ドル円見通し 109.30円台で支えられず、109円台維持を試す(21/6/8)

6月7日夜の下落で109.30円を割り込み109.17円まで一段安となった。

ドル円見通し 109.30円台で支えられず、109円台維持を試す(21/6/8)

109.30円台で支えられず、109円台維持を試す

〇ドル円、7日夜に下値支持帯の109.30を割り込み109.17まで一段安となる
〇米10年債利回りは前日比0.01%上昇の1.57%で終わり、取引レンジは1.56-1.58%台の狭いレンジ
〇3月末以降1.53%前後が下値支持線で低下すればドル安感強まり、1.64%超えでドル高感強まる可能性
〇米財務省は8〜10日に大量入札の予定、入札前に利回り上昇しても堅調に終われば利回り低下へ向かうか
〇来週のFOMCでのテーパリング議論開始を意識するか否かで市場の流れ変わる可能性
〇109.40以下で推移中は下向きとし109円前後試しを想定
〇109.63超えから戻しに入るとみて109.75から110円手前を目指すとみる

【概況】

ドル円は6月3日の米ADP民間雇用報告が予想を大幅に超える就業者数増加となり、週間失業保険申請件数が昨年3月のコロナショック以降で始めて40万件割れとなったことなどから米連銀によるテーパリング議論が早まるとみて米長期債利回り上昇・ドル全面高となったことで5月28日深夜高値110.19円を超える一段高となり、4日朝には110.33円まで高値を伸ばした。しかし6月4日の米雇用統計は期待外れの就業者増加数にとどまったことで3日とは真逆の展開となって米長期債利回りが低下してドル全面安となり、ドル円は4日深夜に109.35円まで急落した。

5月28日深夜高値からいったん調整安に入ったところでは、31日深夜安値109.34円や6月1日午前安値109.31円等の109.30円台が下値支持帯となっていたが、6月7日夜の下落で109.30円を割り込み109.17円まで一段安となった。7日は欧米の主要経済指標の発表や刺激的な要人発言等がなく手掛かり難だったが、4日夜にドル全面安となった反動で日中はややドル高で推移していたものの、夕刻からはユーロやポンドが上昇、豪ドルが4日の急騰後も高値を切り上げてドル安感が強まったことでドル円も安値を切り下げたようだ。

【今週の米国債大量入札と5月消費者物価、来週のFOMC】

6月7日の米10年債利回りは前日比0.01%上昇の1.57%で終了。取引レンジは1.56%台から1.58%台までの狭いレンジにとどまった。30年債利回りは0.02%上昇の2.25%だった。
米10年債利回りは年初に1.0%を超えて急伸に入り、3月30日には1.77%を付けたがそこでピークアウトして低下に転じ、5月7日の4月米雇用統計が低調だったことで一時は1.46%台まで下げた。その後の反騰で5月13日には1.70%まで再上昇したものの再び低下傾向に入っている。6月1日の1.64%から4日の米5月雇用統計後の1.55%台へ低下してからは下げ渋りだが、5月7日の一時的な急低下を除けば3月末以降は1.53%前後が下値支持線となっているため、この支持線を割り込んでさらに低下してゆけばドル安感は一段と高まると思われるが、逆に1.64%を超えてくるとドル高感が強まる可能性がある。

為替市場としては米長期債利回り動向を気にしつつ、株式市場が楽観的な強気で推移するならドルストレートにおいてはリスクオン優先でのドル安へ傾斜しやすく、クロス円も同様に上昇しやすいが、米長期債利回りの低下が顕著になればドル円としては安値試しへ向かいやすくなる。
財務省は6月8日に3年債580億ドル、9日に10年債380億ドル、10日に30年債240億ドルの大量入札を予定している。これまでも同様の大量入札を繰り返してきたが、傾向としては入札予定前に利回りが上昇しても入札が堅調に終われば利回り低下へ向かうというパターンも見られる。また来週の6月15-16日には米連銀のFOMCも控えているが、前回FOMCの議事録においてテーパリング(量的緩和縮小)の議論開始についての言及があったため、今回のFOMCでより明確にテーパリング議論進展へのガイドラインが示されて市場としてもやや早めの開始を意識するのか、しばらくは始まらないと楽観するのかにより為替市場の流れもかわってくる。

米連銀はこれまで「物価上昇の上ブレはコロナショック後の景気回復期における一時的な需給ギャップによるもの」とし「雇用回復には時間がかかるために忍耐強く緩和政策を続ける」との姿勢を繰り返し強調してきた。今週は6月10日に5月の米消費者物価上昇率と週間失業保険申請件数等の発表があるが、それらによりテーパリング議論が早まるのかどうか、市場も連銀のスタンス変化の可能性を探る事になると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月28日夜高値でピークを付けて下落期入りしたが、2日夜に109.88円まで戻したために3日朝時点では6月1日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして4日にかけての上昇余地ありとした。3日夜に急伸して4日午前へ高値を伸ばしたが、4日夜に急落となったために4日午前高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りしている。安値形成期は4日の日中から8日の日中にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、4日深夜にボトムを付けて既に底割れから新たな弱気サイクル入りしている可能性もあるので、7日朝の戻り高値(109.63円)を超えないうちは一段安余地が残るとし、7日朝高値超えからは強気サイクル入りとして9日朝から11日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では4日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。7日夜安値以降は下げ渋りのため遅行スパンは好転しやすい位置に来ているため、遅行スパン好転からは上昇再開の可能性ありとみて高値試し優先とするが、先行スパンが分厚く戻り抵抗帯になりやすい印象だ。このため先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが好転してもその後に再び悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は4日夜の急落から7日夜への一段安に際して指数のボトムから切り上がる強気逆行がみられるため、50ポイント到達へ戻すところからはいったん戻しに入るとみる。その際は60ポイント前後への上昇とその後の反落注意とし、50ポイント前後が戻り抵抗となる場合はその後に40ポイント割れから続落するところで下げ再開に入るのではないかと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.00円を下値支持線、6月7日朝高値109.63円を上値抵抗線とする。
(2)109.40円以下での推移中は下向きとして109円前後試しを想定する。109円前後からの反騰で109.40円を超える場合は反騰入りとみるが、さらに続落の場合は108.75円前後へ下値目途を引き下げる。また109.40円以下での推移が続くなら9日も一段安へ進む可能性があるとみる。
(3)109.63円超えからはいったん戻しに入るとみて109.75円から110円手前を目指すとみる。109.85円以上は反落警戒とするが、109.63円を超えた後も109.40円以上での推移が続くなら9日も戻りを試す可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

6/8(火)
中国・ASEAN外相会議
10:30 (豪) 5月 NAB企業景況感指数 (4月 32)
14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー現状判断DI (4月 39.1、予想 34.0)
14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー先行判断DI (4月 41.7、予想 38.0)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 2.5%、予想 0.5%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 5.1%、予想 29.5%)

18:00 (独) 6月 ZEW景況感期待指数 (5月 84.4、予想 86.0)
18:00 (欧) 6月 ZEW景況感期待指数 (5月 84.0)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP確定値 前期比 (改定値 -0.6%、予想 -0.6%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 -1.8%、予想 -1.8%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -744億ドル、予想 -690億ドル)
23:00 (米) 4月 雇用動態調査(JOLT)
26:00 (米) 財務省3年債入札

6/9(水)
07:45 (NZ) 1-3月期 製造業売上高 前期比 (10-12月 -0.6%)
08:50 (日) 5月 マネーストックM2 前年同月比 (4月 9.2%、予想 8.4%)
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 113.1)
10:00 (NZ) 6月 NBNZ企業信頼感 (5月 7.0)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 1.6%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 6.8%、予想 8.5%)
13:00 (豪) ケント豪中銀総裁補佐、講演

15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 205億ユーロ、予想 163億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 302億ユーロ、予想 230億ユーロ)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:00 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 1.3%、予想 0.8%)
23:00 (米) 4月 卸売売上高 前月比 (3月 4.6%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札


※ポイント要約は編集部

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