リスク選好で上昇するも114円に届かずやや慎重な動き
〇ドル円、オミクロン株悲観後退で8日深夜高値113.95へ上昇するも114円台へは進めず
〇為替市場はユーロ急伸、豪ドル等も連騰でドルの強弱もまちまち、ドル円も上げ渋った印象
〇米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.52%、6日に上昇に転じてから3連騰
〇NYダウは3日間で千ドル以上の上昇となったことで高値警戒感も意識される
〇113.95超えからは114円台前半への上昇を想定、114.30以上は反落注意
〇8日夜の反落時安値113.29を割り込めば仕切り直しで113.00から112.75のゾーン試し
【概況】
ドル円は12月7日夜高値113.77円からややジリ安の推移となり8日夜安値で113.29円まで下げたが113円台序盤ではしっかりして深夜高値で113.95円へ上昇した。11月30日夜に一段安する前の29日夜高値と同値としたが114円台へは進めずに9日未明へやや下げている。
オミクロン株への過度の悲観が後退してリスク選好感が急激に回復したことで株高債券安・米長期債利回り上昇でドル円は上昇しているが、12月8日はNYダウが3連騰したものの勢いが鈍化、為替市場はユーロが急伸して豪ドル等も連騰したことでドルの強弱もまちまちとなり、ドル円も上げ渋った印象だ。
【リスク選好感回復続く】
11月26日に南ア周辺で発生した感染力の高いオミクロン株報道から金融市場全般が動揺する中でドル円はリスク回避的な円の買い戻しが集中して26日朝の115円台前半から11月27日午前に112.97円へ大幅下落、11月30日深夜には112.52円まで安値を切り下げた。その後は新たな安値更新を回避し、12月5日の米ファウチ国立アレルギー感染症研究所長がオミクロン株の重症度が低い可能性に言及したことから過度の悲観に対する修正に入ってNYダウが大幅反騰に入り為替市場もリスク選好感を回復、ドル円は12月4日未明安値112.54円をダブル底として反騰入りした。
12月6日と7日の2日間でNYダウは千ドルを超える急騰となり、8日も小幅ながら続伸したことでドル円も114円に迫ったわけだが114円到達には至らず、やや上値の重さも意識させる動きとなった。
12月8日にオミクロン株は世界53か国に波及しており感染力の強さを示しているが、当初懸念されていたデルタ株以上の重症化率にはならずに景気後退を招くとの悲観が解消してきている。米大統領首席医療顧問のファウチ国立アレルギー感染症研究所長は12月5日に重症化率が低い可能性を指摘したが、12月7日にも「オミクロン株の重症化率はデルタ株よりも重くないことはほぼ確実」と述べた。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も12月8日に「(判断を下すには時期尚早としつつ)デルタ株より症状が軽いことを示す根拠が一部にある」と述べている。
12月8日に米ファイザーは同社ワクチンの3回目ブースター接種がオミクロン株に有効との調査結果を発表したが、12月7日に英製薬大手グラクソ・スミスクライン社が抗体治療薬「ソトロビマブ」のオミクロン株への有効性発表も含めて市場を安心させてきている。
【株高債券安・米10年債利回りは3連騰】
12月8日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.52%となった。11月24日に1.69%まで上昇していたところからオミクロン騒動によるリスク回避的な債券買いとなったことで12月3日には1.33%まで低下していたが、12月6日から上昇に転じており、12月7日に0.04%上昇した勢いを継続して3連騰となった。
米2年債利回りは前日比0.01%低下の0.68%で終了したが、11月30日に0.44%までいったん下げていたところから上昇再開に入り12月7日には0.69%へ上昇して11月23日の0.68%を超え、12月8日も一時は0.71%を付けて年初来最高値を更新している。
NYダウは12月6日に前日比646.95ドル高、7日に同492.40ドル高、8日も同35.32ドル高と3連騰したが、この3日間で千ドル以上の上昇となったことで高値警戒感も意識されている。ナスダック総合指数は12月6日に前日比139.68ポイント高、7日に同461.77ポイント高、8日も同110.07ポイント高と3連騰している。
世界連鎖株高の様相であり、為替市場のリスク選好感を強めている。しかし11月26日からの急落がやや過剰だったとして、12月6日からの反騰もやや楽観過ぎるという印象もあるところがドル円の114円乗せを躊躇させているのかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月30日夜安値と12月4日未明安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたとし、サイクルトップ形成期を8日夜から10日夜にかけての間と想定した。12月8日深夜へ高値を切り上げているのでまだ上昇余地ありとみるが、8日夜に小反落したところから一段高しているため、8日夜安値を起点としてすでに新たな上昇期に入っている可能性も検討される。ただし12月8日夜安値113.29円割れからはいったん弱気サイクル入りとして9日午後から13日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月8日夜へジリ安となった際に遅行スパンがいったん悪化したもののその後の反騰で再び好転している。先行スパンへ潜り込んだところからも上抜き返しているため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は12月7日午後から8日夜にかけての高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるため、50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが40ポイント割れからは仕切り直しの下落に入る可能性を警戒して30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.29円を下値支持線、113.95円を上値抵抗線とする。
(2)113.50円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上向きとし、113.95円超えからは114円台前半(114.00円から114.50円)への上昇を想定する。114.30円以上は反落注意とするが、113.70円以上での推移なら10日の日中も高値試しを続けやすいとみる。また114円台を維持し始める場合は114円台後半へ上値目途を引き上げる。
(3)12月8日夜の反落時安値113.29円を割り込む場合はいったん仕切り直しとして113.00円から112.75円にかけてのゾーンを試すとみる。113円以下は反発注意圏とみるが113.29円以下での推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12/9(木)
10:30 (中) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 1.5%、予想 2.5%)
10:30 (中) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 13.5%、予想 12.0%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 162億ユーロ、予想 143億ユーロ)
16:00 (独) 10月 経常収支 (9月 196億ユーロ、予想 170億ユーロ)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 23.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 195.6万人、予想 191.0万人)
24:00 (米) 10月 卸売売上高 前月比 (9月 1.1%)
27:00 (米) 財務省30年債入札
12/10(金)
休場、タイ(憲法記念日)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前月比 (10月 1.2%、予想 0.4%)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前年同月比 (10月 8.0%、予想 8.5%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 5.2%、予想 5.2%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 0.6%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.4%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 2.9%、予想 2.2%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -147.36億ポンド、予想 -144.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支・全体 (9月 -27.77億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.9%、予想 0.7%)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 6.2%、予想 7.0%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 4.6%、予想 4.9%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (11月 67.4、予想 67.4)
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -1651億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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