ユーロ 緩やかな下降トレンドを継続
〇先週のユーロ、1.1752-1830レンジ、1.17台後半中心の動き
〇月曜はNYダウ大幅安でドル売りユーロ買い、その後ECB理事会を前に上値が重たい展開
〇ECB理事会直後ユーロ売りから急速な買い戻し、その後に改めて売りと荒っぽい上下となる
〇ECB理事会、予想通り緩和政策の長期的継続を示す、政策転換の動きは来年以降となるか
〇緩やかなユーロ安トレンドを継続、3月につけた年初来安値1.1703レベルを視野に入れつつある
〇今週は1.1710レベルをサポートに1.1810レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、月曜にダウがNY市場で大幅安となった際にはドル売りの動きからユーロ買いの動きとなりましたが、それを除くと木曜のECB理事会を前にして長期的な緩和政策コミットの思惑から上値が重たい展開を続けました。
ECB理事会では予想通りにフォワードガイダンスを変更、インフレ目標をこれまでの2%未満からシンメトリックな2%(2%を中心に上下対称な水準)としたことで、一時的な上振れを容認しました。また理事会後のラガルドECB総裁会見において、緊急購入プログラム終了は絶対的に時期尚早とテーパリングは全く考えていないこと、政策金利はインフレ率が持続的に2%に達すると確信できる場合にのみ引き上げと、緩和政策を長期的に継続することを強く示したと言えます。
直後のユーロ売りから急速な買い戻し、その後に改めて売りと荒っぽい上下となりましたが、基本的には同日NY後場以降のユーロの上値の重たい動きから考えて、ECBの金融政策変更は間違いなくFRBよりも後になり、次は今週のFOMCを見ようという動きになってきたと考えられます。しかしFOMCもパウエルFRB議長の議会証言から考えると少なくとも今回のFOMCはまだ経済情勢を見極める段階にあり、動きが出てくるとしても次回9月のFOMC以降となります。
ECBにしてもFRBにしても、一部タカ派のメンバーからは政策転換が遅れるリスクも指摘されていますが、動きが出てくるのは米国が年内第4四半期、ECBは来年以降でまだその時期には到底なっていないというのがECBからのメッセージと見て間違いありません。金曜には欧州主要国の4〜6月期GDP速報値が出ますが、仮に良い数字だとしても一時的な反応に留まると見られます。
なお、ラガルド総裁の会見では現在のデルタ株感染拡大は想定範囲内という見方を示し、経済活動に与える影響はあるものの、第2四半期に回復し、規制が緩和されたことで第3四半期には力強い成長を見込むとしましたが、これは欧州に限らず世界の主要国においてほぼ共通の見通しと言えます。あとは地域によって数か月レベルでの差が出てくる程度の話です。
短期的には大きく影響を与える材料もありませんのでテクニカルに移ります。いつもの日足チャートをご覧ください。
先週示した2つの平行下降チャンネルのうち幅の狭い方を残して表示してありますが、現在は、この平行下降チャンネル(ピンク)の中で緩やかなユーロ安トレンドを継続していると見られます。また逆N波動のターゲット61.8%エクスパンション1.1745をターゲットとしましたが、この水準についてはほぼ達成したと言ってよいでしょう。
先週の動きを見ていると引き続き、同ターゲットはサポートとなりやすい水準ですが、下降トレンドが継続していく中で最終的なターゲットとしては3月につけた年初来安値1.1703レベルを視野に入れつつあります。そうは言っても最近は値幅も限られていますので、今週は7月安値をやや更新しつつ、上値も切り下げてくる展開を考え、1.1710レベルをサポートに1.1810レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートです。
先週のユーロ円は株高の影響も大きく20日安値128.59レベルから反発していますが、大きくは6月の年初来高値以降は高値を切り下げる動きが続いています。先週の高値は6月下旬の高値と7月安値との38.2%戻し130.15(赤のターゲット)の水準で止められていますが、6月中旬からのレジスタンスライン(青)が、この38.2%戻しと半値戻し130.63(赤のターゲット)の間を今週は下げています。
このレジスタンスラインまで上がるとは限りませんが、現行水準から上がるようであればいったん売り場となる可能性が高いように思えます。ユーロドルの緩やかな下げと合わせて考えると、ドル円も横ばいもしくは下げる方向に変化を生じやすくなってくるというところでしょうか。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
7月26日(月)
17:00 ドイツ7月企業景況感
7月27日(火)
(特になし)
7月28日(水)
15:00 ドイツ8月消費者信頼感
15:00 英国7月住宅価格
15:45 フランス7月消費者信頼感
27:00 FOMC結果発表
7月29日(木)
15:45 フランス6月PPI
16:55 ドイツ7月失業率
18:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
21:00 ドイツ7月CPI速報値
7月30日(金)
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
14:30 フランス6月消費支出
15:45 フランス7月CPI速報値
17:00 ドイツ4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値
18:00 ユーロ圏6月失業率
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
週後半が連休となりましたので、ユーロ週報も今週はイレギュラーな書式です。
7月19日(月)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場ではユーロ円での円買いに引っ張られてのユーロ売りとなりました。欧州株が弱かったこともユーロの上値を抑えましたが、NY市場では米株の下げが大きかったことから一転ドル全面安の動きとなり、1.1825レベルまで反発後に若干押して引けました。
7月20日(火)
ユーロドルはドル買い戻しの動きからユーロの上値が重たい地合いが続いていましたが、NY市場では1.1756レベルまで水準を下げ前日の安値を下回る動きを見せました。引けにかけてはやや買い戻されたものの、木曜のECB理事会を前に積極的な取引は手控えられていました。
7月21日(水)〜7月23日(金)
ユーロドルは、木曜のECB理事会で緩和スタンスが再確認されるとの思惑から水曜欧州市場序盤までユーロ売りが続き1.1752レベルの安値をつけました。その水準を安値にECB理事会まではイベント前の買い戻しが目立ち、1.1800間近の水準でのイベント待ち。
ECB理事会では予想通りフォワードガイダンスを変更し政策点検の内容を踏襲、物価の一時的な上振れを容認し、大規模緩和の継続を約束しました。初動はユーロ売りだったものの直後には週間高値となる1.1830レベルへと上伸、さらに1.1757レベルへと反落と荒っぽい動きとなりました。要因は仕掛けとポジション調整と見られますが、金曜にはもみあいながらも上値の重たい展開となり、緩和継続によるユーロ安という見方に落ち着いた動きとなりました。
ディスクレーマー
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