ユーロドルはいったん上値を見て調整か
〇先週のユーロドルは週前半のドル売りと後半のドル買いがベース、週初の水準に戻しての引け
〇ECB専務理事のテーパリングけん制発言、米金利が切り返すタイミングと一致しユーロ売りへ転換
〇米金利の動向を考える上では水曜のベージュブックと金曜の米国雇用統計にも注意は必要
〇年初来高値を更新できずユーロドルはいったん調整の売りが入りやすくなっていると考えられる
〇今週は1.2090レベルをサポートに1.2250レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロはユーロ材料もありましたが、大きくは週前半の米金利低下によるドル売り(ユーロ買い)、週後半は米金利上昇によるドル買い(ユーロ売り)がベースとなり、それにパネッタECB専務理事のテーパリングけん制発言が出た流れです。金曜に一時的に下に突っ込む動きも見られましたが、ほぼ週初の水準に戻しての引けとなりました。
米金利は5月12・13日に1.7%をトライしたものの定着できず下げる動きが先週半ばまで続いていました。4月14日にも1.7%をトライしたものの下げと、最近の米金利(10年債利回り)は1.7%では債券買いが出て金利が低下するという流れになっています。これは他の金融市場でビットコインを中心に荒っぽい動きが続いていることから安全資産である米国債を買う動きと、もうひとつは1.7%という利回りは米国の主要株価指数であるS&P500の配当り回り1.5%程度を上回るため、投資対象として見た場合にも妙味がある水準です。そのあたりも1.7%をなかなか超えない理由のひとつと言えます。
そしてユーロ材料としてはパネッタECB専務理事のハト派発言ですが、ECB理事にはタカ派もいればハト派もいます。比較的景気のよくインフレ懸念が歴史的に強いドイツ出身の理事はほぼタカ派ですし、欧州でも南北格差があると言われるように南欧出身の理事はハト派が多いと言えます。そしてパネッタ理事は元イタリア中銀副総裁で就任前からハト派として知られていたことを考えると、テーパリングけん制発言をしたとしてもそれほど驚くにはあたりませんが、ちょうど米金利が切り返すタイミングと一致したためユーロ売りへの転換点になったという見方で良いでしょう。
今週は月初ということで経済指標も多いのですが、主要国の製造業とサービス業のPMI改定値が注目されやすい指標です。また引き続き米金利の動向を考える上では水曜のベージュブックと金曜の米国雇用統計にも注意は必要でしょう。ただ、ファンダメンタルな材料よりも上値が重くなり始めたユーロドルと、依然として上を狙っているユーロ円とテクニカルなせめぎあいの方が気になります。
ユーロドルの日足チャートをご覧ください。
3月末の年初来安値を起点とした上昇チャンネルは先週後半に下ヒゲとはいえ下抜け始めていることがわかり、年初来高値を更新できなかったことも重なってユーロドルではいったん調整の売りが入りやすくなっていると考えられます。3月安値と5月高値の23.6%押し1.2132は先週安値でほぼ到達したので、次のターゲットとしては38.2%押しの1.2050となりますが、さすがにこの水準はやや遠い印象です。
上昇チャンネルの押しとなった5月安値と5月高値からターゲットを求めると半値押しは上記23.6%押しとほぼ同水準、61.8%押しが1.2092となり現在は下値はこの水準をサポートと考えたいところです。上値については既に先週見たと考えられますが、先週の高値圏に近い水準は試す可能性も否定できません。
今週は1.2090レベルをサポートに1.2250レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートを見てみましょう。
5月に入り騰勢を強め先週は134円台に乗せ2018年2月以来の高値更新となりました。欧州と日本とのワクチン接種進行格差による円売りという面が大きいようです。2018年高値137.50レベルまではまだ距離はありますが、6月中のターゲットとしては135円の大台を試す可能性を考えてよさそうな強い地合いのチャートと言えます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
5月31日(月)
**:** LDN、NY市場休場
17:30 イタリア中銀総裁講演
6月1日(火)
15:00 英国5月住宅価格
16:50 フランス5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月失業率
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI
17:30 英国5月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
24:00 英中銀総裁講演
6月2日(水)
18:00 ユーロ圏4月PPI
27:00 ベージュブック
6月3日(木)
16:50 フランス5月サービス業PMI
16:55 ドイツ5月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI
17:30 英国5月サービス業PMI
25:00 英中銀総裁講演
6月4日(金)
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏4月小売売上高
21:30 米国5月雇用統計
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月24日(月)
ユーロドルは東京市場では動きは無かったものの米金利低下の動きとともに欧州市場序盤以降はドル売り・ユーロ買いとなり、NY市場前場には1.2230レベルの高値をつけました。NY市場では1.22台前半の狭いレンジの中でのもみあいに終始しました。
5月25日(火)
ユーロドルは前日に続いて底堅い動きでスタート、欧州市場に入り強い経済指標をきっかけに前週高値を上抜けるとストップオーダーを巻き込みながら1.2266レベルと1月第1週以来の高値圏へと上昇しました、その後も上下はあったものの米金利低下の動きも重なって底堅い動きのままで引けました。
5月26日(水)
ユーロドルは欧州市場までは動きが見られませんでしたが、パネッタECB理事が現時点では債券購入の減速は正当化できないとテーパリング思惑を牽制する発言をしたことをきっかけにユーロは下げに転じました。東京後場には1.2263レベルの高値をつけていましたが、NY後場には1.2182レベルまで水準を切り下げ上値が重たいままでの引けとなりました。
5月27日(木)
ユーロドルはバイデン政権が提案した6兆ドルの財政出動をきっかけに長期金利が上昇する動きによるドル買い(ユーロ売り)の動きとユーロ円の買いの動きがぶつかって1.2195レベルをもみあいの中心としてもみあいが続きました。ユーロ円はドル円とともに上昇し一時134.06レベルと年初来高値を更新し2018年2月以来の高値をつけました。
5月28日(金)
ユーロドルは31日が米国と英国が休場となる関係で実質的な月末相場となりました。欧州市場ではドル買い実需が出たものの、仕掛けの動きもあった様子で米金利が低下すると完全に行って来いで元の水準まで買い戻されての引けとなりました。
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