GDPが予想を上回って反騰するも勢い続かず
〇トルコリラ円、トルコGDPの結果から買戻しが入り12.94まで上昇、その後12.90を割り込んでの推移
〇ドル/トルコリラ、トルコGDPをきっかけに買戻しが入り8.44まで戻した後に小康状態へ
〇トルコGDP、前年同期比7.0%増で1-3月期の成長率はG20内で中国に次ぐ高成長
〇1-3月期は好調だが3/20の中銀総裁解任やラマダン時期のロックダウンの影響で4-6月期は成長鈍化か
〇12.83以上で推移中は上昇余地あり、12.95を超える場合12.98前後への上昇を想定
〇12.85以下で推移が続く場合は下向き、12.80割れから12.75試しへ向かうとみる
【概況】
トルコリラ円の5月31日は12.94円から12.76円の取引レンジ。5月28日には格下げ検討報道から12.75円まで下げて4月29日の戻り高値13.38円以降の安値を更新していたが、その後は落ち着き、16時発表のトルコ1-3月期GDP前年同期比が市場予想の6.3%増を上回る7.0%増となり10-12月期の5.9%増から伸びたことをきっかけにいったん買い戻しが入って発表後の高値で12.94円へ上昇した。しかし夕刻以降は伸びずにやや失速気味となり、31日深夜にかけてドル円が一段安したことも圧迫となり、その後は12.90円を割り込んでの推移となっている。
ドル/トルコリラの5月31日は8.58リラから8.44リラの取引レンジ。5月28日には格下げ検討報道をきっかけに8.61リラへ下落して昨年11月6日安値8.57リラを割り込んで史上最安値を更新したが、売り一巡でいったん利益確定の買い戻しの動きとなり、その後は上昇一服により8.56リラを挟んだ持ち合いで推移していた。
31日16時発表のトルコGDPをきっかけに買い戻しの動きが進んで発表後には8.44リラまで戻したが、買い戻し一巡後は8.48リラを挟んだ持ち合いで小康状態となっている。
【トルコの1-3月期GDPは予想を上回るが、次期は鈍化見込み】
トルコ統計局が5月31日に発表した2021年1-3月期のトルコGDPは前期比1.7%増となり10-12月期の1.7%増と伸び率は変わらなかったが、前年同期比は7.0%増となり市場予想の6.3%増を超えて10-12月期の5.9%増を上回った。
トルコは感染拡大の第三波に襲われてロックダウンにも入ったが、規制は緩やかであり、大幅な物価上昇に見舞われたものの3月20日にトルコ中銀前総裁が解任されるまでは昨年11月からのリラ高基調も継続していたために良好な成長を実現したといえる。1-3月期の成長率としてはG20のうち中国に次ぐ高成長だった。
前期比で見れば2020年4-6月期に11.0%減へ落ち込んだところから7-9月期には15.9%増へ回復し、10-12月期と1-3月期をいずれも1.7%増としたことで落ち着いた状況に入っているといえる。
前年同期比ではコロナショックの2020年1-3月期に4.5%増、影響が深刻化した4-6月期に10.3%減へ急激に悪化したが、その後は7-9月期に6.3%増、10-12月期の5.9%増と持ち直してきた。
1-3月期の数字は好調さを示したが、3月20日に中銀総裁が解任されたことをきっかけにリラ安が進んでいること、ラマダンの時期にロックダウンを行った影響もあり4-6月期は成長の鈍化が見込まれている。
対ドルでのトルコリラはGDPが良好だったことで史上最安値更新後の買い戻しの動きを続けたが、6月3日には5月の物価上昇率の発表を控えている。物価上昇率のピークが見えるような数字となれば先行きの中銀による利下げの可能性も出てきてリラ売り材料となる可能性があり、物価上昇率が予想よりも上ブレすれば利上げ催促的なリラ売りとなりやすい。6月17日の次回中銀金融政策決定会合まではまだ間があるが、GDP発表を通過して市場の目も物価と金利へ向かう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日夜安値から4日目となる25日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとしていたが、28日夜へ一段安したところから31日夕刻へ反騰しているため、28日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。高値形成期は6月2日から4日にかけての間と想定するが、戻りは短命の可能性があるとみて12.80円割れからは弱気転換注意として28日深夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして2日夜から4日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では31日夕刻の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜けたが、その後はややジリ安の推移となっているため、先行スパンを上回るうちは上昇余地ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は70ポイント超えへ反騰したところから失速して50ポイントを割り込みつつある。50ポイントを割り込んでも切り返すうちは60ポイント超えからの上昇再開余地ありとみるが、40ポイントを割り込む下落発生からは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.80円を下値支持線、12.95円を上値抵抗線とする。
(2)12.83円以上での推移中は上昇余地ありとみるが、12.92円から12.95円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。12.95円を超える場合は12.98円前後への上昇を想定するが、12.98円以上は反落警戒とみる。
(3)12.85円以下での推移が続く場合は下向きとし、12.80円割れからは28日夜安値12.75円試しへ向かうとみる。12.75円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、12.85円以下での推移なら2日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月1日
16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 50.4)
6月3日
16:00 5月 消費者物価上昇率 前月比 (4月 1.68%)
16:00 5月 消費者物価上昇率 前年比 (4月 17.14%)
16:00 5月 生産者物価上昇率 前月比 (4月 4.34%)
16:00 5月 生産者物価上昇率 前年比 (4月 35.17%)
20:30 週次 外貨準備高(グロス) 5/28時点 (5/21時点 492.0億ドル)
6月10日
16:00 4月 失業率 (3月 13.1%)
※ポイント要約は編集部
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実際のレンジは、安値が12.76レベル、高値が12.97レベルとなり、ほぼ予想レンジの中で若干狭い値幅での取引となった一週間でした。
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