トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ継続発言で最安値をさらに更新
〇トルコリラ円、11/30は8.94から8.21の取引レンジ、終値ベースで最安値更新
〇ドル/トルコリラ、11/30は13.73から12.68の取引レンジ、11月月間では30%の暴落
〇エルドアン大統領、高インフレ下での大幅利下げ姿勢改めて強調、発言受けリラ売り加速
〇7-9月期トルコGDPは5期連続プラス成長、今後リラ暴落やオミクロン株影響で成長鈍化懸念も残る
〇8.60以下での推移中は下向きとし、8.20割れからは8.00、7.80等を順次試す流れとみる
〇8.60から8.80にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の11月30日は8.94円から8.21円の取引レンジ、12月1日早朝の終値は8.39円で前日終値8.84円からは0.45円の円高リラ安となった。11月23日に付けた取引時間中の最安値8.47円を割り込み、終値ベースでも最安値を更新した。エルドアン大統領が出演したTVにおいて利下げ継続の必要性を強調したとの報道が急落を招いている。
【対ドルでも最安値を更新】
ドル/トルコリラの11月30日は13.73リラから12.68リラの取引レンジ、12月1日早朝の終値は13.47リラで前日終値の12.80リラから0.67リラのドル高リラ安となった。11月23日に付けた取引時間中の史上最安値13.49リラを割り込み、23日終値も割り込んで取引時間中及び終値ベースで史上最安値を更新した。
1日で凡そ7%の下落だが、11月23日に15%の暴落に続く大幅下落であり、11月の月間では凡そ30%の暴落となっている。
エルドアン大統領とその意に沿ったトルコ中銀による高インフレ下での大幅利下げ強硬姿勢が続いていることに加え、オミクロン株による新たな感染拡大への不安心理がリラ売りを助長しており、底の見えない状況が続いている。
【エルドアン大統領、利下げ継続姿勢強調で火に油注ぐ】
トルコのエルドアン大統領は11月30日のテレビ番組に出演して「金利の存在が豊かな人をより豊かにし、貧しい人をより貧しくする」として高インフレでも利下げは必要性との姿勢をを改めて強調した。この発言が報じられたことをきっかけにリラ売りが一段と加速した。
大統領は今年に入ってからも繰り返し利下げの必要性を強調する発言を繰り返して来た。10月14日には利下げに反対する中銀副総裁2名ら委員3名を解任、11月18日に3会合連続での利下げに踏み切った後にも「高金利との闘い、経済戦争に勝利する」と述べて利下げ継続姿勢を強調している。11月26日にネバティ財務副大臣は過去の利下げによるリラ安発生を振り返りつつ「今回は全力で実行に取り組む」と述べており、エルドアン政権及び中銀による利下げ継続姿勢は強硬となっており、現状のリラ暴落に対してもくじけずに12月16日の次回会合での連続利下げを追求している印象だ。
【トルコの7-9月期GDPは好調】
11月30日夕刻にトルコ統計局が発表した7-9月期のトルコGDPは前年同期比で7.4%増となり5期連続でプラス成長となった。前期比は2.7%増で4-6月期の0.9%増から伸びた。4-6月期の前年同期比は昨年のパンデミック初期との比較だったことで22.0%増と飛躍的な伸びだったが、7-9月期も力強い成長を維持している印象となった。
内訳では衣料品等の製造業が10.0%増。サービス業が20%を超える伸びだったが、金融保険部門は19.9%減となった。
世界規模での感染拡大によりサプライチェーンの混乱が続いているため、EU等が衣料品等の生産拠点を中国やアジアからトルコ等へシフトしていることも好影響となっている。またウィズ・コロナ政策により経済活動が活発に継続していることもプラスに作用している。しかし最近のリラ暴落による影響は反映されていないこと、オミクロン株発生による先行き不透明感もあるため、10-12月期の成長鈍化悪化への懸念も残るところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月18日のトルコ中銀による利下げ決定から11月23日夜安値へ急落し、24日夜高値まで戻したところから再び下落基調に入ったため、11月26日午前時点からは11月24日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして26日夜から30日夜にかけての間への下落を想定してきた。
12月1日早朝へ一段安となりリラ安に歯止めがかからずにボトム形成期を超えてきているため、11月23日夜安値から3日目となる11月26日深夜安値を前回のサイクルボトムとし、既に底割れにより新たな弱気サイクル入りしていると仮定する。新たなボトム形成期は12月1日夜から3日深夜にかけての間とし、長引く場合は12月6日の日中までと想定する。強気サイクル入りには8.80円を超える反騰が必要とみる。
60分足の一目均衡表では11月24日夜高値からの下落で遅行スパンが悪化、26日深夜には先行スパンから転落したが、その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換には先行スパンへ潜り込む規模の反騰が必要と思われるが、その前段階として遅行スパンが好転するところからはいったん戻りを試す可能性があるとみて高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月30日深夜からの下落で20ポイント台へ低下した。50ポイントまで戻せないうちはまだ一段安へ進みやすい状況とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.20円を下値支持線、8.80円を上値抵抗線とする。
(2)8.60円以下での推移中は下向きとし、8.20円割れからは8.00円、7.80円等を順次試す流れとみる。8.60円以下での推移なら12月2日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.60円から8.80円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月01日
16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 51.2)
12月02日
20:00 週次 外貨準備高・グロス 11/26時点 (11/19時点 879.2億ドル)
12月03日
16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 2.39%、予想 3.0%)
16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 19.89%、予想 20.70%)
16:00 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 1.8%)
16:00 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 16.8%)
16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 5.24%)
16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 46.31%)
12月16日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
注:ポイント要約は編集部
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