短期安値も見て110円台後半を試しやすい流れ
〇先週のドル円、株安・円高のリスクオフの動きで始まり一時109.07レベルまで水準を切り下げ
〇その後は週末に向けリスクオフの巻き返しで110.59レベルまで買い戻される
〇米国債へとシフトしていた資金の動きが株へと戻る動きで、株高・債券安=利回り上昇に
〇今週注目のFOMC、現在の緩和政策を継続し次回9月のFOMCまで経済指標をチェックしていく段階
〇4〜6月期GDPかなり強ければ8月最終週のジャクソンホールでテーパリングに触れる可能性も
〇今週は109.80レベルをサポートに110.80レベルをレジスタンスとする一週間
今週の週間見通し
先週のドル円は前週金曜NY市場の流れを受けて株安・円高のリスクオフの動きから始まりました。ダウ先物は東京市場からNY市場まで下げ続け一日の下げ幅が1000ドル近くになったことからドル円も一時109.07レベルまで水準を切り下げました。しかし、株安によるリスクオフの動きは週初のみで終わり、その後は週末に向けてリスクオフの巻き返しが強まり、米国の3主要株価指数は揃って史上最高値を更新。ドル円も110.59レベルまで買い戻され7月14日以来の高値圏での引けとなりました。
ドル円は株高の影響が大きかったと思いますが、先週のコラムでも取り上げたように最近は再び米国10年債利回りとの相関が高くなっています。米国10年債利回りは7月20日に2月11日以来の1.12%台まで低下していましたが、それ以降は週末まで金利上昇の動きとなりました。それまでの株から米国債へとシフトしていた資金の動きが、株へと戻る動き(株高・債券安=利回り上昇)と考えられます。
このあたりの動きは以下のチャートで確認してください。
モノクロのローソク足が10年債利回り、カラーのローソク足がNYダウ(現物)、サブチャートに10年債利回りとドル円の20日間の相関係数を示してあります。相関係数は最近では0.8レベルへと上がっています。
今週は経済指標も多いのですが、注目材料は28日のFOMCと29日の米国4〜6月期GDP速報値です。FOMCではタカ派寄りの意見も出る可能性はあるものの、パウエルFRB議長と多数派は現在の緩和政策を継続し、引き続き次回9月のFOMCまで経済指標をチェックしていく段階であると考えられます。このあたりは先の議会証言でパウエル議長が発言した通りでしょう。
また議会証言ではテーパリング開始前に知らせるとも発言していますので、今週のFOMCでテーパリングの決定ということも無いはずです。これまで出て来ている経済指標はCPIを中心に強い数字が目立ってきていますので、4〜6月期GDPもかなり強いということになると、8月最終週のジャクソンホールで9月以降のテーパリングに触れる可能性も出てきます。FRBの路線は一貫していながらも、市場参加者の思惑は強弱に振れるというこれまでのパターンを今回も見る可能性はありますので、注意だけはしておきましょう。
次にテクニカルですが、いつもの日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
4月安値を起点とした平行チャンネル(ピンク)を下抜け、7月高値からの平行チャンネル(青)を上抜けというのが、現時点の状態です。7月安値が4月安値と7月高値の61.8%押しとなる109.06と一致を見たことから、現在は7月安値を起点とした上昇トレンドにあることは間違いありませんが、まだ明確なトレンドラインを引ける段階ではありません。短期の急角度な上昇チャンネルを想定することも可能ですが、今は保留しておきます。
この上昇トレンドのターゲットとしては7月高値と7月安値の戻しを考えることとなりますが、61.8%戻しが110.66となっていて7月14日高値の110.70レベルと重なりますので、まずはこのターゲットを目指し、7月14日高値を抜けた場合には78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる111.09が次のターゲットとなりますが、7月7日高値の110.82レベルがいったん引っかかりやすい水準になりそうです。
いっぽうで下値は110円の大台割れでは買いも出やすくなってきていると見られますので、今週は109.80レベルをサポートに110.80レベルをレジスタンスとする一週間を考えておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
7月26日(月)
07:45 NZ6月貿易収支
17:00 ドイツ7月企業景況感
23:00 米国6月新築住宅販売
7月27日(火)
16:30 黒田日銀総裁講演
21:30 米国6月耐久財受注
22:00 米国5月住宅価格
22:00 米国5月ケースシラー住宅価格
23:00 米国7月消費者信頼感
23:00 米国7月リッチモンド連銀製造業景況指数
**:** FOMC(〜28日)
7月28日(水)
08:50 日銀会合主な意見公表
10:30 豪州4〜6月期CPI
15:00 ドイツ8月消費者信頼感
15:00 英国7月住宅価格
15:45 フランス7月消費者信頼感
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果発表
27:30 パウエルFRB議長会見
7月29日(木)
10:00 NZ7月企業信頼感
15:45 フランス6月PPI
16:55 ドイツ7月失業率
18:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
18:30 南ア6月PPI
21:00 ドイツ7月CPI速報値
21:30 米国4〜6月期GDP速報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国6月住宅販売保留件数
7月30日(金)
07:45 NZ6月住宅建設許可件数
08:30 本邦6月失業率・有効求人倍率
10:30 豪州4〜6月期PPI
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
14:30 フランス6月消費支出
15:45 フランス7月CPI速報値
16:00 トルコ6月貿易収支
17:00 ドイツ4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値
18:00 ユーロ圏6月失業率
21:00 南ア6月貿易収支
21:30 米国6月個人所得・消費支出
21:30 米国4〜6月期雇用コスト
22:45 米国7月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
週後半が連休となりましたので、今週はイレギュラーな書式となっています。
7月19日(月)
前週末の株安の影響が残り東京市場のドル円はややドル売りが先行後は買いも出てくる流れでした。欧州市場に入りダウ先に改めて売りが入るとドル円、ユーロ円に売りが広がり、NY市場では米国株が大幅安となる中、リスクオフから米国債に買いが入り、長期金利が低下。ドル円はNY前場に109.06レベルまで売り込まれた後、株価が小幅反発したこともあって109円台半ばに戻して引けました。
7月20日(火)
ドル円は週初の下げが大きく短期筋のドル売りポジションも膨らむ中で安値が4月安値と7月高値の61.8%押しとなる109.06でピッタリ止められたことも買い戻しを強めることとなりました。NY市場までは109円台半ばを中心に拡散パターンのもみあいでしたが、NY市場ではダウが反発し月曜に下げる前の水準に戻したこともあって109.96レベルまで高値を切り上げ高値圏での引けとなりました。
7月21日(水)〜7月23日(金)
ドル円は月曜安値からの買い戻しがその後も続き、週後半は水曜東京市場の109円台後半の水準を安値にじり高、金曜NY市場には110.59レベルの週間高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。背景としては米国株式市場が堅調で主要株価指数は軒並み史上最高値を更新、そうした中で日経先物もじり高となりリスクオンによる円安の動きになった流れでした。
ディスクレーマー
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