ドル上値再トライあるか、FRB議長発言注視
〇先週のドル円、週間高値110.82まで値を上げた後失速、110.00-50での揉み合いに
〇円クロスでは円全面高、ユーロ、ポンド、スイスなど週間で最大3円を超える下落も
〇週後半の米指標が伸び悩み、過熱気味の早期テーパリング観測は週末にかけ一旦沈静化
〇パウエルFRB議長が22日に下院特別小委員会において議会証言を行う予定
〇今週は6月製造業PMI速報値や1-3月期GDP確報値などの米経済指標が発表予定
〇今週のドル/円予想レンジは、109.20-111.20
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが小高い。一時110.82円まで上昇し、年初来高値110.97円に迫るも週末にかけては伸び悩んだ。
前週末、英国でG7が開催され、終了後発表された声明では初めて「台湾海峡」についての言及がなされた。また、それとは別に米メディアのインタビューに応じたプーチン露大統領が「米露関係は近年で最低の状態にまで悪化した」と述べたとされ一部で話題に。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた109.60-65円を週間安値にドルが小じっかり。110円ならびに、過去2週間程度上値を抑制していた110.32円を超え、週間高値である110.82円まで一時値を上げた。しかし、その後は年初来高値110.97円を意識しつつも、ドル高の動きは急失速。110.00-50円での揉み合いをたどるなか、週末NYは110.20-25円で取引を終え、越週している。
なお、前記のようにドル/円はやや円安方向に振れたものの、それ以外、円クロスでは円全面高の展開。実際、ユーロ/円やポンド/円、スイス/円などは1週間のあいだに最大3円を超える下落をたどる局面も観測されていた。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「中国情勢」と「米金融政策」について。
前者は、11-13日に実施されたG7サミットの声明で、前述した「台湾海峡」が盛り込まれたほか、人権や香港などでも中国に懸念を表明する内容に。また、続く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でも「中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと認識」した旨の共同声明が採択されている。いわゆる対中包囲網がさらに強まってきた感を否めない。ただ、その反面、中国は先のG7やNATOに対し「中国の平和的発展に対する中傷」などと反発。さらに米国については「米国は病気だ。その症状は軽くない」とし、かなり強い言葉で非難を浴びせていた。
対して後者は、週の前半に発表された米経済指標が玉石混交。決め手に欠ける内容だったが、週半ばの注目のFOMCで、予想以上の強気の姿勢が示され、ドルの買い要因となった。具体的には2023年末までに2回の利上げを見込んでいることが示唆されたうえ、経済回復の進展次第で利上げ開始時期が前倒しされる可能性も示されている。ただ、そののち発表された米指標が再び伸び悩み、期待にとどかなかったことで、FOMC後にみられた過熱気味の早期テーパリング観測は週末にかけて一旦沈静化したようだ。
<< 今週の見通し >>
ドル/円は、週間を通して66銭レンジ。「今年の週間最小変動幅」となった前週の反動もあったのか、先週は過去2週間以上も続いていた中期レンジの上限110.32円を一時上抜けている。ただドルの上値リスクが拡大、そのまま続伸も期待されるなか、予想外にドルは伸び悩み。111円にはとどかず上げ渋ると、少なく見積もってもドルの上値トライが仕切り直しとなった感は否めない。一旦底堅めをしたのち、上値再トライという展開を見込むが、果たして実際の値動きは如何に。
前述したような状況下、今週も引き続き広義の米ファンダメンタルズと金融政策を注視している向きが多い。うち後者については、先で指摘したように先週のFOMCが予想以上にタカ派な内容で、市場筋の早期テーパリング観測も根強いものがうかがえる。そうしたなか、パウエルFRB議長が22日に下院特別小委員会において議会証言を行う予定であり、またそれ以外でも米地区連銀総裁などの発言機会が週間を通して目白押しだ。今週は要人発言が相場の波乱要因となりかねない。
テクニカルに見た場合、先週のドル/円は一時110.82円まで値を上げ、ドルの戻り高値を更新するも結果として「行って来い」。チャートをみると、米FOMC前の水準に近いところまで軟落している。基本的なリスクは依然としてドル高方向にバイアスがかかるとみているが、かつてのレンジ下限であった109.18円を下回ってくると、その限りではない。一転してドルの下落機運が高まりかねないというリスクについても、頭の片隅にとどめておきたい。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「イラン情勢」、「露・ウクライナ情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「米金融政策の行方」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、6月の製造業PMI速報値や1-3月期GDP確報値といった注目の米経済指標が発表されるほか、先で取り上げた「FRB議長の議会証言」など米通貨当局者の発言機会も多く、そちらにも注意を払いたい。一方、欧州については、週後半に開催されるEU首脳会談への関心が高いようだ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、109.20-111.20円。ドル高・円安については、先週示現した戻り高値110.82円が最初の抵抗で、抜けると年初来高値110.97円が名実とも視界内に。
対するドル安・円高方向は、短期的には109.80円レベルがサポートとして意識されるが、それを下回るとかつてのレンジ下限109.18円がターゲットに。この前後はかなり強いサポートと予想しているが、109円を下回ると様相に変化も。
ドル円日足
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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