109円割れ回避でいったん戻り試したが、高値切り下げ基調の範囲
〇ドル円、20日深夜にNYダウと米長期債利回りの反騰を見て109.95へ上昇し110円乗せに迫る
〇20日のNYダウは大幅下落に対する売られすぎ警戒感から買戻し優勢で前日比549.95ドル高に
〇米10年債利回りは前日比0.4%上昇の1.23%だったが一時1.12%台まで大幅低下した
〇米6月住宅着工件数は前月比6.3%増と市場予想を上回り着工許可件数は同5.1%減と予想を下回る
〇その後は株高債券安で長期債利回りが持ち直す動きに
〇109.60以上で推移中は上昇余地あり、110円超えから110.34試しとみる
〇109.32を割り込む場合は下げ再開と仮定し109.05試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は7月19日夜に109.05円まで一段安したところから下げ渋りに入り、20日の日中から夜にかけては109.50円を挟んだ揉み合いが観測、深夜にかけてNYダウの反騰と米長期債利回りの反騰を見て109.95円へ上昇、110円乗せに迫った。21日の午前序盤も110円を若干下回る水準で確りしている。
7月19日夜のドル円急落はNYダウが一時900ドルを超える大幅下落となったことでリスク回避的な円の買い戻しが集中したこと、安全資産として米国債が買われて米長期債利回りが一段と低下したことによる日米金利差縮小からのドル売りによるものだったが、20日午前にダウ先物が反騰し始めたことでドル円の急落商状も落ち着き、20日夜にNYダウが大幅上昇したことで19日夜とは真逆の展開となった。
【NYダウ大幅下落一服、米長期債利回り低下にもブレーキ】
7月20日のNYダウは前日までの大幅下落に対する売られ過ぎ警戒感から買い戻し優勢となり、一時は600ドルを超える上昇で前日比549.95ドル高となった。直前2日間で1000ドルを超える下げ幅だったことを踏まえると19日の日足大陰線と刺し違える陽線ではあるが、下げ幅の半値から3分の2を戻したところにとどまっている。NYダウは昨年3月底からの歴史的大上昇において昨年6月や9月と10月、今年1月末に大きな調整安を入れてはそこを押し目形成として一段高を繰り返してきた。直近では5月10日の史上最高値35091.56ドルから6月18日安値33271.93ドルまで1820ドル安の下落が入ったところから切り返して7月16日高値35090.01ドルまで戻して5月10日高値に迫っている。
今回の下落も6月18日安値を割り込まない程度にとどまれば底上げパターンを維持して次の一段高を伺う展開へ進みうるところだが、6月18日安値を割り込むと5月10日と7月16日の両高値をダブル天井とした下落期に入り、底上げパターン=上昇トレンドが崩れたとして下げも大きくなる可能性がある。変異株の感染拡大や社会生活及び経済活動への規制強化の動きや、パンデミックからの急激な景気回復が一服してきていることでこのまま爆発的な好景気と株高が続かないかもしれないという不安心理もあるところだ。
7月20日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.23%となったが、一時は1.12%台まで大幅低下した。終盤の戻りがドル円の反騰のきっかけとなっているものの、一段と低下したところからリバウンドを入れては一段安を繰り返してきたため、今回の戻りも継続性があるのかどうか試されるところだ。
米商務省が発表した6月の住宅着工件数(年換算)は前月比6.3%増の164万3000戸となり市場予想の159万戸を上回ったが、先行指標である住宅着工許可件数は前月比5.1%減の159万8000戸にとどまり市場予想の170万戸を下回った。着工許可件数が予想を下回ったことで発表後には米連銀の量的緩和縮小も急がれないだろうと株高に寄与、株高債券安で長期債利回りが持ち直すという動きがみられた。
【ドル指数の上昇続く】
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は7月20日に93.17ポイントへ上昇、5月25日以降の高値を更新した。19日及び20日は日足の陽線が上ヒゲを付けて高値を切り上げたところからは下げる展開が繰り返されているが、終値ベースは着実に切り上げられている。1月6日と5月25日の両安値がダブル底となっての上昇であり、3月31日高値93.44ポイントへ迫る勢いだが、ドル指数と逆相関で動くユーロドルは1月6日高値を5月25日高値では越えられずにダブルトップを形成してその後の安値を更新、3月31日安値1.1702ドルに迫ってきている。
ポンドドルも7月15日から20日まで4日連続の陰線で下落して6月1日以降の安値を更新している。豪ドル米ドルも4日続落で2月25日高値からの下落基調を継続しており4月1日安値を割り込んで5月10日の戻り高値からは二段目に下げに入っている。
OPECプラスの協調減産協議の延期や中止、突然の合意到達報道に振り回されてきた原油相場も大幅下落しているが、昨年3月ないし4月底からNYダウを先導役としてアフターコロナの復興期待を背景に大上昇してきたユーロ、ポンド、豪ドル等資源通貨、原油等国際商品が早いもので2月にピークアウト、長引いたものの7月にピークアウトし始めて上昇一巡感を見せている。米長期債利回りも10年債や30年債が3月でピークアウトして低下に転じている事を踏まえれば、本来ならドル安となってもよいところ、米長期債利回り低下に合わせて主要国の長期債利回りも低下していることでドル安要因にならず、歴史的大上昇も1年以上を経過したことで行き詰まり、変異株による感染再拡大、世界規模では第三波への懸念も無視できなくなってきていることで株高への過度の期待が後退、投機通貨における手仕舞い売りを助長している印象だ。
ドルストレートにおけるドル高がドル円にとっては下支え要因ではあるが、一方で米長期債利回りが低下していること、投機通貨安の背景に感染拡大への懸念等のリスク回避的な動きも見られることでドル円はクロス円全般の下落感と共に日米金利差面から売られやすい状況に陥ってきていると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月19日深夜安値でやや短めのサイクルボトムを付けて反騰入りしている。高値形成期は21日の日中から23日夜にかけての間と想定されるが、7月14日から7月16日夜へと高値ラインが切り下がっているので16日夜高値110.34円を超えないうちは戻り一巡からの下げ再開を警戒し、109.50円割れからは下げ再開に入る可能性を優先する。
60分足の一目均衡表では20日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は20日夜の反騰で60ポイント台へ到達、その後も50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開とみて30ポイント前後を目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月20日夜安値109.32円を下値支持線、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)109.60円以上での推移中は上昇余地ありとし、110円超えからは7月16日夜高値110.34円試しとみる。16日夜高値手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、110.34円を超える場合は戻り高値切り下がりパターンからの脱却となるので7月14日午前高値110.69円試しへ上値目途を引き上げる。また110.60円以上での推移なら22日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)20日夜安値を割り込む場合は下げ再開と仮定して19日夜安値109.05円試しへ向かうとみる。109円台序盤はいったん買われやすいとみるが、底割れへ進む場合は108.50円台、さらに先行きは108円台序盤を目指す流れへ進むとみる。また20日夜安値を割り込んだ後に109.50円以下での推移なら22日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/21(水)
休場、トルコ、インド
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 -0.5%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20年債入札
7/22(木)
休場、トルコ、日本
未 定 (南) 南ア中銀 政策金利 (現行 3.50%、予想 3.50%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB) 政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 36.0万件、予想 35.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 324.1万人、予想 305.0万人)
23:00 (米) 6月 景気先行指数 前月比 (5月 1.3%、予想 0.9%)
23:00 (欧) 7月 消費者信頼感・速報値 (6月 -3.3、予想 -2.5)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (5月 580万件、予想 590万件)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数 前月比 (5月 -0.9%、予想 1.7%)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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