トルコリラ円見通し 大統領の利下げ要求圧力強まり12.60円割れへ続落、6月2日安値に迫る勢い(21/9/21)

トルコリラ円の9月20日は12.72円から12.56円の取引レンジ、21日の早朝終値は12.60円で前日終値の12.69円から0.09円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 大統領の利下げ要求圧力強まり12.60円割れへ続落、6月2日安値に迫る勢い(21/9/21)

大統領の利下げ要求圧力強まり12.60円割れへ続落、6月2日安値に迫る勢い

〇トルコリラ円、9/20は12.72から12.56の取引レンジ、日足は5日連続の陰線引けとなる
〇エルドアン大統領のインフレ抑制についての発言、リラ売り誘発か
〇対ドル、9/20は8.72から8.62の取引レンジ、史上最安値に迫る水準、3日連続の日足陰線
〇全般的なドル高・中国恒大デフォルト懸念によるリスク回避の流れ、さらなるリラ売りとなりやすい環境
〇12.70以下での推移中は一段安警戒とし、12.56割れからは12.50、12.40台後半への下落を想定する
〇12.70超えからは12.73から12.77を試すとみるが、12.75以上は反落警戒とみる

【概況】

トルコリラ円の9月20日は12.72円から12.56円の取引レンジ、21日の早朝終値は12.60円で前日終値の12.69円から0.09円の円高リラ安となった。
9月9日から16日の日中にかけては9月9日夕安値から10日夕高値までの高安レンジ内で60分足レベルの三角持ち合いを形成していたが、16日夜に持ち合い下放れから一段安に入り、17日夕刻に17日未明安値を割り込んだところから下げ足を速めた。
エルドアン大統領は9月16日に「インフレ率を可能な限り早く低下させて不合理な物価高を防ぐ」と発言したと報じられたことが16日夜から17日へのリラ売りを誘ったとされる。
1日の下落規模としては9月8日にカブジュオールトルコ中銀総裁が「政策金利の判断目安としてのインフレ率については全体のCPIではなくコアCPIとする」旨の発言を行ったことで中銀がエルドアン大統領の利下げ要求に応えるのではないかとの懸念で前日比0.20円安となったところに近い。
週足では17日時点で前週比0.26円の下落で2週連続の陰線引けとなったが、週明けも大幅続落で日足は9月14日から5日連続の陰線引けとなった。

【ドル全面高にリラ売りも重なる】

ドル/トルコリラの9月20日は8.72リラから8.62リラの取引レンジ、21日早朝の終値は8.66リラで前日終値の8.63リラから0.03リラのドル高リラ安となった。3日連続の日足陰線での続落となったが、終盤は米長期債利回り上昇によるドル高一服感からやや戻して下ヒゲを付けた。
9月20日安値の8.72リラは8月11日の8.68リラを割り込んで6月25日に付けた史上最安値8.799リラに迫る水準となってきた。
米連銀のFOMCが迫る中でドル高感が強まり20日夕刻にはユーロドルが1.170ドルまで下落して9月3日以降の安値を更新、ポンドドルは21日未明へ安値を更新、豪ドルも20日夜に9月3日以降の安値を更新している。中国不動産デベロッパー大手の恒大によるデフォルト問題で世界連鎖株安となりリスク回避的なドル買いが進む一方、NYダウが一時970ドルを超える大幅下落となったことで安全資産買いで米長期債が買われて利回りが低下したことでドル高がやや緩む展開。しかし全般的なドル高、リスク回避的な投機通貨の整理売りの流れは利下げ問題再燃でリラ安となる中ではさらにリラ売り攻勢がかかりやすい環境と言えそうだ。

【9月23日未明のFOMC声明、23日夜のトルコ中銀金融政策発表】

トルコリラ円は6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円をダブル底とし、昨年11月6日に付けた史上最安値12.03円割れをひとまず回避して戻してきたが、9月2日高値を起点に下落に転じた。それまでのリラ高の背景は、在任中に三度の利上げでリラ高をもたらせてきたアーバル前総裁が解任された後に就任したカブジュオール総裁がインフレ率を下回る政策金利にはしないと繰り返し強調してきたことで、当面は利下げがないとしてのリラ買いだった。

しかし9月8日にカブジュオール総裁は講演で、政策金利を判断するうえで消費者物価上昇率については全体ではなくコア指数を基準とする旨を発言した。トルコの8月消費者物価上昇率は全体では前年同月比19.25%で政策金利の週間レポレート19.00%を上回ったが、消費者物価コア指数の前年同月比は16.8%で7月の17.2%から若干低下して政策金利も下回っている。このためコア指数を基準とすれば利下げも可能ということで市場は利下げを警戒したリラ売りへと舵を切った。米連銀によるテーパリング開始への動きがドル高感を助長していることも重なり、トルコリラとしては全般的なドル高と利下げ懸念のリラ安が重なっている。
9月23日のトルコ中銀金融政策決定会合では利下げは見送られるとの見方が大勢のようだが、利下げされる可能性及び次回会合での条件付きの利下げを示唆することも否定できないため、仮に利下げ決定や次回会合での利下げ濃厚となればリラ売りが加速しかねない状況と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月13日夕高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして14日午後から16日夕にかけての間への下落を想定していたが、16日午前時点では前回ボトムから5日目に入ったために15日夜安値で直近のサイクルボトムを付けた可能性があるとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとしたが、9月15日夜安値から下げ渋っていたものの16日夜に一段安したために17日午前時点では16日午前高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りしているとして20日夜から22日夜にかけての間への下落を想定した。
20日夕刻へ一段安した後は下げ渋っているものの安値圏にとどまっているのでまだ21日夜、22日夜にかけての間への一段安警戒とし、強気転換は12.75円を超えるような反騰からとする。

60分足の一目均衡表では9月14日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し、その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は16日夜の下落時に20ポイント割れまで低下してからやや戻し、20日午後にも20ポイント割れまで下げている。両安値形成時の指数のボトムがほぼフラットだが、戻りも鈍いため強気転換は50ポイント超えからとし、40ポイント以下での推移中はさらに一段安余地ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月20日午後安値12.56円を下値支持線、12.70円を上値抵抗線とする。
(2)12.70円以下での推移中は一段安警戒とし、12.56円割れからは12.50円、さらに12.40円台後半への下落を想定する。12.50円以下は反騰注意とするが、12.70円以下での推移なら22日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.70円超えからは12.70円台中盤(12.73円から12.77円)を試すとみるが、12.75円以上は反落警戒とみる。

【当面の主な予定】

9月22日
 16:00 9月 消費者信頼感指数 (8月 78.2)
9月23日
 20:00 トルコ中銀 政策金利・週間レポレート (現行 19.00%)
 20:00 トルコ中銀 政策金利・翌日物貸出金利 (現行 20.50%)
 20:00 トルコ中銀 政策金利・翌日物借入金利 (現行 17.50%)
 20:00 トルコ中銀 政策金利・後期流動性貸出金利 (現行 23.50%)
 20:30 週次外貨準備高・グロス 9/17時点 (9/10時点 796.6億ドル)
9月24日
 16:00 9月 製造業景況感 (8月 113.9)
 16:00 9月 設備稼働率 (8月 77.1%)
 17:00 8月 観光客数 前年同月比 (7月 367.5%)
9月29日
 16:00 9月 経済信頼感指数 (8月100.8)


※ポイント要約は編集部

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