エルドアン大統領の利下げ政策継続姿勢変わらず
〇トルコリラ円、未明に8.45まで戻すも8日夜の大統領の利下げ継続姿勢強調で失速
〇ドル/トルコリラも9日早朝終値13.67で前日終値から0.18リラのドル高リラ安に
〇大統領は「低金利によってインフレと為替変動を抑える」と主張ぶれずに一貫
〇12/16のトルコ中銀政策金利は現行の15%から14%への利下げも予想される
〇8.35以下での推移中は下向きとし、8.20割れからは8.10前後への下落を想定
〇8.35から8.45手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の12月8日は8.41円から8.20円の取引レンジ、9日早朝の終値は8.31円で前日終値の8.41円からは0.10円の円高リラ安だった。
高インフレ下での利下げ強行を嫌気して11月に入ってからは暴落的な下げに見舞われ、12月3日には8.05円(ベンダーによっては8.10円)まで史上最安値を更新したが、その後は下げ一服で新たな安値更新を回避している。12月7日(8日未明)には8.45円まで戻したものの勢いは続かず、8日夜はエルドアン大統領による利下げ継続姿勢が改めて強調されたことで失速しており、史上最安値更新を試す流れが再燃している印象だ。
【対ドルでも最安値近辺へ下落】
ドル/トルコリラの12月8日は13.80リラから13.43リラの取引レンジ、9日早朝の終値は13.67リラで前日終値の13.49リラからは0.18リラのドル高リラ安となった。
12月3日には13.89リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、12月6日は新たな安値更新を回避したものの、終値ベースでは13.78リラをつけて12月2日から3日連続での最安値更新となった。
14リラ到達は時期尚早として12月7日はやや下げ渋ったものの、8日は大統領の利下げ継続姿勢から再び売られており、史上最安値更新への余裕が乏しくなっている。
【エルドアン大統領による利下げ継続宣言】
トルコのエルドアン大統領はドーハからの帰国に際しての記者団インタビューに答えて利下げ政策の継続姿勢を改めて強調した。
大統領は「低金利によってインフレと為替変動を抑える」「トルコ中銀による先週の市場介入にもかかわらずトルコの外貨準備は問題ではない」「私はこのような通貨への攻撃(リラ安)を覆すことができると信じている。私が常に言っているように神のおぼしめしがあればこれも過ぎ去るだろう。このことを皆に知らせよう」等と述べたという。また「物価上昇の原因は買いだめにある」「国民は辛抱強く政府の新たな経済モデルを信頼する必要がある」とも述べたようだ。
大統領は閣議後においても「政府の経済モデルでは経済成長や投資、輸出、低金利などが最優先に掲げられている」「エネルギー価格の上昇に伴う物価高騰は近く安定すると思う」「我々は長期的な繁栄と安定を目指している」と主張した。大統領の主張は一般的な金融政策論とは真逆なものだがこの主張はブレずに一貫している。
【12月16日のトルコ中銀金融政策決定会合では14%への利下げもあり得る】
トルコ中銀の金融政策決定会合は12月16日。米連銀のFOMC声明発表が16日未明にある。米連銀がインフレ対策に軸足をおいて量的金融緩和縮小=テーパリングの早期終了を目指して利上げ時期の前倒し感を強めていることや、12月8日にもブラジル等がインフレ対策で利上げに踏み切っていることなどと比較すれば、トルコ中銀による高インフレ下での連続利下げは異様なものとなっている。
カブジュオール中銀総裁は国内投資家との会談で12月の追加利下げ後にはしばらく様子を見るという姿勢を示したものの、果たしてエルドアン大統領による利下げ継続政策に逆らえるのかどうか疑問符も付くところだ。
12月16日のトルコ中銀政策金利に対する市場予想はまだまとまっていないが、現行の15%から14%への利下げも予想される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月1日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして12月6日午後から8日夕にかけての間への下落を想定してきたが、12月6日夕安値から7日夜へ戻したために12月8日午前時点では12月6日安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は6日夜から8日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるとした。
12月8日夜に8.20円まで反落しているため、8日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9日夕から13日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月8日未明高値からの下落により遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しつつあるので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返す場合は強気転換注意とするが8日未明高値を超えないうちはその後に先行スパンから転落するところで下げ再開に入るとみる。
60分足の相対力指数は12月7日午後から8日未明にかけての高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられたが、その後の続落で50ポイントを割り込んでいるため30ポイント割れを試す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.20円を下値支持線、8.45円を上値抵抗線とする。
(2)8.35円以下での推移中は下向きとし、8.20円割れからは8.10円前後への下落を想定する。8.10円以下は買い戻しも入りやすいと注意するが8.30円以下での推移なら10日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.35円から8.45円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみてその後に8.30円を割り込むところからは下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
12月09日
20:00 週次 外貨準備高(グロス) 12/3時点 (11/26時点 870.2億ドル)
12月10日
16:00 10月 失業率 (9月 11.5%)
12月13日
16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 8.9%)
16:00 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.5%)
16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 15.9%)
16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.2%)
16:00 10月 経常収支 (9月 16.52億ドル
12月15日
17:00 11月 財政収支 (10月 -174.1億リラ)
12月16日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
注:ポイント要約は編集部
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