も続くであろうことから今週のFOMCでの判断への影響は無いでしょう。

影響を与える可能性があるのはオミクロン株の感染拡大ですが、ファイザーの3回接種で効果があるとの発表もあり、12月FOMCへの影響はほとんど無いと見られます。エバーグランデの部分的デフォルトも想定内という反応で米国株式市場は強い地合いを維持していることを考えると、これも影響は少ないと言えるでしょう。

そうなるとテーパリング加速と利上げ見通しの前倒しは金融市場にどう反応するかですが、おそらく初動はドル買いで反応する可能性が高いのですが、株式市場には調整が入り目先の材料出尽くしからドル円は思いのほかドルの上値が重くなってくるのではないか、というのが個人的な見通しです。

テクニカルにはいつもの日足チャートを見てみましょう。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

チャートの形状としては変形ダブルトップ状の反転パターンがはっきりしなくなってきましたが、9月安値と11月高値とのフィボナッチ・リトレースメントで半値押しの112.31(赤のターゲット)がターゲットとなりやすい流れに大きな変化はありません。いっぽうで11月高値と安値の半値戻しが114.01(青のターゲット)となっていて、114円台での上値の重さから、テクニカルにもレジスタンスとなりやすいでしょう。

今週はFOMCでドル買いが先行しても114円を超えることは出来ず反落する流れを想定していますが、そうなると下値も限定的で113円止まりでしょうか。イベントも多く振れる可能性はありますが、今週は113.00レベルをサポートに、114.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

12月13日(月)
08:50 日銀短観 ☆
16:00 トルコ10月経常収支、鉱工業生産

12月14日(火)
09:30 豪州11月企業景況感
16:00 英国11月失業率
19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
22:30 米国11月PPI ☆
**:** FOMC(〜15日)

12月15日(水)
08:30 豪州12月消費者信頼感
11:00 中国11月小売売上高、鉱工業生産 ☆
16:00 英国11月CPI ☆
16:45 フランス11月CPI
17:00 南ア11月CPI
18:30 南ア11月PPI
22:30 米国12月NY連銀製造業景況指数
22:30 米国11月小売売上高 ☆
22:30 米国11月輸入物価
24:00 米国12月NAHB住宅指数 ☆
24:00 米国10月企業在庫
24:30 週間原油在庫統計
28:00 FOMC結果発表 ☆
28:30 パウエルFRB議長会見 ☆
30:45 NZ7〜9月期GDP ☆
**:** 英中銀MPC(〜16日)

12月16日(木)
**:** 南ア市場休場
**:** 日銀会合(〜17日)
08:30 豪中銀総裁講演 ☆
08:50 本邦11月貿易収支(通関)
09:30 豪州11月失業率
16:45 フランス12月企業景況感
17:15 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国12月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
19:00 ユーロ圏10月貿易収支

20:00 トルコ中銀政策金利発表 ☆
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
21:45 ECB理事会 ☆
22:30 ラガルドECB総裁会見 ☆
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国11月住宅着工・建築許可件数
22:30 米国12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:15 米国11月鉱工業生産、設備稼働率
23:45 米国12月製造業・サービス業PMI速報値 ☆

12月17日(金)
**:** 日銀会合結果発表
09:00 NZ12月企業信頼感
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
16:00 ドイツ11月PPI
16:00 英国11月小売売上高
18:00 ドイツ12月ifo企業景況感
19:00 ユーロ圏11月CPI
19:00 ユーロ圏10月建設支出

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

12月6日(月)
週明けのドル円はオミクロン株への警戒感が落ち着きつつあることから金曜の下げに対して調整の買い戻しが先行しました。特に目立った材料が無い中で、リスクオフの巻き返しによる円売りという動きでしたが、NY市場ではNYダウが大幅高、日経先物も上昇しドル円は113.55レベルまで買い戻され高値圏での引けとなりました。

12月7日(火)
ドル円は前日の上昇に対して調整の1日となり113.60レベルを中心とした狭い値幅でもみあいに終始していました。

12月8日(水)
ドル円は欧州市場前場まで113.50レベルでのもみあいを続けていましたが、ファイザーが追加接種によりオミクロン株にも高い効果と発表したことを受けリスクオンの株高、円安となりました。一時113.96レベルをつけたものの114円台には売りが並んでいたこと、いっぽうで英国ではオミクロン株に対して行動規制を再強化するとの発言もあり、その後は押す動きも見られました。

12月9日(木)
ドル円は前日114円台トライに失敗した直後に米金利が低下する動きも重なってじり安の展開を辿りました。エバーグランデの部分的デフォルトを嫌気してNY市場前場には113.26レベルと前日安値を割り込んだものの後は続かず、引けにかけてはやや買い戻される動きとなりました。

12月10日(金)
ドル円は東京市場から欧州市場昼頃までは米金利上昇とともにドルが買い戻される流れが続きましたが、前日高値を超えられなかったことから上値が重くなりました。NY市場に入り発表されたCPIは予想通りだったものの前日にバイデン大統領が高めの数字を示唆する発言をしていたこともあってドル売りに動きました。NY昼前に113.22レベルまで押したものの週末を前に若干買い戻されての引けとなりました。

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