トルコ中銀利下げショック一服だが下げ渋りにとどまり一段安懸念続く
〇トルコリラ円、9/28は利下げショック一服、12.50円割れは回避するが反騰入りのきっかけを得ず
〇ドル/トルコリラ、9/28は8.89から8.80の取引レンジ、27日史上最安値8.894への余裕乏しい
〇9月消費者物価コア指数次第では、政策金利追加利下げが警戒される
〇トルコ10年債利回り、先週の利下げ強行から急伸、今週は18.7%まで続伸
〇12.55以上での推移中は上昇余地ありとし、12.61を超える場合12.65前後への上昇を想定する
〇12.50割れからは下げ再開とみて、12.45から12.40を目指す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の9月28日は12.61円から12.50円の取引レンジ、29日早朝の終値は12.54円で前日終値の12.56円から0.02円の円高リラ安となった。
6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円をダブル底としてジリ高基調での推移を続けて9月2日には13.32円まで高値を切り上げてきたが、9月3日のトルコ8月物価上昇率の発表と米雇用統計通過後のドル高から下落に転じ、9月8日のトルコ中銀カブジュオール総裁による「政策金利の判断に際してはコアCPIを基準とする」旨の発言から利下げ警戒感を読んで急落、9月16日のエルドアン大統領による早期利下げ要求発言から一段安となり、9月23日のトルコ中銀による利下げ強行から23日安値で12.45円へ下落して6月2日安値に迫り、24日には12.426円、27日には12.423円と安値をさらに切り下げた。
9月27日午後安値の後は利下げショック安も一服して12.50円台を回復、28日は午後高値で12.61円まで戻したものの、28日夜にかけては為替市場のドル全面高が進んだことでドル/トルコリラが27日早朝の史上最安値に迫るところへドル高リラ安が進んだために失速、ドル円の上昇が続いたことで下支えは効いて12.50円割れは回避したものの反騰入りのきっかけを得ずにいる。
【対ドルでの下落一服】
ドル/トルコリラの9月28日は8.89リラから8.80リラの取引レンジ、29日早朝の終値は8.86リラで27日終値8.81リラからは0.05リラのドル高リラ安となった。
28日は午後からダウ先物が下落に転じてリスク回避感が再燃したことと、米長期債利回りの大幅続伸によるドル高圧力でユーロやポンドがFOMC後の安値を割り込む一段安となるなどドル全面高の様相となったが、南アランドもこの間の最安値を更新するなど新興国通貨への売り圧力も強まった。
ドルトルコリラは28日夜安値で8.892リラを付けて27日早朝に付けた史上最安値8.894リラに迫り、最安値更新には至らなかったものの8.87リラを挟んで安値圏を維持しており、最安値更新への余裕が乏しい。
【トルコ中銀による追加利下げの懸念】
トルコ中銀は9月23日に政策金利の週間レポレートを19.0%から18.0%へ引き下げた。8月会合までは「インフレ率を下回る政策金利にはしない」と繰り返し強調してきたカブジュオール中銀総裁が「インフレ指標をコア指数とする」と発言したことで利下げの可能性が懸念されてリラ売りが加速した。トルコの8月消費者物価コア指数の前年比は16.8%であり、今回の利下げによる政策金利18.0%を下回っているため、10月4日に発表される9月の消費者物価コア指数が18%以上へ上昇しなければ中銀は追加利下げに向かう可能性も考えられる。
カブジュオール総裁は「9月にリラが下落したのは米連銀の声明が主な理由であり、リラがさらに急落する根拠はない」と述べたと報じられている。また「経常赤字の縮小やリラ預金の増加により、リラが対ドルで急落する根拠はない」とも述べたとされる。自身の利下げが対ドルで史上最安値までリラ安を招いたと述べることはなかろうが、リラ安への開き直りにより、物価上昇が一段と悪化した際にはそれなりの対応を採るというような市場を安心させることを言えない状況も察せられる。
10月4日に発表予定の9月トルコ物価上昇率についてはまだ市場の事前予想がまとまっていないが、結果次第では追加利下げの可能性も警戒される。
【トルコ10年債利回りは18.7%へ急伸】
トルコの10年債利回りは3月のアーバル前総裁解任騒動時にそれまでの13.4%近辺の水準から20.0%まで急伸したが、その後は落ち着いて16%台まで低下してきていた。しかし先週の利下げ強行から急伸に入り、今週は18.7%まで続伸している。
米連銀が利上げ想定時期を前倒しして米長期債利回りが上昇しているのは金融政策を反映した正常な反応だが、トルコの10年債利回りの急反騰はトルコ中銀の無謀な利下げに対する悲観による長期国債売りで利回り上昇が余儀なくされている悪い状態での上昇であり、このことはトルコにとっての資金調達コストを押し上げて財政政策的には厳しい状況に追いやられる懸念を市場に抱かせるものだ。リラ安と長期債利回り急上昇の負のスパイラルも懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月23日夕へ戻り高値を切り上げていたところから中銀の利下げ報道により一段安したが、27日午後へ続落したところから12.55円台回復へ反騰したために28日午前時点では27日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は23日夕高値を基準として28日夕から30日夕にかけての間と想定したが、28日午後高値から反落しているため既に28日午後高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしていると思われる。
ボトム形成期は30日午後から10月4日午後にかけての間と想定されるので28日午後高値を超えないうちは一段安警戒とするが、28日午後高値を上抜き返す場合はサイクルトップ形成のやり直し上昇として30日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9月28日夜の反落では先行スパンからの転落を回避しているので、先行スパンからの転落回避中は28日午後高値超えからの上昇再開余地ありとするが、先行スパン転落からは下落期入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は28日午後への上昇では70ポイントに届かずに失速したが、40ポイントまで下げたところから50ポイント台まで戻しているのでまだ上昇余地が残るが、40ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.50円を下値支持線、28日午後高値12.61円を上値抵抗線とする。
(2)12.55円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、12.61円を超える場合は12.65円前後への上昇を想定する。12.65円以上は反落警戒とするが、12.55円以上での推移なら30日も高値を試す可能性が残るとみる。
(3)12.50円割れからは下げ再開とみて12.40円台前半(12.45円から12.40円)を目指す下落を想定する。12.42円以下は反騰注意とするが、12.50円以下での推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9月29日
16:00 9月 経済信頼感指数 (8月100.8)
9月30日
16:00 8月 貿易収支 (7月 -42.8億ドル)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
20:30 週次 外貨準備高(グロス) 9/24時点 (9/17時点 814.2億ドル)
10月01日
16:00 9月 イスタンブール製造業PMI (8月 54.1)
10月04日
16:00 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 1.12%)
16:00 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 19.25%)
16:00 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.4%)
16:00 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 16.8%)
16:00 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 2.77%)
16:00 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 45.52%)
10月21日
20:00 トルコ中銀の次回金融政策決定会合
※ポイント要約は編集部
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