今週も上下とも限定的なもみあい継続
〇先週のドル円は水曜発表のCPIが予想を大きく超え米金利上昇によるドル買いの動きに
〇週末に向けては110円の大台を前にドル売りオーダー、金利低下でドル売りの動き
〇FRBがテーパリングは時期尚早という発言を続ける中、市場参加者は前倒しの思惑が根強い
〇欧米より遅れているワクチン接種が国内株式市場に重石、110円の大台超える地合いにならず
〇今週は108.60レベルをサポートに、109.80レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は前週末の米国雇用統計が悪かったにもかかわらず、その後の米金利がじり高となったことから週前半は底堅く推移、水曜NY市場で発表されたCPIが予想を大きく超える数字となったことで改めてテーパリング前倒しの思惑も出て、米金利上昇によるドル買いの動きとなりました。しかし週末に向けては110円の大台を前にドル売りオーダーが並んでいたこと、また米金利も1.7%台では上昇が限定的となってきたことから金利低下、ドル売りの動きで一週間を終わりました。
ドル円の動きは株式市場のリスクオン・オフによる円安・円高の動きに米金利上昇・低下によるドル高・ドル安の動きがミックスしての相場形成が続いています。FRBがテーパリングは時期尚早という発言を続ける中で、市場参加者はテーパリング前倒しの思惑が根強く、次回6月15・16日のFOMCから8月下旬に予定されているジャクソンホール(経済シンポジウム)の間に何らかのシグナルが出てくるのではないかという見方がされています。
先週のCPIはたしかに強かったものの、昨年の同時期はいまだ米国はコロナ禍の真っただ中であったことから、年後半のCPIは再び低下してくるというのがFRBの見通しです。その見通しを上回るCPIの伸びが出てくるのかどうかはジャクソンホール前にはまだわからない部分が多く、現時点ではやや市場参加者の思惑が過熱気味というところでしょうか。
しかし米国政府による支援金という名のバラマキ政策が明らかにマネーゲームを誘発し、株式市場も上昇というよりも一部銘柄における急騰や仮想通貨(暗号資産)市場における乱高下など、当局内でも引き締めは必要という見方も出て来ています。5月4日のイエレン財務長官による金利上昇容認発言も前FRB議長ということから、市場に対して将来的な引き締めショックを少なくする目的があったのではと勘繰られていたことも記憶に新しいところです。
しばらくは米国のテーパリングに対する姿勢を見極めていくこととなりそうですが、それに加えて欧米に比べて圧倒的に遅れているワクチン接種が常に国内株式市場に重石となっていることもあり、110円の大台を超えるほどの動きにもつながらないという先週の地合いが今週も続きやすいという見方でよいでしょう。
テクニカルには日足チャートを見ていきましょう。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
先週から大きな変化はありませんので、先週書いたことを繰り返すと「3月末の年初来高値と4月安値の61.8%戻し109.62がほぼ5月高値と一致し、4月安値と5月3日高値の61.8%押し108.32がほぼ雇用統計後の安値と一致」、「また年初からの動きを見るとサポートラインは年初来安値とその後の1月の安値を結んだラインがいまだ有効で、このサポートラインを下回らない限りはドル安トレンドへの転換は考えない方がよさそう」という部分はまったく一緒です。
若干の変化が見られたのは「レジスタンスラインは年初来高値と5月3日高値を結んだライン」であったのが先週の5月高値をわずかに更新する動きによってブレークし、現状は5月3日高値と先週高値を結んだラインと、強いサポートラインによる上昇ウェッジ(ピンクの太線)の中での推移になってきたと考えることができます。
ここからの動きを考えると、サポートラインが上昇してきていることから下側は108円台半ばがサポートとなり、また上昇ウェッジの上側は110円手前を上昇中です。このことから今週もウェッジの中で上下ともに限定的な動きを考え、108.60レベルをサポートに、109.80レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
5月17日(月)
08:01 英国5月住宅価格
11:00 中国4月鉱工業生産、小売売上高
21:30 米国5月NY連銀製造業景況指数
23:00 米国5月NAHB住宅市場指数
23:05 クラリダFRB副議長講演
5月18日(火)
08:50 本邦1〜3月期GDP速報値
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 英国4月失業率
17:00 フランス中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP改定値
18:00 ユーロ圏3月貿易収支
21:30 米国4月住宅着工・建築許可件数
24:05 (ダラス連銀総裁講演)
5月19日(水)
**:** 香港、トルコ市場休場
07:45 NZ1〜3月期PPI
15:00 英国4月CPI・PPI
17:00 南ア4月CPI
18:00 ユーロ圏4月CPI
20:00 南ア3月小売売上高
23:30 週間原油在庫統計
24:35 アトランタ連銀総裁講演
27:00 FOMC議事録公表
5月20日(木)
08:50 本邦4月貿易収支(通関)
10:30 豪州4月失業率
15:00 ドイツ4月PPI
18:00 ユーロ圏3月建設支出
**:** 南ア中銀政策金利発表
20:50 ラガルドECB総裁講演
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国4月景気先行指数
5月21日(金)
08:01 英国5月消費者信頼感
08:30 本邦4月CPI
10:30 豪州4月小売売上高
15:00 英国4月小売売上高
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国5月製造業・サービス業PMI速報値
20:00 ラガルドECB総裁講演
22:45 米国5月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値
23:00 米国4月中古住宅販売
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月10日(月)
週明けのドル円は寄り付きとともに大きく上昇した日経平均株価を見て円安の動きが先行しました。その後欧州市場序盤に109円台を回復しましたが戻り売りも見られ反落、海外市場では108.75レベルをもみあいの中心としてほとんど動きが見られないままに1日を終わりました。
5月11日(火)
ドル円は日経平均が大きく下げる動きにもかかわらず米金利上昇の動きを見て東京時間は底堅い動きとなっていました。海外市場に移り日経先物が一段安となる中、ドル円も徐々に値を崩しNY市場朝方には一時108.35レベルの安値をつけました。しかし、雇用統計直後の安値は抜けられず、日経先物に買い戻しが入る動きを見て引けにかけては買い戻しも出ての引けとなりました。
5月12日(水)
NY市場が始まるまでは日経平均続落の影響はあまり見られず、緩やかな米金利の上昇と下落の動きに沿ってやや買われた後に元の水準に押してNY市場入り。NY朝方に発表されたCPIは前年比+4.2%と予想を大きく超える数字となり、この数字を受けて10年債利回りは1.7%を回復しドルも大きく上昇、引け間際には109.71レベルの高値をつけ、そのまま高値引けとなりました。
5月13日(木)
ドル円は前日の上昇を受けて109.50割れでは押し目買いが出るいっぽうで110円の大台を前に後半では売りも出てくる一日となり、高値を109.78レベルまで上げたものの狭い値幅でのもみあいを続けました。しかし、NY市場では米金利が下げる流れの中で、少し高値を切り下げる展開となり、後場以降はザラ場での反転パターンを形成しながら引けました。
5月14日(金)
ドル円東京前場は株高の動きもあって円売りが先行しましたが、前日高値をトライしきれず109.66レベルを高値に東京の昼前には反落。その後はユーロドル上昇に引っ張られてNY市場朝方までじり安となり109.19レベルの安値をつけました。引けにかけては109円台前半で小動きのまま一週間の取引を終えました。
ディスクレーマー
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