ドル円見通し 米連銀議長の議会証言から急落、下げ三法型(21/7/15)

ドル円は、14日に米長期債利回りが低下に転じたことで深夜に110円を割り込み15日早朝には109.92円まで下げた。

ドル円見通し 米連銀議長の議会証言から急落、下げ三法型(21/7/15)

米連銀議長の議会証言から急落、下げ三法型

〇昨日のドル円、パウエル米連銀議長の議会証言で急落、深夜に110円を割り込む
〇14日の議会証言でパウエル議長は量的緩和縮小開始を急がない姿勢を強調
〇米10年債利回りは前日比0.07%低下の1.35%、30年債は0.08%低下、2年債も0.02%低下
〇NYダウは前日比44.44ドル高、ナスダック総合指数は32.70ポイント安とまちまち
〇米6月生産者物価指数上昇率は前月比1.0%、7月以降も物価上昇が続く可能性あり
〇110.20以下で推移中は下向きとして7/8夜安値109.52試しを想定
〇110.30を超えた後も110.10以上での推移なら16日も高値試しへ向かう可能性も

【概況】

ドル円は7月13日夜の米6月消費者物価上昇率が予想を上回る上ブレとなり米長期債利回りが大幅上昇したことで14日午前には110.69円まで戻していたが、14日夜は米生産者物価上昇率が予想を超える上ブレを示したもののパウエル米連銀議長が下院議会証言で量的緩和縮小開始を急がない姿勢を強調したために米長期債利回りが低下に転じたことで深夜に110円を割り込み15日早朝には109.92円まで下げた。
米長期債利回り動向を見ながらの展開が続いており、7月2日夜の米雇用統計が冴えなかったことで米長期債利回りが低下した局面で7月8日夜安値109.52円まで下げ、9日からは長期債利回りがリバウンドに入ったことでドル円も戻していた。14日夜は米生産者物価上昇率の発表とパウエル米連銀議長の議会証言テキストの公表が重なる中で長期債利回りは米連銀議長発言への反応を優先して低下、ドル円も下げるという図式だった。

【物価上昇率の上ブレ続くが長期債利回りは低下】

7月14日の米長期債利回りは総じて低下。米10年債利回りは前日比0.07%低下の1.35%、30年債利回りは0.08%低下の1.97%、2年債利回りも0.02%低下の0.23%となった。
米10年債利回りは7月8日に1.25%まで下げて3月31日のピークで付けた1.77%以降の最低となっていたところから13日には1.42%までリバウンドしていた。これまでも6月11日から17日にかけてのリバウンド時のように一段安したところから戻してさらに一段安という流れを繰り返してきているが、今回も同様の戻りから下げ再開に入った印象だ。利上げ時期に敏感な2年債利回りも7月8日の0.19%から13日には一時0.267%まで戻していたところからの反落となっている。
NYダウは前日比44.44ドル高、ナスダック総合指数は32.70ポイント安とまちまちだったが、最高値圏での小動きで終了。

米労働省が発表した6月生産者物価指数(PPI)上昇率は前月比1.0%で市場予想の0.6%及び5月の0.8%を上回った。前年同月比は7.3%で市場予想の6.8%及び5月の6.6%を上回り過去最大となった。エネルギーと食料品を除いたコア指数の伸び率も前月比1.0%で予想の0.5%及び5月の0.7%を上回り、前年同月比も5.6%となり市場予想の5.1%及び5月の4.8%を上回って現在の統計方式を開始した2011年4月以来で最大となった。
昨年のパンデミック爆発期との比較になるために前年同月比は大きな伸びとなっているものの、前月比も上ブレしていることにより7月以降も物価上昇が続く可能性がある。そうした物価上昇の上ブレに対するリスクも踏まえて6月17日の米FOMCでは量的緩和縮小の議論を開始し、予想される利上げ時期を前倒ししたわけだが、その後の米連銀当局者の発言や米経済指標改善への過熱感がやや鈍化したこともあり、FOMCショックとして2年債利回りが急上昇した時のサプライズ心理は落ち着き、市場も過剰反応とならないように意識しているところだ。

米連銀のパウエル議長は14日に米下院金融サービス委員会で半期毎の証言を行ったが、「インフレ率については一時的に押し上げられている」「数か月は高止まりする公算が大きい」と述べたが、「今年の成長率が過去数十年で最も高くなる」としたものの「雇用の完全回復には長い道のりになる」とした。インフレ率の上ブレがリスクとなる場合は対処するとしたが、「雇用と物価の目標に到達するまで事実上のゼロ金利政策の維持が適切」「量的緩和策の縮小の条件とする目標へ一段と大きな前進をするまでは依然として遠い」として量的緩和縮小開始を急がない姿勢を強調した。

【下げ三法型の下落】

ドル円は7月2日高値111.65円から7月8日安値109.52円まで2円を超える下げとなり4月23日以降では最大の下落規模となった。7月8日の日足大陰線に対して7月8日から13日までは3日連続の陽線で戻してきたのだが、8日の大陰線レンジを超えられずに14日に再び大陰線での下落となった。
7月8日安値を割り込んでいないためにまだ未完成ではあるが、大陰線を超えられない範囲での3連騰から再び大陰線で下落する様はいわゆる「下げ三法」に近い下落再開暗示の様相と思われる。
7月8日安値を割り込む場合、7月2日からの下落が二段下げ型となり、下落規模も3月31日高値から4月23日安値まで3.50円の下落幅となった時に近い展開となるか、あるいはそれ以上の下落規模となる可能性も出てくると注意する。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月8日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰期に入ったとして高値形成期を12日から14日夜にかけての間と想定した。14日夜に急落したため、14日午前高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。安値形成期は13日夜から15日深夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、13日夜安値を直近のサイクルボトムとして底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性もあり、その場合は16日夜から20日夜にかけての間へ安値形成期が延びることも考えられる。このため110.30円を超えるような反騰へ進めないうちは一段安警戒とみる。

60分足の一目均衡表では14日夜の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は14日夜の下落で20ポイント台へ低下した。その後も低水準にとどまっているので40ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、40ポイント超えからは強気転換注意として50ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月8日夜安値109.52円を下値支持線、110.30円を上値抵抗線とする。
(2)110.20円以下での推移中は下向きとして8日夜安値試しを想定する。109.90円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、110円以下での推移なら16日も安値試しへ向かいやすいとし、下げ足が速まる場合は109円台序盤(109.30円から109.00円)へ切り下げる可能性もあるとみる。
(3)110.30円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、110.30円超えからは110.50円前後への反発を想定する。また110.30円を超えた後も110.10円以上での推移なら16日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

7/15(木)
休場 トルコ(国家統一の日)、米独首脳会談(ワシントン)、日銀・金融政策決定会合(1日目)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 11.52万人、予想 2.00万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 5.1%、予想 5.0%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.6%、予想 1.2%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 18.3%、予想 8.1%)
11:00 (中) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 12.4%、予想 11.0%)
11:00 (中) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 8.8%、予想 7.8%)
13:30 (日) 5月 第三次産業活動指数 前月比 (4月 -0.7%、予想 -0.9%)

15:00 (英) 6月 失業保険申請件数 (5月 -9.26万件)
15:00 (英) 6月 失業率 (5月 6.2%)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 4.7%、予想 4.7%)
21:30 (米) 7月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (6月 17.4、予想 18.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.3万件、予想 36.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 333.9万人、予想 331.3万人)
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.1%、予想 1.2%)

21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 2.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 30.7、予想 28.0)
22:15 (米) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.8%、予想 0.6%)
22:15 (米) 6月 設備稼働率 (5月 75.2%、予想 75.6%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、半期議会証言(上院銀行委員会)
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、ロッキーマウンテン経済サミット参加

7/16(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
07:45 (NZ) 4-6月期 消費者物価 前期比 (1-3月 0.8%、予想 0.7%)
07:45 (NZ) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (1-3月 1.5%、予想 2.7%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 94億ユーロ、予想 80億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 109億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)

21:30 (米) 6月 小売売上高 前月比 (5月 -1.3%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.4%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合挨拶
23:00 (米) 5月 企業在庫 前月比 (4月 -0.2%、予想 0.4%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 85.5、予想 86.5)
29:00 (米) 5月 対米証券投資 (4月 1012億ドル)
29:00 (米) 5月 対米証券投資・短期債除く (4月 1007億ドル)

※ポイント要約は編集部

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