ユーロは緩やかな下降トレンド継続
〇先週のユーロ、週初はユーロが底堅い動き、火曜の東京市場で週間高値1.1895レベルをつける
〇その後EUと英国の対立にユーロは下落に転じ、資源国通貨売りも波及して1.1782レベルに下げる
〇木曜のECBによる政策点検結果発表を前に再度買い戻しが入り、週間を通しては行ってこいの展開に
〇ECBによる政策点検結果、インフレ目標を2%へ、発表後為替市場ではユーロ買い要因となる
〇今週ユーロ圏CPI・ドイツCPI発表、ユーロ圏とEUの財務相会合開催
〇今週は1.1790レベルをサポートに1.1900レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週初はドル円同様にドル売りの動きからユーロが底堅い動きとなり火曜の東京市場で週間高値となった1.1895レベルをつけました。しかし、欧州委員会がアイルランドに対する英国の態度を問題視というニュースが入り、これをきっかけにユーロは方向転換することとなりました。ニュースの内容としては欧州委員会のシェフコビッチ副委員長が、英国との信頼関係を再構築することがもっとも困難な課題とし、英国のEU離脱協定違反を英国が修復しなければ法的措置を強化すると発言したものです。
EUに属するアイルランド北部は北アイルランドとして英国に属していて、ブレグジットの協議においてもアイルランドとの経済的な国境問題が大きな障害となっていましたが、離脱後も北アイルランド議定書が守られていないことを問題視しています。しかし英国側も6月にEUに対してセーフガードの発動も辞さないと、結局のところ離脱後も離脱前の問題が続いている状況ですから、すぐには解決することも無さそうですから現状は状況を見守るということになります。短期的にはEUにとっても英国にとっても悪材料となりうるというところです。
水曜には資源国通貨売りの動きがユーロにも波及して週間安値の1.1782レベルを見ましたが、木曜のECBによる政策点検結果発表を前に買い戻しが入り、週を通してみると水曜を境にして前半の下げを、後半に戻す大きな行って来いの流れになったと言えます。ECBによる政策点検では、インフレ目標がこれまでの2%未満(だが近い)から2%へと明確な数値となり、一時的なオーバーシュートも認めるなど、米国のスタンスと似た内容となりました。2%超えも容認されることで早期のテーパリング思惑は後退したと同時に、欧州の長期債利回りは安心して上昇という動きにもなり、為替市場ではユーロ買い要因となりました。
今週は早速ユーロ圏のCPIが金曜に発表されますが、これは正式にはHICPと域内の各国の数値を加重平均している数値で単純な評価が難しいということがあります。2%超えもOKということで多少のブレがあっても動きは出にくいでしょうから、それよりも単一の国として発表される数字のうち特にドイツのCPIが火曜に発表されますので、個人的にはそちらに注目したいと思います。また政治的なイベントとしてはユーロ圏とEUの財務相会合が月・火曜に開催されますので、念の為チェックしておきたいと思います。
テクニカルにも見ていきましょう。いつもの日足チャートをご覧ください。
先週示した逆N波動のターゲットには先週の下げでも届かずでしたが、チャートの形状は青いラインで示した下降ウェッジ上のもみあいにも見えます。ただ本日時点で既にウェッジ上限にいることから、緑のラインで示したような下降チャンネルの中での動きを続けるのではないかと考えています。つまり週初に上昇するようであれば、上がったところは売りというイメージです。
ただ、テクニカルにこのシナリオはあまり補強材料も無いため、様子を見ながら先週高値の1.1895レベルを明確に抜けてくるようであれば、見直しということになります。ここでは若干の上抜け程度で下降トレンドに回帰しやすいというシナリオから今週は1.1790レベルをサポートに1.1900レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週もユーロ円の日足チャートです。
先週書いた通りですが、年初来高値を起点とした逆N波動から求めるフィボナッチ・エクスパンションのうち78.6%(61.8%の平方根)エクスパンション129.48と昨年10月安値と年初来高値の38.2%押しが129.44とが重なっている点に注意したいという水準は先週安値でかなり近づいたことで誤差の範囲内と見ることも出来るでしょう。
それ以上に年初来高値からの下げの中で着実に高値を切り下げる動きとなってきたこと、また6月安値と7月安値の2点が決まったことから、現在のユーロ円は青のラインで示した下降ウェッジの中での下げを継続しやすいと見ることが出来るでしょう。レジスタンスラインを明確に抜けるまでは上値の重たい流れが続きやすそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
7月12日(月)
18:00 デギンドスECB副総裁講演
**:** ユーロ圏財務相会合
7月13日(火)
08:01 英国6月小売売上高
15:00 ドイツ6月CPI
15:45 フランス6月CPI
**:** EU財務相会合
7月14日(水)
15:00 英国6月CPI
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産
25:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)
27:00 ベージュブック
7月15日(木)
15:00 英国6月失業率
22:30 パウエルFRB議長議会証言(上院)
**:** 米独首脳会談
7月16日(金)
18:00 ユーロ圏6月CPI
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月5日(月)
ユーロドルは欧州市場で全般的にドルが弱い動きとなったことから1.1888レベルまで買いが入りましたが、値幅は狭くほとんど動意が見られない状況が続きました。一日のレンジも37pipsに留まり、ユーロ円も33銭レンジと本格的なスタートは米国市場が再開する火曜からという流れで終わりました。
7月6日(火)
ユーロドルは東京市場ではドル安の流れから買いが強まり、前日高値を超えると対ドルだけでなくユーロ円でも買いが目立ち一時1.1895レベルの高値をつけました。しかし欧州市場に入り欧州委員会がアイルランドに対する英国の態度を問題視、英国との信頼関係構築を困難と発言したことからユーロは一転大幅安、NY昼過ぎには1.1807レベルの安値をつけ、引けにかけては若干戻しました。
7月7日(水)
ユーロドルはNY市場まで1.1820水準でまったく動きのない流れが続きました。NY市場前場には資源国通貨を中心としたドル買い(資源国通貨売り)が強まり、ユーロドルもその流れに引っ張られて1.1781レベルの安値をつけました。
7月8日(木)
ユーロドルは東京後場までは動きが見られませんでしたが、欧州市場に入ってからはドル売りの動きからユーロ買いが強まりました。ECBによる政策点検結果はインフレ目標を2%未満から2%とし、早期テーパリング思惑を後退させる目的は果たせましたが、フォワードガイダンスについては合意できず、次回理事会での再検討となりました。基本的に想定内の結果となりユーロはドル売り地合いを継続したままで引けました。
7月9日(金)
ユーロドルは欧州市場序盤まではドル買いによるユーロ売りが先行していましたが、株高によるユーロ円の買いと前日から上昇に転じていたドイツ10年債利回りの上昇がユーロ買いの材料となりました。ユーロドルはNY市場で前日高値を上抜け1.1881レベルまで上昇、ユーロ円も130.88レベルまで上昇し、それぞれ高値圏での引けとなりました。
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