底堅い展開も引き続きもみあい
〇先週のドル円、ECB専務理事のハト派発言による対ユーロのドル売りが波及し、レンジ上抜け
〇週末に一時110.20レベルとなるも110円台では売りも出て109.75レベルまで押して引けに
〇ドル円はクロス円全般で円安地合いが定着気味、コロナワクチン接種遅れなどで円安の見方強まる
〇東京オリンピックの延期・中止が相場を動かす材料に、今週最終結論が出る可能性も
〇米雇用統計で弱い数字が出ればテーパリング時期後退の予想増えるか
〇今週は109.20レベルをサポートに110.20レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は前週からのもみあい相場を継続してスタートしましたが、26日にパネッタECB専務理事が現時点で債券購入を減速させるテーパリングは正当化できないと発言したことをきっかけにユーロドルの下げが波及してドル円はそれまでのレンジを上抜け。その後もユーロドルとともにドルが強い地合いを続け、週末には一時110.20レベルと大台乗せとなりましたが。110円台では売りたい向きもいて109.75レベルまで押して引けました。
ドル円は相変わらず動きは鈍いものの、先週後半の底堅さから動きが加速するとすれば円安方向という見方が増えてきています。これはポンド円やユーロ円をはじめクロス円全般に円安地合いが定着してきていることが大きいと言えます。そして、このクロス円での円売りは、世界的に新型コロナのワクチン接種が進む中で、日本の接種の遅れが円売りと見られていることが大きいようです。
海外の市場参加者は接種の遅れがその国の通貨安となる可能性が高いと見ている様子で、そうなると開催がいまだ不透明な東京オリンピックも、もし中止という話となった場合、以前にも触れましたが株安+円安という反応になる可能性がありそうです。当初は感染拡大が収まっている前提で5月末に判断という話でしたが、現状は開催する前提で動いている感じがします。それだけに突然の延期・中止という話が出る場合には相場を動かすための材料にされるのではという気がします。果たしてどうなるか、今週当たり最終結論が出る可能性は高いでしょう。
それ以外のトピックスでは相変わらずテーパリング思惑、そしてバイデン政権による6兆ドルという巨額のインフラ投資を中心とした歳出拡大提案ですが、テーパリングに関しては今週金曜の米国雇用統計も影響が大きそうです。先月は予想に比べて極端に悪い数字が出ましたが、今回も弱い数字が出るとテーパリング時期後退の予想が増えそうです。またバイデン政権による更なる財政出動提案はまだ決定ではありませんが、多少の修正が入っても大規模なものとなりそうですから、財政悪化による米国債売り(=長期金利上昇)の動きが改めて出てくる可能性もあるでしょう。
本来ならば悪い長期金利上昇でドル売りと見られてもおかしくないのですが、先週の動きを見ていると素直に金利上昇=ドル買いという判断をされています。対ドルで動くのは難しいと考える向きはドルが絡まないクロス円で円売りに動く流れとなっていますが、いずれにしてもドル円はやや円安方向にバイアスがかかりやすい展開が続きそうです。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
若干引き直しが入りましたが、2本のピンクのラインで示した上昇ウェッジの中での動きを継続中と見ることが出来ます。年初来高値とその後の下げとの78.6%(61.8%の平方根)戻し110.21(青のターゲット)となっていて、先週の高値と重なっています。
いったん同水準ではドル売りも出て踊り場を挟みそうですが、材料的には年初来高値の110.95をトライしやすい地合いにあります。今週は月初で連日経済指標の発表が予定されていますが、前回の雇用統計くらい予想とのズレが無いと新値を見ることは難しいと思います。
今週も引き続き底堅いながらも上値も重たい展開を考え、上昇ウェッジの水準を参考にして、109.20レベルをサポートに、110.20レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定
(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
5月31日(月)
**:** LDN、NY市場休場
10:00 中国5月製造業PMI
16:00 トルコ1〜3月期GDP
17:30 イタリア中銀総裁
21:00 南ア4月貿易収支
6月1日(火)
07:45 NZ4月住宅建築許可件数
10:30 豪州4月住宅建築許可件数
10:45 中国5月MarkIt製造業PMI
13:30 豪中銀政策金利発表
15:00 英国5月住宅価格
16:00 トルコ5月製造業PMI
16:50 フランス5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月製造業PMI
16:55 ドイツ5月失業率
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI
17:30 英国5月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
21:30 カナダ1〜3月期GDP
22:45 米国5月製造業PMI
23:00 クオールズFRB副議長講演
23:00 米国5月ISM製造業景況指数
23:00 米国4月建設支出
24:00 英中銀総裁講演
27:00 ブレイナードFRB理事講演
6月2日(水)
10:30 豪州1〜3月期GDP
18:00 ユーロ圏4月PPI
23:30 週間原油在庫統計
25:00 フィラデルフィア連銀総裁講演
27:00 ベージュブック
27:00 シカゴ連銀総裁講演、アトランタ連銀総裁講演、(ダラス連銀総裁講演)
6月3日(木)
10:30 豪州4月貿易収支
10:45 中国5月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ5月CPI
16:50 フランス5月サービス業PMI
16:55 ドイツ5月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI
17:30 英国5月サービス業PMI
20:30 米国5月チャレンジャー人員削減数
21:15 米国5月ADP全国雇用者数
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国1〜3月期非農業部門労働生産性
22:45 米国5月サービス業PMI
23:00 米国5月ISM非製造業景況指数
25:00 英中銀総裁講演
28:05 クオールズFRB副議長講演
6月4日(金)
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏4月小売売上高
20:00 パウエルFRB議長講演
21:30 米国5月雇用統計
23:00 米国4月製造業新規受注
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月24日(月)
ドル円は108円台後半で1日のレンジがわずか30銭と完全に蚊帳の外の1日となりました。前週からドル円は上下ともに限定的な動きとなって来ていることもあって、レンジ抜けを待っている参加者が多そうでした。
5月25日(火)
ドル円は東京市場では動かず欧州市場序盤に米金利低下によるドル売りがユーロドルで目立ち、ドル円はその動きに追随し一時108.56レベルと11日以来の安値をつけましたが108円台半ばでは買いも見られ反転。ユーロドルの買いからユーロ円の買いへとシフトするとドル円もNY市場朝方には109.07レベルの高値をつけました。しかし109円台では売りも見られ、引けにかけては改めて米金利低下の動きからじり安の展開で引けました。
5月26日(水)
ドル円は東京市場では動意薄でしたが欧州市場に入りECB理事の発言でユーロ売りの動きに引っ張られてドル買いへと動きが出ました。NY市場前場には最近トライしきれなかった109円台にしっかり乗せると日計りのストップも出て109.18レベルの高値をつけ、引けにかけては若干押して引けました。
5月27日(木)
欧州市場前場までは全く動意の見られなかったドル円でしたが、バイデン大統領がインフラ予算に6兆ドルを提案するとの報道をきっかけに財政赤字拡大思惑による長期金利上昇からドル高の動きとなりました。10年債利回りは一時1.62%まで上昇しドル円もクロス円の買いも重なって109.92レベルの高値をつけました。110円の大台を前に売りも出たことから引けにかけてはやや押して引けました。
5月28日(金)
ドル円は東京市場ではまったく動かず、欧州市場に入り米国と英国が月曜が休場となる中で月末実需のユーロ売りに引っ張られてドル円はドル買いの動きとなりました。一時110.20レベルの高値をつけたもののユーロドルがNY前場には行って来いの動きとなったことから上げる前の水準へと押し、元の水準での引けとなりました。
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