今週ももみあい継続
〇先週のドル円、109.19〜109.84と109円台半ばを中心に狭いレンジ幅にとどまり冴えない一週間に
〇先週発表の米CPI前年比強く出たが、昨年5月に沈んだ反動と考えられ、年後半は低下の可能性
〇今週のFOMCに注目もテーパリング議論は時期尚早との見方が強いか
〇テクニカルでは水準は109.20〜110.50、110円の大台超えで売りが出てくる可能性
〇今週は109.20レベルをサポートに110.100レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は米国CPIを前に方向感が出にくかったものの、2か月続きの強いCPIにドル買いで反応し、直後にはFOMC待ちと、金利関連のイベントを先送りしてトレンドが定まらないままの一週間となりました。水準的にも110円の大台手前109.90レベルではドル売りオーダー、下も109.20以下ではドル買いオーダーと上下ともにオーダーが見えていることもあって週間レンジも109.19〜109.84と109円台半ばを中心に65銭レンジに留まり、冴えない一週間となりました。
先週は米国CPIが前年比で+5.0%と予想を大きく上回る数字ではあったものの、昨年の5月は大きく落ち込んだ谷の部分で来月以降に出てくるCPIは直近2か月よりは伸びが鈍くなっていくはずです。このあたりはCPIの前月比、前年比といった値でなく米国労働省が発表する原データを見るとはっきりします。以下は月ごとの米国CPIの原データ(上段)と前年比(下段)です。垂直線が1年前を示してあります。
このグラフを見るとパウエルFRB議長が言っているCPIの伸びは一過性のものであり、年後半には低下するという説明もわかります。ただ昨年比という点では昨年が低いという方向だけでなく今年が高いという方向でも上伸する可能性はあり、そうした兆候が見えてくる時にはFRBもテーパリングを議論することとなるでしょう。
今週はCPI以上に注目のFOMCがありますが、タカ派、ハト派がいますので一部メンバーはテーパリングを議論すべきと言うでしょうし、おそらく多数のメンバーはテーパリングは時期尚早というパウエルFRB議長と同様の意見を示すでしょう。上記グラフでCPIの谷(2020年5月)から前回の山(2020年2月)を超えるのが2020年8月です。8月の米国CPIが発表されるのは9月14日ですから、やはり早くても8月末のジャクソンホールまでは現在のテーパリング議論は今はそのタイミングではないとのスタンスを維持すると思われます。
このあたりが先週のCPI後の米金利低下の背景にあると思いますが、先週のコラムで示した通り、米債のチャートは10年債にしても30年債にしても価格上昇(イールド低下)方向に動きが出やすいチャートとなっています。先週のコラムでは10年債の利回りを見ましたので、ここでは30年債の利回りを週足チャートで見てみます。
テクニカルな観点ではダブルトップをつけネックラインを割り込む形状を示しています。つまり米金利一段安の展開を予想できることとなります。金利と言っても長期金利は債券の需給といった観点もあり思いのほかテクニカル効きますので、そこから考えると今週のFOMCではテーパリングはまだ先という流れに落ち着くのではないでしょうか。先週は短期的には米金利とドル円との相関が下がっていることを書きましたが、中長期的にはまだ相関は高いこと(週足では直近で0.72)を補足しておきます。
ドル円のチャートも見てみます。日足チャートをご覧ください。
先々週引いた2本のピンクのラインで示した上昇ウェッジの中での動きを先週も継続していますが、今週も継続する可能性はあります。現時点でウェッジの水準は109.20〜110.50にありますが、上値は引き続き110円の大台超えでは売りが出てきそうですし、下値はそのままでも良いでしょう。
今週もウェッジの中でのもみあいを考え109.20レベルをサポートに、110.100レベルをレジスタンスとする流れを見ておきますが、念の為FOMCには警戒だけはしておきましょう。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
6月14日(月)
**:** 豪州、香港、中国市場休場
16:00 トルコ4月経常収支
17:00 スペイン中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
22:00 英中銀総裁講演
22:00 シュナーベルECB理事講演
6月15日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
10:30 豪州1〜3月期住宅価格
15:00 ドイツ5月CPI
15:00 英国5月失業率
15:45 フランス5月CPI
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
21:15 英中銀総裁講演
21:30 米国6月NY連銀製造業景況指数
21:30 米国5月PPI
21:30 米国5月小売売上高
22:15 米国5月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国6月NAHB住宅価格
23:00 米国4月企業在庫
**:** FOMC(〜16日)
6月16日(水)
**:** 南ア市場休場
08:50 本邦5月貿易収支(通関)
09:00 豪中銀総裁講演
11:00 中国5月鉱工業生産、小売売上高
15:00 英国5月CPI
21:30 米国5月中宅着工・建築許可件数
21:30 米国5月輸入物価指数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
6月17日(木)
07:45 NZ1〜3月期GDP
**:** 日銀会合(〜18日)
10:30 豪州5月失業率
16:30 スイス中銀政策金利発表
18:00 ユーロ圏5月CPI
18:00 ユーロ圏4月建設支出
20:00 トルコ中銀政策金利発表
20:00 南ア4月小売売上高
21:30 米国6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国5月景気先行指数
**:** ユーロ圏財務相会合
6月18日(金)
08:30 本邦5月CPI
**:** 日銀会合結果発表
15:00 ドイツ5月PPI
15:00 英国5月小売売上高
15:30 黒田日銀総裁会見
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月7日(月)
週明けのドル円は金曜雇用統計後のドル安の動きが影響して上値の重たい展開が欧州市場昼頃まで続きました。しかし値幅自体は狭く金曜安値圏での膠着となっていたところ、ユーロドル上昇の動きとともにドル円は一段安となり109.19レベルまで水準を切り下げて安値圏での引けとなりました。
6月8日(火)
ドル円は月曜に安値を確認したことで若干底堅い一日とはなったもの上値も重く終日狭い値幅でのもみあいに終始しました。下は109.00レベル、上は109.60レベルにオーダーも入っていること、木曜に米国CPI、ECB理事会とイベントを控えていることも動きを鈍くしていました。
6月9日(水)
ドル円はNY市場までは全く動かず、それまでも低下していた米金利がNY市場に入り1.472%にまで低下したことから後追いでドル売りとなり109.23レベルの安値をつけました。しかし、ドル買いオーダーも見られ翌日に米国CPIの発表も控えていることからすぐに買い戻しが入り、米金利が戻す動きとともに109.66レベルへと日中高値を更新、そのまま高値圏での引けとなりました。
6月10日(木)
ドル円は注目される米国CPI発表を前に若干ドルの上値が重たい地合いでNY市場に入りました。CPIは予想よりも強く前年比で5.0%となったこともあり米金利上昇とともに109.80レベルへと上昇、しかし翌週のFOMCを控え米金利が急速に発表前の水準へと押し、更に引けにかけて一段の金利低下となったことから109.31レベルへと水準を下げ安値引けとなりました。
6月11日(金)
ドル円は東京市場では前日NYの下げに対する週末前のポジション調整もあって底堅い動きが続きましたが値幅は伴わず鈍い流れでした。欧州市場に入り米金利が上昇する動きとともにユーロドルの下げ足が速まりその動きがドル円にも波及、NY市場では強い米国経済指標も手伝って109.84レベルまで水準を切り上げ、やや押しての引けとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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