トルコリラ円見通し リラ売り止まず対ドル、対円での史上最安値更新続く(21/11/15)

トルコリラ円の11月12日は11.55円から11.34円の取引レンジ、13日早朝の終値は11.40円で前日終値の11.49円から0.09円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し リラ売り止まず対ドル、対円での史上最安値更新続く(21/11/15)

トルコリラ円見通し リラ売り止まず対ドル、対円での史上最安値更新続く

〇トルコリラ円、11/12は11.55から11.34の取引レンジ、11.30割れへの余裕乏しく最安値試す流れ
〇ドル/トルコリラ、11/12は10.02から9.84の取引レンジ、15日早朝は10.03と最安値更新
〇トルコ9月鉄工業生産、前月比1.5%減と悪化、同小売売上高は前月比1.2%増
〇欧州諸国、アジアからトルコへ生産拠点移動との報道、各種生産の期待集まる可能性も
〇11/18トルコ中銀金融政策決定会合、市場予想は3会合連続利下げ、実施の場合リラ売り加速か
〇11.40から11.50にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の11月12日は11.55円から11.34円の取引レンジ、13日早朝の終値は11.40円で前日終値の11.49円から0.09円の円高リラ安となった。
11月10日の米消費者物価上昇率が31年ぶりの高水準となったことでインフレ深刻化への懸念が拡大して米長期債利回りが急上昇、ドル全面高となる中でトルコリラは対ドルで売られて史上最安値を更新、トルコリラ円も円安に支えられたものの10日安値で11.46円を付けて10月25日に付けた11.50円を割り込んで史上最安値を更新した。11日も11.41円までさらに最安値を更新していたが、12日はドル全面高がやや一服したものの対ドルでのリラ売り攻勢は続き、ドル円も上昇一服で小反落したためにトルコリラ円は11.34円まで最安値を更新した。ベンダーによっては11.31円を付けており11.30円割れへの余裕も乏しく、15日早朝も最安値更新を試す流れとなっている。

【対ドルでの史上最安値更新も続く】

ドル/トルコリラの11月12日は10.02リラから9.84リラの取引レンジ、13日早朝の終値は9.97リラで前日終値の9.89リラから0.08リラのドル高リラ安となった。
ドル全面高が進む中で弱い通貨としてリラ売りが加速している状況にあるが、10月21日のトルコ中銀による大幅利下げを嫌気したリラ売りにエルドアン大統領による欧米10か国大使追放指示騒動が重なって10月25日に9.85リラへ史上最安値を更新し、その後は当面の悪材料一巡でいったん戻したものの早々に失速して11月10日に9.87リラへ安値を更新、11日に9.97リラへさらに安値を更新し、13日早朝にはついに1ドル10リラ台を付けるところとなった。週明けの15日早朝は10.03リラへと最安値を更新して取引を開始している。

【トルコの9月鉱工業生産は停滞】

【トルコの9月鉱工業生産は停滞】

11月12日に発表されたトルコの9月鉱工業生産は前月比1.5%減となり8月の5.6%増から悪化した。前年同月比は8.9%で8月の14.0%から後退した。世界規模での物流支障が影響を見せている印象だ。
9月の小売売上高は前月比で1.2%増となり8月の0.9%増から伸び、前年同月比は15.9%で8月と同じ水準を保った。
11月9日には欧州のアパレルメーカーなどがアジアにおける生産拠点をトルコやモロッコ、東欧などへとシフトしているとの報道があった。特に中国では感染者の絶対数は少ないもののデルタ株感染拡大が報じられておりゼロコロナ方針による厳しい規制が続いていること、世界的な資源エネルギー価格高騰や供給不足による製造業操業停止騒動などもあり世界規模のサプライチェーンにおけるボトルネックとなっている。また中国の人件費上昇によりベトナムへの生産拠点移設が続いていたがベトナムも感染拡大による規制で生産と物流に大きな支障が出ている。こうした問題が長引いていることから生産拠点をアジアから移す動きも目立つというわけだが、その点ではトルコが注目されている。

トルコのアパレル輸出がEU諸国からの発注急増で過去最高規模になっているとの報道もあった。トルコも感染拡大から抜け出してはいないがウィズコロナ政策で経済活動への規制は緩い。9月の鉱工業生産は停滞感を示すものだが、今後はトルコにおける各種生産への期待が集まってくることも考えられる。

【11月18日にトルコ中銀金融政策、市場予想は連続利下げ】

トルコのエルバン財務相は11月12日にトルコ議会の予算委員会で「政府は輸出促進のためにリラ安を望んでいるわけではない」「トルコは変動相場制を採用している」と述べてリラ安の政策的な誘導を否定したが、リラ防衛への積極的な姿勢は示していない。
11月18日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。
トルコ中銀は9月23日に政策金利の週間レポレートをそれまでの19.0%から18.0%へ引き下げた。直前にカブジュオール中銀総裁が政策金利の判断にはCPIの全体ではなくコア指数を参考とすると発言したことであるいは利下げに踏み切る可能性もあるのではないかと市場は警戒していたが、直前の予想中央値は19%の据え置きだったために利下げは弱気サプライズとなった。

前回の10月21日には連続利下げが警戒される中で18.0%から16.0%へと2%も大幅に引き下げられた。その時は中銀副総裁ら3名の委員が解任されていた事を踏まえて市場の事前予想は17.5%への利下げだったが予想を超える利下げ幅となったことでリラは対ドルでの史上最安値更新となった。
11月18日の中銀金融政策決定会合についての市場予想はロイター社のまとめでは15.0%へ3会合連続での利下げ予想となっている。11月12日にはドイツ銀行が11月と12月のいずれも1.0%ずつの連続利下げを行う可能性があると予想しているとの報道もあった。
米連銀、ECB、英中銀、豪中銀はまだ利上げに踏み切ってはいないので実質は政策金利を消費者物価上昇率が上回るマイナス金利状態であり、トルコも実質マイナス金利状態としては同じといえるが、トルコの消費者物価上昇率は10月時点で19.89%(9月は19.58%)、コア指数でも16.8%(9月は17.0%)と極めて高い水準にあり、利上げではなく連続利下げを行えばリラ安による通貨インフレも重なって収拾がつかなくなることも懸念される。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

世界的なインフレ進行の中で主要国中銀も徐々に引き締め化へと舵を切りつつあり、11月10日の米消費者物価上昇率の跳ね上がりにより米連銀も利上げ開始時期の前倒しへ向けた動きも出てくる可能性があり、ユーロドルやポンドドルが年初来安値を更新し、資源通貨・新興国通貨への売り圧力も強まっている中で金融政策への不信感が増している中でりリラの先安感は拭えない状況だ。
(1)当面、11.40円から11.50円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(2)史上最安値更新が続く場合、下値目途は11.20円、11.10円、11.00円と順次切り下がる可能性があるとみる。特に11月18日にトルコ中銀が連続利下げする場合は予想されていることとはいえリラ売りが加速しやすいとみる。

【当面の主な予定】

11月15日
 17:00 10月 財政収支 (9月 -235.9億リラ)
11月16日
 17:00 10月 自動車生産 前年比 (9月 -24.7%)
11月18日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 週間レポレート (現行 16.0%、予想 15.0%)
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 11/12時点 (11/5時点 857.9億ドル)
11月22日
 16:00 11月 消費者信頼感指数 (10月 76.8)
 17:00 10月 観光客数 前年比 (9月 59.45%)
 23:30 10月 中央政府債務 (9月 218.1億リラ)
11月24日
 16:00 11月 製造業景況感 (10月 109.6)
 16:00 11月 設備稼働率 (10月 78.0%) 


注:ポイント要約は編集部

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