トルコリラ円見通し 米連銀議長講演後のドル安リラ高で確り(21/8/30)

トルコリラ円の8月27日は13.19円から13.06円の取引レンジ、28日早朝終値は13.13円で前日比0.03円の上昇。前週末の8月20日終値12.91円からは0.22円のリラ高円安となった。

トルコリラ円見通し 米連銀議長講演後のドル安リラ高で確り(21/8/30)

米連銀議長講演後のドル安リラ高で確り

〇トルコリラ円、28日早朝終値は13.13で20日終値12.91から0.22円のリラ高円安
〇対ドルでは、28日早朝終値8.34で前日終値8.38から0.04リラのドル安リラ高
〇27日発表の8月トルコ経済信頼感指数は100.8、市場予想の100.6を若干上回る改善
〇今年7月から8月にかけてのコロナ感染第四波は第三波を超える状況には至らず
〇9/1に4-6月期のトルコGDP発表、市場予想は前年同期比で21.7%と極めて高い水準
〇13.05以上での推移中は6/2以降の高値更新を試す可能性あり
〇13.00割れからはいったん下げに入り12.85から12.95にかけてのゾーンを試すとみる

【概況】

トルコリラ円の8月27日は13.19円から13.06円の取引レンジ、28日早朝終値は13.13円で前日比0.03円の上昇。前週末の8月20日終値12.91円からは0.22円のリラ高円安となった。
8月27日は21時半の米個人消費支出物価指数が30年ぶりの上昇率となったことで一時ドル高円安となったものの勢いは続かず、23時からのパウエル米連銀議長講演からはドル全面安となりドル円は失速したが、ドル/トルコリラでは20日以降のドル安リラ高基調を継続したためにトルコリラ円も13.05円以上を維持して確りした。
8月20日早朝に一時的な急騰で13.24円の高値を付けてから同日夕刻安値12.74円まで反落したが、その後はジリ高基調を続けており、26日夕高値で13.19円を付けてからは新たな高値更新へ進めずにいるものの確りしている。

トルコのエルドアン大統領は8月27日にサラエボの記者会見で、「25日に開始したアフガニスタンからのトルコ軍撤収が完了した」、「少数の技術要員を除きすべて撤収させた」と述べた。トルコ国防省は「トルコ軍はアフガンにおける20年間の任務を成功裏に終え撤収が完了した」と表明した。アフガニスタンで権力を掌握したイスラム主義勢力タリバンは首都カブールの国際空港の運営をめぐってトルコに協力を要請したとされ、トルコ側は再協議の可能性も示唆しているが、軍の駐留無しでの技術的協力では両者の思惑が一致しないのではないかと思われる。

【米連銀議長講演からはドル全面安でドルトルコリラもドル安リラ高を継続】

ドル/トルコリラの8月27日は8.40リラから8.31リラの取引レンジ、28日早朝終値は8.34リラで前日終値8.38リラからは0.04リラのドル安リラ高となった。
8月26日夕刻からは8.38リラを挟んだ横ばいが続いていたが、パウエル米連銀議長講演からドル全面安となる中でドル/トルコリラでもドル売りリラ買いの動きが優勢となり深夜にはこの日の高値となる8.31リラへ上昇した。
8月20日早朝の出来高が薄い時間帯でフラッシュクラッシュ的なドル安リラ高により8.25リラへ急伸し、20日夕刻に8.55リラまでいったん揺れ返しの下落となったところからドル安リラ高基調でのジリ高に入り、23日以降は日々高値を切り上げる展開を続けている。26日は高値を切り上げた後に若干の上げ渋りがみられたものの27日は26日のドル高リラ安分を解消する動きとなった。前週末の8月20日終値8.48リラからは前週比0.14リラのドル安リラ高であり、週足は3週連続で陽線(ドル安リラ高)となっている。

【経済信頼感指数上昇、各種景況感はほぼ改善傾向】

8月27日に発表された8月のトルコ経済信頼感指数は100.8となり7月の100.1から上昇、市場予想の100.6を若干上回る改善となった。同指数は昨年4月のコロナショック時には同年3月の94.8から58.4へと急激に悪化したが、その後は概ね持ち直しを続けている。コロナ感染拡大の第三波の影響等により今年5月には3月の98.9から92.6まで低下したが、6月に97.8へ戻し、7月から8月へと改善を継続した。
これで8月の各種景況感指数が出そろったが、消費者信頼感が7月の79.5から78.5へと若干悪化したほかは製造業、サービス業、小売、建設といずれも7月から上昇しており全体的な改善傾向が示されている。

米連銀議長講演後のドル安リラ高で確り

トルコにおける新型コロナウイルスの感染拡大の波は、2020年4月が第一波、2020年12月が第二波、2021年4月が第三波となりピーク時の新規感染者数は6万3000人に達したが、今年7月から8月にかけての第四波では8月11日に2万7000人を超えたもののその後はやや減少しており、今のところは第三波を超える状況には至らず、国内経済への影響もこれまでよりも小さいようだ。ただ世界規模での感染拡大が続けば輸出入及び観光客来訪にも影響が出かねないと注意したい。

【今週はトルコGDPと8月物価上昇率、週末の米雇用統計に注目】

9月1日に4-6月期のトルコGDPの発表がある。前年同期比で見れば昨年4-6月期にはマイナス10.3%へ落ち込んだが、その後は7-9月期を6.3%、10-12月期を5.9%、2021年1-3月期を7.0%と回復してきた。OECDの中ではかなり高水準の回復であり、今年3月から6月にかけてトルコの金融政策への混乱を背景としたリラ安が一服して持ち直している背景にもトルコの景気回復と成長がある。今回発表の4-6月期についての市場予想は前期比で1.7%、前年同期比で21.7%と極めて高い水準と見込まれているため、予想通りか予想を上回る場合にはリラ買い材料となることも考えられる。
9月3日午後には8月のトルコ物価上昇率の発表があり、消費者物価上昇率の前年同月比についての市場予想は18.7%で7月の18.95%からは若干鈍化するのではないかとみられている。政策金利の週間レポレートは19.00%であり、政策金利を上回る物価上昇となれば実質マイナス金利状態としてリラ売りが加速しやすくなるが、物価上昇が落ち着けば年後半には利下げ余地も出てくるような安定感が得られるかもしれない。

為替市場全般としては9月3日夜の米8月雇用統計が重要になってくる。
8月27日のパウエル米連銀議長によるジャクソンホールの講演については米連銀の量的金融緩和縮小着手は年末までには始まるだろうが利上げは急がれないとして講演内容が伝わり始めるとドル全面安の様相となった。トルコリラの対ドルでの動きはややリラ高ドル安程度ではあったが、8月20日以降の高値を更新し、8月20日早朝の一時的な急騰を除いて終値ベースで見れば8月11日以降の高値更新となった。8月27日はユーロやポンド等の上昇と共に資源通貨の豪ドルや南アランド、メキシコペソ等も対ドルで大幅上昇している。このドル安基調がさらに継続できるのかどうかは9月3日の米雇用統計にかかってくる。予想以上に改善した内容になってドル全面高が再燃するようだとドル/トルコリラにおけるドル安リラ高基調も変化を強いられる可能性もあるところと注意したい。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円をダブル底とし、その後はやや底上げをしつつ13円台序盤に抵抗感がある展開が続いている。13円台序盤の抵抗帯を超えて一段高してゆくには為替市場全般におけるドル全面安の加速によるドル安リラ高の進行、トルコ中銀及びエルドアン政権が市場に対して金融政策不安を感じさせないこと、トルコ経済の力強い回復が続くことが必要だ。

(1)中勢としては当面、13.00円を下値支持線、13.24円を上値抵抗線とみておく。
(2)13.05円以上での推移中は6月2日以降の高値更新を試す可能性ありとし、13.24円超えからは13.30円台前半へ向かうとみる。13.28円から13.35円にかけては売られやすい水準とみるが、13円台を維持しての推移が続くうちは中勢の上昇基調も継続で押し目買い有利の展開とみる。
(3)13.05円割れからは下向きとし、13.00円割れからはいったん下げに入り12.85円から12.95円にかけてのゾーンを試すとみる。12.90円以下は買い戻されやすいとみるが、12.95円以下での推移が続く場合は先行きも戻り売り有利の展開が続きやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月31日
 16:00 7月 貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
9月01日
 16:00 4-6月 GDP 前期比 (1-3月 1.7%)
 16:00 4-6月 GDP 前年同期比 (1-3月 7.0%、予想 21.7%)
 16:00 8月 イスタンブール製造業PMI (7月 54.0)
9月03日
 16:00 8月 消費者物価 前月比 (7月 1.8%、予想 0.6%)
 16:00 8月 消費者物価 前年同月比 (7月 18.95%、予想 18.7%)
 16:00 8月 生産者物価 前月比 (7月 2.46%)
 16:00 8月 生産者物価 前年同月比 (7月 44.92%)
 20:30 外貨準備高(グロス) 8/27時点 (8/20時点 681億ドル)

9月09日
 20:30 外貨準備高(グロス) 9/3時点
9月10日
 16:00 7月 失業率 (6月 10.6%)

9月23日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.00%)

※ポイント要約は編集部

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