ドル円 ドル高からの調整局面入り(週報9月第4週)

先週のドル円は、週前半は中国エバーグランデの破綻懸念で株式市場が大幅安で始まったこともあって、週初はリスクオフの円買いが先行しました。

ドル円 ドル高からの調整局面入り(週報9月第4週)

ドル高からの調整局面入り

〇先週のドル円、FOMC後米金利上昇の動きとともに上昇、金曜までで1円67銭の上げ幅
〇今週は29日のFRB議長、ECB総裁、日銀総裁、英中銀総裁によるECBイベントでの講演に注目
〇エバーグランデ問題、一時的とはいえリスクオフに振れる可能性にしばらくは注意
〇米国10年債利回り上昇、ドル買い材料として下支えしやすくなってくると見てよい
〇今週は大台110.00レベルをサポートに110.90レベルをレジスタンスという流れ

先週のドル円は、週前半は中国エバーグランデの破綻懸念で株式市場が大幅安で始まったこともあって、週初はリスクオフの円買いが先行しましたが、エバーグランデ問題が人民元建て債券は利払いを表明、いっぽうでドル建て債券は利払いが行われなかったものの、30日の猶予が付いているとのことから懸念先送りとなり、株式市場が底打ちとなったことからドル円も底打ちとなりました。

そしてFOMCでの11月テーパリングは想定通りだったものの、金利見通しが最近の地区連銀総裁のタカ派発言を反映し、利上げ時期前倒しと利上げ幅拡大という結果がしめされたことで米金利上昇の動きとともにドル円も上昇しました。FOMC当日の東京前場の安値から週末金曜までの上げ幅は1円67銭に達し、4月以来の値幅とドル円としてはかなり動いた一週間になったと言えます。

今週は半期末となり実需の動きに左右されやすいこと、また連日経済指標や要人発言が続きます。ドル円相場に特に影響を与えそうなものとしては、29日のFRB議長、ECB総裁、日銀総裁、英中銀総裁と主要4中銀総裁によるECBイベントでの講演、1日の日銀短観の2つに注目したいと思います。これらは結果次第でドル買いにもドル売りにも動く材料となります。またエバーグランデ問題は今後も色々とニュースが出てくるでしょうから、その内容次第ではリスクオフの動きとなるかを考えることとなります。

ただ、エバーグランデの問題は大きい問題ではあるものの、中国では今年に入ってからかなりの破綻処理がされていて、第1四半期には6社の負債総額がほぼ今回のエバーグランデと同じであること(大きな動きとはならなかった)や、中国国内では明らかにバブルとなっている不動産市場のことを考えると、中国政府は金融市場への影響を与えないようにエバーグランデの規模縮小あるいは破綻を考えていてもおかしくはありません。一時的とはいえリスクオフに振れる可能性にしばらくは注意したいところです。

そしてFOMC以降米国10年債利回りは上昇に転じ、金曜には1.466%と7月2日以来の水準へと上げてきました。より短期の2年債は6月以来の水準で年初来の水準を上抜けするのも時間の問題に思えます。米金利とドル円との相関を考えると、こちらはドル買い材料として下支えしやすくなってくると見てよいでしょう。

ただ、テクニカルには先週の上昇ペースが速い点は気にかかります。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週半ば以降の急激なドル高・円安の動きで8月高値と先週までの9月高値を結んだレジスタンスライン(青)を明確に上抜けることとなりました。短期的にはこの上抜けたレジスタンスがサポートとなりやすいと言えます。現在110.20レベルから週末に110.15レベルと緩やかな下げです。いっぽうで上値は8月高値110.80レベルを今朝もトライしましたが抜け切れずに反落したことで8月高値(黄色のラインマーカー)が短期的にレジスタンスとなりやすい水準です。

ただ、これら両水準では値幅が65銭にしかなりませんし、今週は日柄的にボラティリティが上昇し上下に振れやすくなること、また方向感が出にくくなることを考えると、両ラインのそれぞれ少し外側を考えるとよいかなと考え、大台110.00レベルをサポートに110.90レベルをレジスタンスという流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月27日(月)
20:45 ラガルドECB総裁EU議会証言 ☆
21:00 シカゴ連銀総裁講演
21:30 米国8月耐久財受注
22:00 NY連銀総裁講演 ☆
25:15 ブレイナードFRB理事講演 ☆
25:30 スペイン中銀総裁講演
27:00 英中銀総裁講演 ☆

9月28日(火)
08:50 日銀会合(7月)議事要旨公表
10:30 豪州8月小売売上高
15:00 ドイツ10月GFK消費者信頼感 ☆
15:45 フランス9月消費者信頼感
22:00 米国7月住宅価格
22:00 米国7月ケースシラー住宅価格
23:00 リッチモンド連銀総裁講演
23:00 米国9月消費者信頼感
28:00 アトランタ連銀総裁講演

9月29日(水)
**:** 自民党総裁選
08:00 (セントルイス連銀総裁講演)
18:00 ユーロ圏9月消費者信頼感 ☆
23:00 米国8月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計
24:45 FRB議長、ECB総裁、日銀総裁、英中銀総裁、講演 ☆

9月30日(木)
07:45 NZ8月住宅建設許可件数
09:00 NZ9月企業信頼感
10:00 中国9月製造業PMI ☆
10:30 豪州8月住宅建設許可件数
10:45 中国9月MarkIt製造業PMI
15:00 英国4〜6月期GDP改定値

15:45 フランス9月CPI速報値
15:45 フランス8月PPI
16:00 トルコ8月貿易収支
16:10 黒田日銀総裁講演
16:55 ドイツ9月失業率
18:00 ユーロ圏8月失業率
18:30 南ア8月PPI
21:00 ドイツ9月CPI速報値 ☆
21:00 南ア8月貿易収支
21:30 米国4〜6月期GDP確報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国9月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 NY連銀総裁講演
24:00 アトランタ連銀総裁講演
25:30 シカゴ連銀総裁講演
26:05 (セントルイス連銀総裁講演)
28:30 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

10月1日(金)
**:** 香港、中国市場休場
08:30 本邦8月失業率・有効求人倍率
08:50 日銀短観 ☆
08:50 日銀会合(9月)主な意見公表
16:00 トルコ9月製造業PMI
16:50 フランス9月製造業PMI
16:55 ドイツ9月製造業PMI ☆
17:00 ユーロ圏9月製造業PMI ☆
17:30 英国9月製造業PMI
18:00 ユーロ圏9月CPI速報値 ☆
21:30 米国8月個人所得・消費支出 ☆
22:45 米国9月製造業PMI ☆
23:00 米国9月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国9月ミシガン大消費者信頼感 ☆
23:00 米国9月建設支出
26:00 (クリーブランド連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月20日(月)
週明けの金融市場はエバーグランデ破綻懸念によるリスクオフ相場となりました。9月に入ってからずっと懸念されていたものの、中国政府も一企業の影響が金融システム全体に影響が出ないように配慮するはずだとの楽観的な見通しも強く、これまではそれほど大きな動きは出ていませんでした。しかし、20日から23日まで返済や償還が集中する一週間で、債務不履行が起きるという思惑から朝から株式市場が全面安、NY市場後場までこの流れが続きNYダウは一時1000ドル近い下げを演じました。ドル円も110円レベルから109円台前半へとリスクオフの円買いが続きました。

9月21日(火)
東京市場ではダウ先物が前日の安値から反発したこともあり日経平均株価も買いが先行、ドル円もリスクオフの巻き返しで欧州市場序盤には109.71レベルの高値をつけました。しかし、エバーグランデ懸念が去ったわけでは無く、実際に銀行への支払いが行われなかったことが確認されると、改めてデフォルトが懸念されダウ先は下げに転じました。ドル円もダウ先の動きとともに下げNY昼前には109.18レベルの安値をつけ上値が重たいままで引けました。

9月22日(水)
一週間で最大の注目イベントFOMCに向けてややドル高地合いでの結果待ちとなりました。結果は現状維持、テーパリングは11月会合で決定する可能性に言及と市場参加者の思惑と一致することとなりました。また金利見通し(ドットプロット)は、2022年末までに利上げを考える参加者が9人に増えたことで二分し、間を取れば0.25%が中間値と前回6月の現状維持(0.125%)から上がりました。さらに2023年末では、前回の中間値0.625%(2回の利上げ)から1.0%へと上がり3回以上の利上げを見込んでいるということとなり、為替市場はこの発表をきっかけにドル高地合いとなりました。

9月23日(木)
東京は休場、英中銀MPCに向けてドル円は前日FOMC後のドル買いを継続しました。MPCも現状維持とはなったものの、テーパリングを支持するメンバーが前回から一人増えポンド高、ユーロ高となりました。ドル円はクロス円の買いに支えられじり高の流れを継続したままで引けました。

9月24日(金)
ドル円は前日の流れを受けてドル買いが先行する中で実需のドル買いも加わり後場には110.57レベルの高値をつけました。その後欧州市場序盤に一時的に利食いの売りに押されたものの、海外市場に移ってからは米金利が上昇する動きとともに改めて買いが強まり110.79レベルまで高値を切り上げ、そのまま高値圏での引けとなりました。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

※ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る