ドル円は年初来高値も視界内、円全面安継続(週報5月第5週)

先週のドル/円相場は、ドルが堅調裡。形成していたレンジを上抜け、一時4月6日以来となる110円台を示現する局面も観測されていた。

ドル円は年初来高値も視界内、円全面安継続(週報5月第5週)

ドル円は年初来高値も視界内、円全面安継続

〇先週のドル円、週半ばまで109.10-20が抵抗に、上抜け後週末にかけドルが続伸し一時110円台を回復
〇対ドル以外は円クロスで冴えず引き続き全面安の展開、ユーロ/円などで年初来高値を更新する局面も
〇5月消費者信頼感指数が予想を下回り、米連銀総裁らのハト派発言などで一時テーパリング期待感緩む
〇今週発表の米5月ISM製造業景況指数や同雇用統計、G7財務相・中銀総裁会議などに注意
〇今週のドル/円予想レンジ108.80-111.00

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は、ドルが堅調裡。形成していたレンジを上抜け、一時4月6日以来となる110円台を示現する局面も観測されていた。

前週末は、公式データで340万人とされているコロナ死者について、WHOが「把握漏れを含めると、すでに1000万人超えた可能性がある」と発表し物議を醸す。また、中国政府が「マイニング(採掘)」や取引を取り締まる方針を公表したビットコインが一時31100ドル台まで下落する局面が観測されていた。

そうした状況下、ドル/円は108.90円前後で寄り付いたのち、しばらくはレンジ取引。週の半ばぐらいまで109.10-20円が強い抵抗となっていたか。しかし上抜けすると、週末にかけドルは続伸。一時110円台も回復している。ただ、週明け31日が米休場にあたることもあってか、その後は調整的な売りに押され、週末のNYクローズベースではわずかながら大台を維持できず。109.85円レベルで取引を終え、越週している。
なお、円は対ドル以外、いわゆる円クロスでも冴えない。引き続き全面安と言ってもよい展開で、事実ユーロ/円やポンド/円、NZドル/円などは年初来高値を再び更新する局面も観測されていた。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米ファンダメンタルズと金融政策」と「新型コロナと東京五輪」について。
前者は、19日に発表された4月27-28日分の米FOMC議事録要旨において、一部の政策担当者が金融政策の変更を検討し始める用意を示していたことが明らかになったこともあり、市場では早期テーパリング観測が高まるも、発表された5月の消費者信頼感指数などの米経済指標が予想を下回ったうえ、シカゴ連銀総裁「金融緩和策を完全に支持する」、サンフランシスコ連銀総裁「米金利縮小条件に進展は見られない」などといったようなハト派発言が目に付き、一時期待感が萎んでいる。ただ、週末にかけては米利上げ期待が再燃し、ドルの買い要因に。

対して後者は、共同通信が「米ファイザー、東京五輪関係者2万人にワクチンを無償提供する見通し」などと報じるなか、米国務省が開催まで2ヵ月を切るこの時期に日本への渡航警戒レベルを最高の「レベル4」に引き上げたことを明らかにした。前者を受けたポジティブな機運が一気に萎んだ格好だ。そののち、日本サイドからは加藤官房長官が「渡航中止勧告と選手団派遣は関連していないと米国から説明を受けている」と発言するなど火消しに動いているものの、中止あるいは再延期不可避との声がさらに高まってきており、先行き不透明な状況だ。

<< 今週の見通し >>

ドル/円は短期の80銭レンジだけでなく、中期1.5円レンジの上限も上抜けてきた。29日から31日までNY市場が3連休になることもあり、先週末に掛けては調整的な動きも観測され、110円台を維持できなかったが、リスクという意味では引き続き上方向にバイアスか。前述したように、ここ最近の為替市場は円全面安の展開で、ユーロ/円などクロスの多くは年初来高値を連日のように更新している。ドル/円も、遅れ馳せながらそうした動きに追随。110.97円の年初来高値を意識した値動きをたどる可能性もありそうだ。

前述したような状況下、今週もまずは引き続き広義の米ファンダメンタルズに注目。米経済指標についても5月のISM製造業景況指数や同雇用統計などの重要指標が発表される予定だ。とくに後者は前月、市場でもっとも注視されている非農業部門雇用者数などで予想値を大きく下回るネガティブサプライズを記録したことは記憶に新しく、今回も警戒感を抱く参加者がいる状態だ。またそれ以外、週末には対面式G7財務相・中銀総裁会議が予定されているなど重要な国際会議も数多く、それらについても一応要注意。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は年初来高値110.97円を起点とした下げ幅のフィボナッチ76.4%戻しを超えたか否か微妙なところ。ちなみに、76.4%戻しは110.15円で、先週高値は110.20円。ギリギリ誤差の範囲内にとどまったとも言えるだろう。
ともかく、リスクは基本的にドル高方向へとかかるなか、是非とも早いタイミングで先週高値を超え、ドル続伸への道筋をしっかりと示したいところだ。キチンと上抜ければ、次の抵抗は当然110.97円、そして111円半ばなどがターゲットに。

材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「イラン情勢」、「露・ウクライナ情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「米金融政策の行方」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、注目材料が目白押し。そのひとつは、先でも取り上げた米経済指標で、5月のISM製造業景況指数や同雇用統計などが発表される見込みだ。また週間を通し米通貨当局者による発言も数多いうえ、対面式G7財務相・中銀総裁会議を筆頭に重要な国際会議もいくつか予定されている。

そんな今週のドル/円予想レンジは、108.80-111.00円。ドル高・円安については、まず先週高値の110.20円をめぐる攻防に注目。抜けると年初来高値110.97円がターゲットとなる。
対するドル安・円高方向は、109.70円前後が短期的なサポートとして意識されているものの、強いサポートとなるとやはり109円レベルか。また同レベルを再び割り込んでも108円半ばは相当に底堅そう。

ドル円は年初来高値も視界内、円全面安継続

ドル円日足

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