ドル円、FOMC議事録公開から下落するも持ち直す
〇ドル円、FOMC議事録を控え米長期債利回り上昇で戻り高値切り上げ110円台に到達
〇議事録に特段のサプライズ無く公開後はドル安円高反応で109.70台まで下落
〇量的緩和の縮小について大半の参加者が年内開始、複数は数か月内の開始を支持
〇NYダウは前日比382.59ドル安、17日に同282.12ドル安と反落したところからの続落
〇110円超えから続伸で8/11高値110.79を超えれば逆三尊構成で上昇勢いづく可能性も
〇109.70以上での推移中は上向き、110.06超えからは110.25から110.50を目指す
〇109.50割れからは下落期入りとして8/16夜安値109.10試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は8月16日夜安値109.10円からの切り返しを継続して8月19日未明に110.06円まで高値を切り上げたが、3時のFOMC議事録公開後に109.70円台まで下落した。
8月4日夜の米7月ISMサービス業景況指数の上昇と8月6日夜の米7月雇用統計の予想を超える改善を背景に米長期債利回り上昇と共にドル円は8月4日夜安値108.71円から8月11日夕高値110.79円まで上昇してきたが、8月11日の米7月コアCPIの伸び率鈍化から下落に転じ、13日夜のミシガン大消費者信頼感指数の悪化、16日夜のNY連銀製造業景況指数の悪化から続落して16日夜には109.10円まで下げた。8月4日夜安値割れを回避して持ち直し、FOMC議事録を控えて米長期債利回りが再び上昇したことでドル円も戻り高値を切り上げて110円台にいったん到達したのだが、FOMC議事録には特段のサプライズは無かったとして公開後はドル安円高反応となった。
米商務省による7月の住宅着工件数(季節調整済、年換算)は前月比7.0%減の153万4000戸となり市場予想の160万戸及び6月の165万戸を下回った。先行指標の着工許可件数は前月比2.6%増の163万5000戸となり市場予想の161万戸及び6月の159.4万戸を上回った。FOMC議事録公開を控えていたことと強弱まちまちだったために市場の反応は限定的だった。
【米FOMC議事録、早ければ10月にもテーパリング開始】
米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.26%。FOMC議事録公開前に上昇して1.30%台を付けていたが公開後は失速した。2年債利回りは横ばいの0.22%で議事録公開前に0.23%台へ上昇していたが公開後は下げた。10年債及び2年債利回りとも8月4日から8月11日へ上昇したところから失速し、2年債利回りは16日からやや上昇気味、10年債利回りは17日に1.21%台へ低下した後は下げ渋りの様相で落ち着いた動き。
一方でNYダウ工業株は前日比382.59ドル安と下落、17日に同282.12ドル安と反落したところからの続落となった。8月16日に5連騰で史上最高値を更新した後の調整安だが、米連銀の量的緩和縮小開始が速まる可能性への懸念もあるようだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は8月19日未明に7月27-28日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公開した。議事録では量的緩和の縮小について大半の参加者が年内開始が適切の公算が大きいとし、複数は数か月内の開始を支持していた。また来年初めに開始することが妥当との参加者もいた。パウエル米連銀議長はこれまで量的緩和を急がない姿勢を示してきたが、8月に入ってからは複数の米連銀高官が量的緩和縮小を急ぐ姿勢を示し、7月分と8月分の雇用統計で就業者数が80万〜100万人規模の増加なら10月から開始可能(ウォラー理事)との具体的な条件も示されてきた。
今回の議事録では「想定より大きなサプライチェーン障害と原材料の値上がりによりインフレの上ブレが来年も続く可能性がある」として物価上昇継続への警戒感を示していた。パウエル議長が再三述べてきた物価上昇は一時的で年後半には落ち着くとの見方は継続していると思われるが米連銀の想定を超えるインフレ加速への懸念もかなりある印象だ。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は18日に「米連銀がインフレの強さを見誤って金融引き締めを遅らせた場合は将来的に急激かつ非常に壊滅的な政策変更を強いられる恐れがある」と述べている。市場の受け止め方よりも物価上昇への警戒感が大きいことを印象付けている。
米連銀は現在米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を月1200億ドルのペースで買い入れて市場に資金供給を行っている。パンデミック対策によるものだが一部は過剰流動性として投機マネーとなり株高を助長してきたが継続によりバブルとその崩壊を招く可能性もある。8月26-28日の米カンザスシティー連銀主催のジャクソンホールシンポジウムでのパウエル議長の金融政策スタンス及び量的緩和縮小開始への温度差が注目される。
【逆三尊の目】
ドル円の日足チャートでは8月4日安値108.71円を挟んで7月19日安値109.05円と8月16日安値109.10円が左右対称的な位置にある。またこの間の高値は7月23日の110.58円と8月11日高値110.79円でこれも対となっている。
底割れを回避して110円超えから続伸に入り8月11日高値を超えれば、8月4日安値を頭、7月19日と8月16日の安値を両肩として逆三尊構成となり上昇基調が勢い付く可能性がある。しかし8月11日高値更新へ進めずに8月16日安値を割り込む場合は逆三尊の目もつぶれて8月4日安値試しへ向かい、底割れの場合は7月2日高値からの下落も二段下げ型へと発展してゆく。8月後半の展開でいずれへ進むのかにより秋の相場展開も決まってくるのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月11日夕高値110.79円を起点とした下落が8月16日夜安値で一巡して強気サイクルに入ってきた。既に2連騰の上昇のため反落警戒期にあるので、109.50円以上を維持するうちは19日午後から20日にかけての上昇余地ありとみるが、109.50円割れからは弱気サイクル入りとして19日夜から23日夜にかけての下落が想定される。
60分足の一目均衡表では17日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込んでいたが18日夜の続伸で先行スパンも突破してきた。その後も両スパン揃って好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は19日未明への上昇で70ポイント台に到達してからいったん50ポイント台へ低下した。その後は戻しているが相場が19日未明高値に並ぶか高値を更新するところで指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行発生としてその後の反落警戒とし、50ポイント割れからは下げ再開に入るとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.70円を下値支持線、18日未明高値110.06円を上値抵抗線とする。
(2)109.70円以上での推移中は上向きとし、110.06円超えからは110.25円から110.50円を目指すとみる。110.06円近辺、110.40円以上は反落警戒とするが、110円台を維持しての推移なら20日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.70円割れからは下向きとし、109.50円割れからは下落期入りとして8月16日夜安値109.10円試しへ向かうとみる。109円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるが109.50円以下での推移なら20日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/19(木)
休場 インド(イスラム教新年)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 2.91万人、予想 -4.62万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 4.9%、予想 5.0%)
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調済 (5月 117億ユーロ)
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調前 (5月 43億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.5万件、予想 36.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 286.6万人、予想 280.0万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 21.9、予想 23.0)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.8%)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動30年債入札
8/20(金)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -7、予想 -7)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数 前年同月比 (6月 0.2%、予想 -0.4%)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (6月 0.2%、予想 -0.4%)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (6月 -0.2%、予想 -0.8%)
15:00 (独) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 1.3%、予想 0.8%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.5%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 9.7%、予想 5.8%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 7.4%、予想 5.8%)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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