6月2日暴落一服後の小動き続く
〇トルコリラ円、4日安値12.56から持ち直しの動きに入り8日夕刻に12.77まで戻り高値を上げる
〇対ドルは4日に再び下落するも8.74にとどまり、その後リラ買い優勢となり8日夕刻に8.55まで戻す
〇ドルトルコの史上最安値更新のトライは一時収まるも歴史的下落基調続く
〇14日の米土首脳会談などの状況次第ではトルコリラへの影響が出る可能性
〇12.65以上で推移中は上昇余地あり、12.77超えから12.83前後への上昇を想定
〇12.65割れから下げ再開とみて12.55前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の6月8日は12.77円から12.64円の取引レンジ。6月1日にエルドアン大統領が利下げに言及したと報じられたことから6月2日朝に暴落商状となり1日終値12.81円から2日朝安値12.44円へ急落したが、狼狽的な売り一巡から買い戻されて12.82円へいったん戻し、6月4日安値12.56円まで再び下げたところからはやや持ち直しの動きに入り、7日、8日と戻し気味の推移で8日夕刻には12.77円まで戻り高値を切り上げた。その後はやや上値が重くなり、9日早朝にかけては12.72円近辺での膠着状態となっている。
日足チャートでは6月2日の長い下ヒゲを付けた陰線に対してほぼ当日の下ヒゲ部分での推移が続いている状況だ。
ドル/トルコリラの6月8日は8.63リラから8.55リラの取引レンジ。6月2日早朝に大統領の利下げ言及報道から8.77リラへ急落して史上最安値を更新したが、6月4日に再び下落したところでは8.74リラにとどまって最安値更新を回避し、その後はややリラ買い戻し優勢の動きが続いており、8日夕刻には8.55リラまで戻した。その後は上げ渋りで8.60リラを挟んでの小動きとなっている。
史上最安値更新へのトライはいったん収まり、米長期債利回りが低下していることで対ドルでの売り圧力もやや後退しているものの、歴史的な下落基調は続いている印象だ。
【6月10日の失業率、6月14日の米土首脳会談、6月17日の中銀金融政策発表と続く】
バイデン米大統領とトルコのエルドアン大統領は6月14日にNATO首脳会談に合わせて初めての対面首脳会談に臨む。シリアやアフガニスタン問題などが協議されるが、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7日に記者団に対して両国間の「大きな見解の相違」への対処を目指すと述べた。
米国とトルコはともにNATO同盟国だが、東地中海のガス田開発やシリア、イラン問題において両国の立場は悉く対立している。
サリバン補佐官は「バイデン大統領は両国関係を全面的に見直す機会を持てることを楽しみにしている」と述べているが、バイデン大統領はかつてエルドアン大統領を独裁者呼ばわりし、2019年には「米国はエルドアン大統領の独裁的な政府に対処する際に新しいアプローチを取るべきだ」と主張、トランプ氏との大統領選挙戦においてもトルコへの外交姿勢を批判してきた。今年4月に両大統領は電話会談を行い、その翌日にバイデン大統領は第一次大戦時代のオスマン帝国によるアルメニア人迫害をジェノサイドと認定し、トルコはこれに反発した。
エルドアン大統領は6月1日に「トルコを追い詰める者は貴重な友人を失う」と警告的な発言をしている。果たして、両国関係が改善へと向かうのか、対立が深まるのか、状況次第ではトルコリラへの影響も出るところと注目される。
【40週サイクルによる下落期】
6月9日はトルコの主要経済指標発表はないが、6月10日には4月の失業率発表、6月14日に米土首脳会談、6月17日にトルコ中銀の金融政策決定会合と重要イベントが続く。脆弱なトルコの金融政策姿勢の中にあって米国との関係悪化や利下げへ傾斜する流れとなればリラ売り攻勢が再燃し、米国との関係改善や利下げを暫く思いとどまる姿勢を示せば市場もいったん落ち着きを取り戻す可能性もあり、夏にかけての流れを大きく左右してゆくこととなるのだろうと思われる。
週足における主要な底打ちサイクルは概ね40週前後であり、短い場合には30週強、長い場合は1年となる底打ち間隔で推移している。現状は昨年11月6日にこのサイクルの底を付けて反騰したものの今年2月16日にサイクルのピークを付けて下落期に入っているところだ。昨年11月底からは32週を経過しているが、平均的にはまだ10週前後、長引く場合には20週前後の下落余地もあり得るところだ。
この時期の下落としては、2018年8月13日へ通貨危機的な暴落となったことが思い起こされるが2017年9月高値32.42円から2018年5月23日に22.27円まで下げたところから下げ一服していたところ、7月後半から暴落商状に陥って8月13日に15.25円まで大暴落している。この他、2015年は2014年12月高値からの下落が9月24日底まで続き、2016年も6月24日安値から下げ渋ったものの底打ちがみられずに通年の下落となり、2020年も5月7日安値からいったん戻し欠けたものの6月からの下落再開でそのまま11月6日の史上最安値へと続落している。戻り一巡後に下落再開に入り最安値を更新し始めるとなかなか下げ止まれないという経緯が多い時期でもある。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、6月4日夕安値の後は新たな安値更新を回避して7日夜へ戻したため、8日午前時点では4日夕安値とダブル底となる7日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は7日夜から9日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるとした。
6月8日夕へ戻り高値を切り上げてからはやや下げているので8日夕高値でサイクルトップを付けた可能性があるため、12.65円以上での推移中は一段高余地ありとするが、12.65円割れからは弱気サイクル入りとして10日夕から14日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月7日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いてその後も両スパン揃っての好転を維持しているので、先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月7日夜へ上昇して以降は50ポイント前後を支持線として確りしているのでまだ上昇余地が残るが、次の50ポイント割れからは弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント以下を目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.65円を下値支持線、12.77円を上値抵抗線とする。
(2)12.65円以上での推移中は上昇余地ありとし、12.77円超えからは12.83円前後への上昇を想定するが、12.80円以上は反落注意とみる。
(3)12.65円割れからは下げ再開とみて12.55円前後への下落を想定する。12.55円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、12.65円以下での推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。また要人発言等で急落商状となる場合は12.50円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
6月10日
16:00 4月 失業率 (3月 13.1%)
20:30 週次 外貨準備高(グロス) (5/28時点 487.2億ドル)
6月11日
16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.7%)
16:00 4月 鉱工業生産 前年比 (3月 16.6%)
16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 5.1%)
16:00 4月 小売売上高 前年比 (3月 19.2%)
6月14日
16:00 4月 経常収支 (3月 33.29億ドル)
6月15日
17:00 5月 財政収支 (4月 -169億リラ)
6月17日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.0%)
注:ポイント要約は編集部
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