欧州中央銀行(ECB)金融政策会合の議事要旨
昨日、ECBは7月下旬に行われた金融政策会合の議事要旨を公表しました。内容的に新味あるものは少なく、これまでの緩和策を継続する旨が中心となり、公表後にユーロは少し売られました。以下は@7月8日公表の新たな金融政策内容とA昨日のECB議事要旨の一部要約になっています。
@ 7月8日に発表された金融政策戦略に関する記者発表では、
「(前略)運営審議会は物価安定が中期的に2%インフレ目標を維持することが最善であると考えている。この目標は対称的である。その意味することは、目標とするインフレ率に関し、マイナスやプラスの偏差は等しく望ましくないことである。経済が名目金利の下限近くで動いている時、インフレ目標からマイナス偏差を避けるために、強力あるいは持続的な金融政策によりそれから守ることが必要とされる。これはまた、インフレが目標越えて緩やかに移行する期間を意味している。
また、運営委員会は一連のECB金利が主要な金融政策手段であることを確認した。他の手段として、例えば、フォワードガイダンス、債券購入、あるいは長期借入操作は、過去10年以上に亘り名目金利の下限によって生じる制限を緩和するのに役立っており、ECBのツールキットとして不可欠な部分であり、必要に応じて適切に使われてきた。」
となっています。
A 7月21日・22日の会合ではこの新戦略をベースに議論が行われています。まだまだ利上げに着手できるには時間かかる内容になっています。
(議事要旨)
(金融政策の検討事項と政策オプション)
要約すると、レーン氏は新しい金融政策を実施する上で、主要なECB金利に関し、委員会のフォワードガイダンスを更新することが重要であると指摘した。効果的なインフレ下限制約とインフレ2%目標に関連した中期インフレ見通しの不足についての考察には、持続的な金融緩和を維持する約束が不可欠である。
新戦略には、金利に関するECBのフォワードガイダンスに反映されるべき2つの主要な革新が組み入れられている。第1は、ECBの物価安定目標である中期的な2%インフレの再定義、第2に、構造的に低い名目金利の環境下で金融政策を実施する際に、事実上の下限を考慮に入れるための条件付き約束である。
現在の状況下では、フォワードガイダンスは、インフレ目標を達成するという約束を補強している。そのインフレ目標について、委員会はインフレが耐久性に基づき2%に達するという高度な確信を予見できるほど十分に強固な証拠があった場合のみ、政策金利を引き上げることを明確にしている。実際には、この提案された新たなフォワードガイダンスには2つの明確な目的をもっている。第1は、新しい目標に向け強固なインフレへの収束を具体的に運用すること。第2に、名目金利が暫くの間その下限近くにあり、インフレ見通しがまだ大きく目標以下であるという現状の様な状況下において、ECBの政策反応に対し、明確に持続していく必要性が反映される。
再調整されたフォワードガイダンスには、金利が引き上げられる前に満たされるべき3つの重要な条件が含まれている。第1は、インフレが予想される期間最後の直前で目標が達成させることで、利上げ決定が強固な根拠に基づくものであると確信することであり、長期的に予想される過誤のあるボラティリティに晒されないものである。第2に、委員会はインフレ目標が永続的に達成されることを確信すべきである。第3に、委員会は、現下の基調インフレが2%に向けて満足のいく進展を遂げたと判断されない限り、利上げを検討すべきでないということ。これは、現下のインフレが一時的に上昇するかもしれない、だが急速に薄れていくかもしれないコストプッシュインフレショックの局面で引き締めすることに対する安全弁である。
(以下略)
経済見通しの査定に目を向けると、ユーロ圏経済の回復は勢いを得ている。デルタ変異株が懸念の源泉になっている一方で、ここ数週間に亘るワクチンキャンペーンの進展が、ほとんどの欧州圏で、封じ込め規制の撃退を許している。経済見通しの改善が、経済全ての部門に対し、将来の活動やセンチメントを示すデータに表れており、経済活動の実現を示す指標にも表れ始めている。製造業PMI指数は6月に新高値を更新し、小売売上高は5月に著しく改善した。そして貿易は勢いを増している。しかしながら、デルタ変異株の感染拡大は、とりわけ観光や接客部門の回復を削いでいる。更に、供給制約により、幾つかの部門で生産抑制が続いている。世界的な供給チェーン混乱の拡大は、例えば、配送時間の長期化やコンピューター・チップ不足を招いている。これにより5月にユーロ圏3大経済国の鉱工業生産の減少に繋がった。
先行き見通しに対するリスクは、幅広くバランスが取れている状況のままである。下方リスクは、主により強力なウイルス変異株の拡大による新たなパンデミックの感染やより持続的な供給ボトルネックの可能性に起因するものである。入手した強い先行指標や予想より早い貯蓄低下の可能性により、見通しに幾つかの上振れリスクを示している。
(以下略)
(以上)
(注)本文はあくまで英文の一部を訳したものですので、和訳はあくまで便宜的なものとしてご利用頂き、適宜、英語の原文をご参照して頂きます様お願いします。(出所:ECB HP)
下図はユーロドルの週足チャートです。7月初にラインA(=1.2050)のサポートを切ってからユーロは一段と弱くなりました。年始高値のB(=1.2220)から平行の下したC(=1.1610)でユーロ安トレンドラインを形成しており、既に8ヶ月経過しています。このCに昨年9月・11月のダブルボトムだったDが丁度同じ水準になっています。このCとDはかなり強いサポートとなっています。
目先はここ10週間で、ラインE(=1.1860)と平行のラインF(=1.1660)で狭いユーロ安トレンドを形成しています。このままユーロが下がり、Fのトレンドに沿って、CとDまで行くのか、あるいはEを越えるのかが当面の焦点になります。
今日はジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演が予定されており、この結果次第で動くことが予想されています。市場はテーパリング時期の示唆を期待している様ですが、ハト派の議長がその内容を出す可能性は低いと思われます。仮に言及したとしても、雇用情勢の一層の拡大といった条件付きに留まりそうです。
(8月27日11:30、1ユーロ=1.1755ドル)
オーダー/ポジション状況
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