ドル円 もみあいか暴落か、エバーグランデ次第(週報9月第3週)

先週のドル円は、8月中旬以降の109円台前半の買いと110円台前半の売りの間での取引を続ける流れが続きました。

ドル円 もみあいか暴落か、エバーグランデ次第(週報9月第3週)

もみあいか暴落か、エバーグランデ次第

〇先週のドル円、水曜の下げで8/16安値109.11を下抜けず木曜に元の水準へ戻す
〇8月中旬以降の109円台前半の買いと110円台前半の売りの流れが続く
〇材料的には今週22日のFOMC待ち、コンセンサスは議論継続で決定は11月FOMCへ持ち越し
〇不動産大手エバーグランデによるチャイナショックが起きれば株式市場中心に暴落のリスク
〇同社倒産のニュースが入れば最近のレンジを下抜け、4月安値(107.48レベル)を試す可能性も
〇今週は波乱がなければ109.25レベルをサポートに110.30レベルをレジスタンスという流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は、水曜の下げで最近のレンジを下抜けたかと思われましたが、8月16日安値を下抜けられなかったことから翌木曜には元の水準へと戻し、結局のところは8月中旬以降の109円台前半の買いと110円台前半の売りの間での取引を続ける流れが続いています。

先週は日経平均株価が3万円の大台で底堅い動きとなり現物市場では年初来高値を更新したことがリスクオンの円売り材料となり基本的にドル円も底堅い動きの中で、米金利が週前半に下げ後半上げる動きがドル円の下値トライ失敗と一週間かけての行って来いの値動きにつながったと言えるでしょう。

材料的には今週22日のFOMC待ちの流れとなっていますが、コンセンサスは議論継続で決定は11月FOMCへと持ち越し。8月中旬頃に早期テーパリング思惑が高まった時期はあったものの、9月に入って発表された雇用統計、CPIともに予想よりも弱かったことから、最近ではテーパリング思惑はかなり低下していました。

いっぽうで9月FOMCでは四半期ごとの金利見通しも公表されます。ドットプロットチャートとして目にするものですが、6月FOMCでは2023年に0.5%の利上げが行われるとの見通しが増え、パウエル議長が利上げはまだ先のことでドットプロットは参考にすべきではないとの火消し発言が出ました。6月FOMC以降もタカ派の地区連銀総裁による早期テーパリング、早期利上げ準備の発言が続いているため、更に利上げ予想が増えているかどうか、テーパリング決定が無い場合でも市場が反応することは間違いありません。仮に前回以上に利上げ予想が増えていた場合にパウエル議長が会見でどのような話をするのかにも注目が集まります。

そして、もうひとつ気になるのが中国の不動産大手エバーグランデの動向です。一年前から経営危機の話が何度も出ているのですが、今回は倒産の危機も迫っているかなり危険な状況です。本日20日から明日21日がヤマ場と言われていますが、最近の中国共産党による規制強化が社会主義国家へ舵を切る序章だとすると、政府による救済が期待できない可能性があります。

本来であれば債務減免で金融機関を中心として債権者が7〜8割の債権放棄をすることで立て直しを考えるところでしょうが、もし倒産ということになると33兆円相当の負債総額となり、これはリーマンショックを引き起こしたリーマンブラザーズの負債総額65兆円の半分の金額です。コロナショックから立ち直る途上でエバーグランデによるチャイナショックが起きると今週の金融市場は株式市場を中心に暴落を演じるリスクがあります。

果たして中国政府が大きな金融危機が起きるリスクに対して全く動かないのかとなると疑問ですが、香港での国家安全法施行後の共産党は規制強化一辺倒で来たことを考えると故意に資本主義的な企業を潰し、ある程度の市場混乱を受け入れる可能性もあり、エバーグランデが存続できるかどうかはFOMC以上の注目材料となっています。東京の祝日も多く要注意の一週間となるでしょう。

FOMCは予想通りテーパリングの決定が無い場合、金利見通しに反応しやすいのですが、ドル円が最近のレンジを抜けるほどの動きにはならないでしょうが、エバーグランデ倒産というニュースが入ってくる場合にはドル円は最近のレンジを下抜けし、4月安値を試す可能性もあるかもしれません。

テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週は4月安値と8月安値を結んだサポートラインを下ヒゲで抜けたもののすぐに戻してきたことで依然としてこのサポートライン(ピンク)が有効と見てよさそうです。いっぽうで上値は8月高値と9月高値を結んだレジスタンスライン(青)が有効です。週初の時点でそれぞれのラインの水準は109.25〜110.30にあり、何も無ければこの中での動きに収まるはずです。

今週は何も波乱が無ければ109.25レベルをサポートに110.30レベルをレジスタンスという流れを見ておきますが、チャイナショックが発生した場合には、想定以上のリスクオフの動きとなる可能性があり、その場合には8月安値(109.53レベル)では止まらず、4月安値(107.48レベル)を視野に入れる大荒れ相場も考えておく必要があります。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月20日(月)
**:** 東京、中国市場休場
08:01 英国9月住宅価格
15:00 ドイツ8月PPI
23:00 米国9月NAHB住宅市場指数
**:** カナダ総選挙

9月21日(火)
**:** 中国市場休場
**:** 日銀会合(〜22日)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
16:05 デギンドスECB副総裁講演 ☆
21:30 米国8月住宅着工・建築許可件数
21:30 米国4〜6月期経常収支

9月22日(水)
**:** 香港市場休場
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
17:00 南ア8月CPI
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値 ☆
23:00 米国8月中古住宅販売
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

9月23日(木)
**:** 東京市場休場
15:45 フランス9月企業景況感
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
20:00 英中銀MPC結果発表 ☆
20:00 トルコ中銀政策金利発表 ☆
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 米国8月景気先行指標

9月24日(金)
**:** 南ア市場休場
07:45 NZ8月貿易収支
08:01 英国9月GFK消費者信頼感
08:30 本邦8月CPI
17:00 ドイツ9月ifo企業景況感
21:45 (クリーブランド連銀総裁講演)
23:00 パウエルFRB議長、クラリダFRB副議長講演 ☆
23:05 (カンザスシティ連銀総裁講演)

9月26日(日)
**:** ドイツ総選挙 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月13日(月)
東京市場のドル円は日経平均株価の動きに沿って前場もみあい後場は上昇の動きとなりました。欧州市場序盤に110.16レベルの高値を付けましたが、欧州市場に入り日経先物が売りに転じたことやNY市場では米金利低下によるドル売りの動きもあって大台を割り込んだ後は上値の重たい地合いのままで引けました。

9月14日(火)
ドル円は日経平均株価続伸の動きから底堅い展開とはなっていましたが、高値は110.16レベルと前日高値に並んでの米国CPI待ち。CPIは予想通りではあったものの、コアCPIが予想よりも弱く、また前月からの伸びも予想より低かったことから米金利が低下、それとともにドル売りの動きとなりました。NY昼前には10年債利回りが1.263%まで低下し、ドル円も売りが強まり後場には一時109.53レベルの安値をつけ、引けにかけてはやや戻しました。

9月15日(水)
ドル円は前日の流れを受けてドル売りが先行する中、東京後場に前日安値を下抜けるとテクニカルな仕掛け売りも加わって下げ足を速める展開となりました。NY市場の朝方には109.11レベルまで安値を広げましたが、米金利が前日とともに2点底を形成し上昇に転じたことからドル円にもやや買い戻しが入っての引けとなりました。

9月16日(木)
ドル円はNY市場までは109.30前後でのもみあい、NY市場に入って発表された米国の強い経済指標を受け米金利上昇とともに109.83レベルの高値をつけました。その後は僅かに押して高値圏でのもみあいのまま引けました。

9月17日(金)
ドル円は金曜も朝から底堅い展開となりました。日経平均株価が強かったこと、東京3連休前に実需のドル買いが入ったことがきっかけとなりました。NY市場に入り米金利が上昇したことから一時110.08レベルの高値をつけましたが、大台超えではドル売りオーダーも見られ若干下げての連休前クローズとなりました。

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