6月7日深夜からの下げ渋り続くが10日の米CPI発表前で小動き
〇ドル円、米貿易収支発表直後に109.26まで小反落後に買い戻されるも夕高値109.55超えには至らず
〇ビットコインが2週間ぶりの安値へ下落、安全資産としての債券買い・長期債利回り低下に影響か
〇10日発表の米5月消費者物価上昇率に注目、市場予想では前年同月比から伸びるとの見込み
〇109.17割れ回避のうちは上昇余地あり、109.63超えから109.75から110円手前への上昇を想定
〇109.17割れから108.75前後への下落を想定、108.75以下は反騰注意
【概況】
ドル円は6月7日深夜安値109.17円からは下げ渋りに入ったが、8日夕刻に109.55円まで戻したものの7日午前高値109.63円には届かず、21時半の米貿易収支発表直後に109.26円まで小反落したところは買い戻されたものの夕高値超えには至らず、全般に小動きにとどまった。
6月3日の米ADP統計が予想を大幅に超える就業者数増加となったことなどでやや過剰な雇用回復感から米長期債利回りが低下してドル全面安となりドル円は4日朝高値110.33円へ一段高して4月23日以降の高値を切り上げたが、4日の米労働省雇用統計での就業者増加数が期待外れとなったことで4日深夜安値109.35円へ急落した。その後は下げ渋りからややジリ高の推移だが、本格的な反騰入りへのきっかけをつかめずにいる。
【米10年債利回りは6月7日の水準を割り込む】
米長期債利回り動向を見ながらの展開が続いているが、6月8日の米10年債利回りは前日比0.03%低下の1.54%となり、一時は1.51%まで低下して6月4日の5月米雇用統計発表後の1.55%を割り込んだ。5月7日の米4月雇用統計がさえなかったところで一時1.46%台へ急低下してから1.57%まで戻したが、その時以来の低水準となった。米30年債利回りも前日比0.03%低下の2.22%で5月7日以来の低水準となっている。
仮想通貨のビットコインが一時2週間ぶりの安値へ下落したことが安全資産としての債券買い・長期債利回り低下に影響したとのではないかとの見方もされたようだ。米財務省はこの日に580億ドルの3年債入札を実施したが、応札倍率は2.47倍で堅調な需要が示されたため、入札を前後しての利回り動向に大きな影響はなかった。NYダウは前日比30.42ドル安、ナスダック総合指数は43.19ポイント高と小動き。
6月10日の米5月消費者物価上昇率に注目が集まる。市場の事前予想では全体の前年同月比は4月の4.2%から4.7%へと加速し、コア指数の前年同月比も4月の3.0%から3.4%へと伸びると見込まれている。内容次第では6月15-16日に予定されている米連銀のFOMCにおいて量的緩和縮小開始議論が早まる姿勢が示されて米長期債利回り上昇・ドル高反応へ向かう可能性もあり、予想を下回る伸びならば議論は急がれずに米長期債利回り低下・ドル安反応へ進みやすくなる。それによってドル円ももう一度高値試しへ向かうかもう一段安へ進むのか方向性が見えてくるのだろうと思われる。
【求人は高水準、輸出好調で景気回復感は強い】
米労働省が発表した4月雇用動態調査(JOLTS)では、4月末時点の求人件数が前月比99万8000件増の928万6000件となり2000年12月の統計開始以来の最高を更新、採用件数は607万5000件で3月の600万6000件とほぼ同水準となった。求人は旺盛だが採用が追い付かずに雇用統計での就業者増加数が期待ほどに伸びていなかったことを示していると思われる。
米商務省が発表した4月の貿易統計(国際収支ベース)ではモノの輸出が前月比1.1%増の1452億8800万ドルとなり単月では過去最大となった。輸入は1.9%減の2319億6800万ドル、モノとサービスを合わせた貿易収支は前月比8.2%減の689億ドルで4か月振りに縮小した。赤字額の最大は中国、メキシコ、ベトナム、日本と続く。対中国赤字は前月比6.7%減の258億3000万ドル、対日赤字は3.5%増の60億9900万ドル。半導体供給等で関係が強化された台湾からの輸入が過去最大となった。
ドル円は発表直後に109.26円の安値を付けたがその後は反騰している。米景気回復を示すものとしてドル買い要因となったようだが、ユーロ等の反応は限定的だった。
世界銀行は8日夜に2021年の世界成長率見通しを1月予想から1.5%引き上げて5.6%とした。米国や中国の景気回復が世界全体の回復をけん引しており、景気後退後の回復としては1939年に6.6%上昇した時以来80年ぶりの高水準となる見通しとした。米国の21年の成長率見通しは1月から3.3%上方修正の6.8%と予想して1984年の7.0%以来の高成長と予想。日本は2.9%で前回から0.4%上方修正、ユーロ圏は0.6%上方修正の4.2%、中国は0.6%上方修正の8.5%と見込んだ。新興国や途上国の改善は遅れており格差が拡大しているとした。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月4日朝高値を直近のサイクルトップとして下落したが、6月1日午前安値から4日半となる6月7日深夜安値でボトムを付けて戻しに入っている。底割れへの余裕は乏しいが底割れ回避のうちは9日の日中から11日午前にかけての間への上昇余地ありとし、7日深夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして10日夜から14日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7日深夜安値からのジリ高が続いて遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込んできている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン上限が上値抵抗となりやすいと思われる。先行スパンから転落する場合は下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4日夜の急落から7日夜への一段安に際して指数のボトムから切り上がる強気逆行を見せてジリ高の推移となっているが、60ポイント前後では抵抗感がみられて上昇は勢い付いていない印象だ。50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとみるが、40ポイント割れへ低下するところからは下げ再開を疑い、7日深夜安値割れからは20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月7日深夜安値109.17円を下値支持線、6月7日朝高値109.63円を上値抵抗線とする。
(2)7日深夜安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、7日朝高値超えからは109.75円から110円手前への上昇を想定する。109.85円以上は反落警戒とみるが、109.40円以上での推移なら10日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.17円割れからは108.75円前後への下落を想定する。108.75円以下は反騰注意とみるが、下げ足が早まる場合は5月25日安値108.55円等のある108.50円台を目指すとみる。また109.17円を割り込んだ後も109.25円以下での推移なら10日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/9(水)
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 113.1)
10:00 (NZ) 6月 NBNZ企業信頼感 (5月 7.0)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 1.6%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 6.8%、予想 8.5%)
13:00 (豪) ケント豪中銀総裁補佐、講演
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 205億ユーロ、予想 163億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 302億ユーロ、予想 230億ユーロ)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:00 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 1.3%、予想 0.8%)
23:00 (米) 4月 卸売売上高 前月比 (3月 4.6%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札
6/10(木)
08:01 (英) 5月 英RICS住宅価格指数 (4月 75、予想 77)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前月比 (4月 0.7%、予想 0.5%)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前年同月比 (4月 3.6%、予想 4.5%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルドECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.8%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 4.2%、予想 4.7%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 0.9%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 3.0%、予想 3.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 38.5万件、予想 37.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 「前週 377.1万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 -2256億ドル)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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