5月25日安値からの上昇幅に対する半値押し、全般ドル安で圧迫感
〇ドル円、31日深夜に109.34まで下落、その後やや戻すも米英市場休場で手掛かりなくドル安の推移
〇ドル人民元、31日に6.35元へ下落し1/29安値を割り込みドル安元高感強まる
〇米中関係からの元高誘導か中国景気回復を反映した動きで、為替市場全般のドル安感を強める印象
〇109.34以上で推移中は109.75超えから上昇再開とみて110.19を目指す流れへ
〇109.34割れから109円前後試しへ、109円前後は反発警戒圏とし109.50を超えたら上昇再開の可能性
【概況】
ドル円は5月31日深夜に109.34円まで下落した。その後はやや戻しているものの31日は米英市場が休場の中で特段の手掛かりはなく、為替市場全般がドル安の推移となり、ユーロドルが28日夜へ急落した分を解消して戻り高値を切り上げた。ポンド/ドルも同様に28日夜の反落を解消してさらに戻り高値の切り上げとなり、豪ドルやNZドルも28日夜からの持ち直しを続けている。新興国通貨でも南アランドが上昇、メキシコペソも反発、GDPが予想より上ブレしたトルコリラも急落商状からいったん持ち直している。
週末に米長期再利回りが再び低下傾向を示して週を終えたことで米長期債利回り低下、中長期的な株高基調の継続期待、主要中銀が景気回復感から量的緩和の縮小を意識したスタンスへと姿勢を変えつつある中で米連銀が「忍耐強く」インフレ率の上ブレを一時的なものとして雇用回復を実現するまでは量的緩和を継続するとの姿勢を繰り返し強調、主要中銀のスタンスの差ということも意識されているのかもしれない。そうした中にあって実質マイナス金利と量的緩和や株買いの姿勢を維持せざるを得ない日銀の状況を踏まえると、全般的にリスクオンと中銀スタンスの差でドルストレートでドル安が進んだとしても、日米金利差が大きく縮小することも限られるとすれば、ドルの弱さよりも円の弱さが意識され、クロス円全般の上昇基調がNYダウを先導役としたアフターコロナ復興相場の流れで上昇基調を継続する中、ドル円も全般のドル安局面で多少下げても4月23日以降の上昇基調を維持してゆけるのではないかという印象を持つ。
【5月25日安値からの上昇幅に対する半値押しの水準】
5月31日深夜に109.34円まで下げたが、5月19日深夜安値108.56円と5月25日夕安値108.55円をダブル底とした上昇幅1.64円に対しての半値押しが109.37円であり、31日深夜安値で到達している。その下は3分の2押しの109.09円となるが、現状で踏み止まって109.75円を超えてくれば半値押し達成からの切り返し感が強まるものの、安値を更新する場合は3分の2押しラインである109円を維持できるかどうかを試すところへ下値支持線が切り下がる可能性もあるところと注意される。
日足チャートにおける1月6日底と4月23日安値を結んだ上昇トレンドの下値支持線は5月25日安値でも維持されており、5月3日高値109.69円から5月13日高値109.78円、5月28日高値110.19円へと切り上げているので、4月23日安値を押し目として年初からの上昇が二段目に入っている可能性を示すが、4月23日安値からの上昇角度はまだ鈍く、ジグザグの上昇で110円到達においては28日の日足が上ヒゲを目立たせたこともあり、まだ一方通行的な上昇感を抱かせる状況には至っていない。110円に定着しつつ戻り高値の切り上げに入れば、3月31日高値110.96円超えから昨年2月20日天井112.21円と昨年3月24日の戻り天井111.71円超えを試す流れへ進むとみるが、まだ押し上げ材料が足りないところだ。
【ドル指数の底割れ間近と人民元の急伸】
ドル人民元は5月31日に6.35元へ下落して1月29日安値6.41元を割り込んだ。2019年9月高値7.18元と2020年5月高値7.17元をダブル天井として下落期に入ってきたが、1月29日安値を割り込んだことによりドル安元高感が強まっている。これは米中関係を踏まえての元高誘導という可能性もあるが、早期にコロナショックから出直った中国景気回復を反映した動きともいえる。この元高ドル安が為替市場全般のドル安感を強めている印象もある。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月25日に89.53まで下げて1月6日安値89.21に対する余裕が乏しくなっており、底割れなら昨年3月20日天井102.99からの下落がさらに長期化する印象が強まる。ドル指数と逆相関になるユーロドルは1月6日高値1.2349ドルから3月31日安値1.1702ドルまで下落したところからV字反騰を継続して1月6日高値に迫っている。
ドル指数とユーロドルの動きは米10年債利回りの年初からの急上昇と3月30日でのピークアウトからの低下傾向と同期した動きであり、為替市場全般の流れを決めているが、ユーロ高ドル安、ドル指数の下落が続く場合は、1月6日底から3月31日まで上昇してからいったん下げて4月23日からやや戻し気味にはあるドル円にとっては戻り一巡によりユーロ高ドル安と同調してドル安円高へ流れが押し戻されても不思議ないところだ。ドルストレートにおけるドル安感が継続する場合に、それを超える円安感が発生するのかどうかにより、ユーロドルやドル指数とドル円の同期も継続か、いったん切れるのか、決まってくるのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月19日深夜安値と5月25日夕安値をダブル底として上昇期に入ったが、5月28日夜高値でピークを付けて下落期入りとなっている。安値形成期は25日夕安値を基準としてみれば28日夕から6月1日夕にかけての間と想定されるので、目先は突っ込み警戒期にあるとみる。109.75円を超えないうちは109円台序盤への一段安余地ありと見るがそこは反発警戒圏と考える。109.75円超えからは上昇期入りとみて6月2日夜から4日深夜にかけての間への上昇を想定する。週末は雇用統計もあるので騰勢継続なら高値形成期が週明けへ延びる可能性も考えられる。
60分足の一目均衡表では31日夜の下落で先行スパンから転落している。31日午前から遅行スパンは悪化しているので遅行スパン悪化中は一段安警戒とするが、安値更新がストップすれば遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からは上昇再開に入るとみる。さらに先行スパンを上抜き返せば上昇再開感も増すとみる。まずは先行スパンに突入出来るかが最初の攻防となる。
60分足の相対力指数は31日夜の下落で30ポイントまで低下した。さらに安値を更新する際に指数のボトムが切り上がれば強気逆行発生としてその後の反騰入りの可能性が高まるとみる。安値更新を回避して50ポイント超えへ戻す場合も上昇再開感が強まるとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.34円を下値支持線、109.75円を上値抵抗線とする。
(2)109.34円以上での推移中は109.75円超えから上昇再開に入るとみて28日夜高値110.19円を目指す流れに入るとみる。28日夜高値を超えるには新たな押し上げ材料が欲しいところだが、109.75円を超えた後も109.50円以上での推移なら2日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.34円割れからは109円前後試しとみるが、109円前後は反発警戒圏とし、その後に109.50円を超えるところからは上昇再開の可能性を優先する。ただし109.34円を割り込んだ後も109.50円以下での推移なら2日も安値試しへ向かう可能性が残るとみる。
【当面の主な予定】
6/1(火)
OPECプラス」閣僚級会合
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (10-12月 145億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 17.4%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 51.9)
13:30 (豪) 豪準備銀行(豪中銀)、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 64.0、予想 64.0)
16:55 (独) 5月 失業者数 前月比 (4月 0.90万人、予想 -0.90万人)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 6.0%、予想 6.0%)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 62.8、予想 62.8)
17:30 (英) 5月 製造業PMI改定値 (速報 66.1、予想 66.1)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 8.1%、予想 8.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (4月 1.6%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (4月 0.7%、予想 0.9%)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (速報 61.5、予想 61.5)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 60.7、予想 60.9)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.2%、予想 0.5%)
24:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
27:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
6/2(水)
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 24.3%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 3.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 -1.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDPデフレーター 前期比 (10-12月 1.1%)
17:30 (英) 4月 消費者信用残高 (3月 -5億ポンド)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.1%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.3%)
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) ミネアポリス連銀オンラインイベント (ミネアポリス連銀、アトランタ連銀、ダラス連銀各総裁参加)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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