トルコ中銀が懸念されていた利下げを強行でリラ急落、史上最安値に迫る
〇トルコ中銀、9/23金融政策決定会合で主要政策金利を1.00%引き下げ、18.00%とする
〇トルコリラ円、9/23夜のトルコ中銀利下げにより急落、安値12.45をつけ6/2安値12.44に迫る
〇6/2安値12.44割れの場合、昨年11/6の史上最安値12.03を試す可能性も懸念される
〇対ドル、利下げを受けてリラ売り、6/25の史上最安値8.7992をわずかに割り込み最安値更新
〇12.45割れ回避のうちは上昇余地ありとし、12.65を超える場合は12.70前後への上昇を想定する
〇12.50割れからは下げ再開とみて12.45試しとし、底割れからは12.40前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の9月23日は12.74円から12.45円の取引レンジ、24日早朝の終値は12.57円で前日終値の12.66円から0.09円の円高リラ安となった。
9月20日に12.56円まで下げた後は新たな安値更新を回避し、23日未明の米FOMCに対する反応は鈍かったが、23日夜のトルコ中銀による予想外の利下げにより急落となり、安値で12.45円をつけて6月2日安値12.44円に迫った。売り一巡後はやや落ち着いて12.50円台を回復しているが先行きの利下げ継続懸念もあり、6月2日安値12.44円割れの場合は昨年11月6日につけた史上最安値12.03円を試す可能性も懸念される動きとなった。
【対ドルで史上最安値】
ドル/トルコリラの9月23日は8.7998リラから8.6050リラの取引レンジ、24日早朝の終値は8.7622リラで前日終値8.6431リラからは0.1191リラのドル高リラ安値となった。
9月8日のカブジュオール中銀総裁発言、16日のエルドアン大統領発言で売られてきたが、23日夜の中銀による予想外の利下げを受けてリラ売りが先行、6月25日につけた史上最安値8.7992リラをわずかに割り込んで最安値更新となった。ベンダーによっては6月25日安値8.8061リラに対して23日が8.8016リラでまだ最安値更新に至らずか、同値レベルにとどまっているが、流れとしては史上最安値更新へ入ってきたという印象だ。
【トルコ中銀 懸念された利下げを強行】
トルコ中銀は9月23日の金融政策決定会合で主要政策金利を1.00%引き下げて18.00%とした。利下げは2020年5月以来となる。物価上昇を踏まえて市場予想は政策金利の据え置きだったが、9月8日にトルコ中銀のカブジュオール総裁が「政策金利の判断目安としては消費者物価上昇率の全体ではなくコア指数を基準とする」と発言、16日にはエルドアン大統領が早期の利上げを要求する主旨の発言を行っていたことから、あるいは利下げが強行される可能性があるとしてトルコリラは9月8日に急落、9月16日から続落に入っていたが、懸念された利下げにより安値では12.45円まで大幅下落して6月2日安値12.44円に迫った。
トルコ中銀は「コアインフレ率の鈍化と新型コロナウイルスのパンデミック対策として利下げが必要だ」とし、「最近のインフレ高進は一過性の要因によるもの」であり、金融引き締めに伴う銀行融資への影響が予想以上に高まり始めている事への対処としての利下げ決定であるとした。
9月3日に発表された8月の消費者物価上昇率は全体で前年同月比19.25%上昇となり今回の利下げ前の政策金利19.00%を上回ったが、コア指数の上昇率は16.8%で7月から若干低下していた。
エルドアン大統領は「低金利がインフレを抑制する」という異説を主張し、昨年11月にトルコリラが史上最安値まで暴落した後に利上げを3回続けてリラ防衛に寄与していたアーバル前総裁を3月に解任し、大統領の与党である公正発展党(AKP)の議員だったことのある利下げ派のカブジュオール総裁へ替えた。
6月2日に大統領が早期の利下げ要請に言及したことで急落した時も、カブジュオール総裁は「インフレ率を下回る政策金利にはしない」との就任以来の姿勢を繰り返し強調してリラ安を阻止してきた。しかし、9月8日に「コア指数を基準とする」としたことで理屈上の利下げ余地が発生していた。
今後、トルコの消費者物価コア指数がさらに低下するなら、その水準を追いかけるように利下げが継続する可能性もある。ゴールドマン・サックスは2022年半ばまでに15%まで引き下げるとの予想を発表、今年10月と11月の会合でもそれぞれ0.50%の利下げが予想され、その後も0.25%の利下げが繰り返される可能性があるとしている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月16日午前高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして20日夜から22日夜にかけての間への下落を想定していたが、20日夕安値の後は下げ渋り21日未明への下落でも安値更新を回避して21日夕刻へいったん戻したため、22日午前時点では20日夕と21日未明の両安値をダブルボトムとして反騰したとした。
9月23日夕へ戻り高値を切り上げていたところから中銀の利下げ報道により一段安したが、23日夜安値からは急落一服で戻しているため、23日夕高値を直近のサイクルトップ、23日夜安値を同サイクルボトムとする。新たな安値更新回避のうちは24日の日中から28日にかけての間への上昇余地ありとするが、戻りは短命の可能性ありとみて12.50円割れからは弱気転換注意とし、23日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして28日夜から30日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月23日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが好転してもその後に再び悪化するところからは下げ再開とする。
60分足の相対力指数は23日夜の下落時に30ポイントまで下げた後は下げ渋っているものの50ポイント台を回復できずにいるのでまだ一段安余地ありとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月23日夜安値12.45円を下値支持線、12.65円を上値抵抗線とする。
(2)23日夜安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、12.65円を超える場合は12.70円前後への上昇を想定する。12.70円以上は反落警戒とするが、12.60円以上での推移なら週明けも高値を試す可能性が残るとみる。
(3)12.50円割れからは下げ再開とみて23日夜安値試しとし、底割れからは12.40円前後への下落を想定する。12.40円以下は反騰注意とするが、12.50円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。またその際は12.30円以下を目指す流れへ進みやすくなるとみる。
【当面の主な予定】
9月24日
16:00 9月 製造業景況感 (8月 113.9)
16:00 9月 設備稼働率 (8月 77.1%)
17:00 8月 観光客数 前年同月比 (7月 367.5%)
9月29日
16:00 9月 経済信頼感指数 (8月100.8)
※ポイント要約は編集部
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