ドルは上抜け失敗か 週間通し強保ち合いか
〇先週のドル円、108.35-109.05のレンジ取引をたどった後、上抜け週間高値109.78へ
〇ドルは強保ち合いになり一進一退、109.35前後で越週
〇先週発表の米消費者物価指数や生産者物価指数がサプライズな内容となり相場をかく乱
〇NYダウは週明けから3日間で1500ドル近い急落、米地区連銀総裁のインフレに関する発言が思惑を呼ぶ
〇今週発表の5月NY連銀製造業景況指数や同製造業PMIの内容に注視
〇米20年債の入札、米地区連銀総裁の講演などの内容にも要注意
〇今週のドル/円予想レンジ108.20-110.40
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが小じっかり。110円は超えられなかったが、ドルは直近の戻り高値を一時更新する局面も観測されている。
前週末は、全米最大とされるパイプラインがサイバー攻撃を受け、操業停止となり話題をさらっていた。なお、一部報道によると、攻撃を仕掛けた犯罪集団は大量のデータを盗んだことも別途わかったという。
そうした状況下、ドル/円は108.60円レベルで寄り付いたのち、しばらくは冴えない。108.35-109.05円といったレンジ取引をたどるも、上抜けると週間高値である109.78円へと値を上げた。ただ、110円は超えられず、その後ドルは強保ち合いに。それまでのレンジを上方修正した109.20-80円といったなかで一進一退となり、週末NYは109.35円前後で取引を終え、越週している。
また、円は対ドル以外でも引き続き弱い。実際にユーロ/円やポンド/円、豪ドル/円などは一時年初来高値を更新する局面も観測されるなど、さながら円全面安の様相だった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米パイプラインへのサイバー攻撃」と「米経済指標と金融政策など」について。
前者は、週末に話題となった「全米最大とされるパイプラインがサイバー攻撃を受け操業停止」との話について、バイデン米大統領は「ロシア政府が関与した証拠はない」としながらも「ロシア当局にもある程度の責任がある」と主張。「6月で調整している米露首脳会談で対応を協議する意向」も示していた。その反面、ロシアは大統領報道官が関与を明確に否定するなど、両国の関係悪化も懸念される状況になりつつあることには、今週以降も注意を払いたい。なお、関連した動きとして、複数の米メディアが「パイプライン運営会社は500万ドル近い身代金を支払っていた」と報じ、別途物議を醸していたようだ。
対して後者は、先々週末7日に発表された米雇用統計に続き、先週も12日の米消費者物価指数、13日の米生産者物価指数などが次々サプライズ的な内容となり、相場のかく乱要因に。またそれを受け、米金利や株式市場も混乱をきたすと、実際、NYダウは週明けからの3日間で1500ドル近い急落をたどるなど、なかなかの荒れ模様だった。また、連日のように米地区連銀総裁などの発言が聞かれ、そのなかでブレイナードFRB理事「インフレが続くリスクに注意が必要」、アトランタ連銀総裁「米国の金融緩和政策は適切」といったようにインフレや金利に言及するコメントが数多く聞かれ、そちらも市場で思惑を呼んでいた感を否めない。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円は一時109.78円を示現し、直近の戻り高値を更新。形成していたレンジを上抜けたことになるが、さらなるドル高へと走ることもなく、むしろ週末にかけては元のレンジへと回帰している。つまり、断定するにはまだ早いものの、ドルの上値トライは「ダマシ」だった可能性も否定できない状況だ。また、そうでなくてもドルの上値トライが一旦仕切り直しになった感は否めず、市場では109-110円をコアベースとした新レンジを形成、しばらくのあいだレンジ内での一進一退を見込む声も少なくない。
前述したような状況下、今週もまずは継続案件である広義の米ファンダメンタルズを注視。ここ最近は発表される米経済指標が予想値と乖離、米株や金利の動きが不安定となり、為替市場も落ち着かない動きをたどることが多い。引き続き週間を通して重要とされる米経済指標の発表が予定されているだけに、同様の値動きには十分に注意を払いたいところだ。また日印と欧米など、国や地域によって大きく対応の異なる新型コロナの感染拡大状況とワクチン接種をめぐる動きにも依然として要注意。
テクニカルに見た場合、ドル/円はフィボナッチポイントである109.65-70円を先週上抜け、ドルの続伸が期待されたが結局尻すぼみ。むしろ「ダマシ」の可能性すら一部で取り沙汰されているだけに、ドルの強気派としては出来るだけ早く110円台回復をしてほしいところだ。ちなみに、先と同じフィボナッチでは、次のターゲットは110.15円レベルとなる。それを超えれば110.97円の年初来高値がいよいよ意識されよう。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「イラン情勢」、「露・ウクライナ情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「バイデン米大統領による政権運営」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、5月のNY連銀製造業景況指数や同製造業PMIといった米経済指標が発表される見込みだ。先でも指摘したように、米雇用統計発表以降は「サプライズ」となる指標が少なくないだけに、今週もその内容をしっかりと注視したい。また米財務省による20年債の入札のほか、米地区連銀総裁などによる講演は今週も多く、こちらも引き続き要注意。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.20-110.40円。ドル高・円安については、先週高値の109.78円をめぐる攻防にまず注目。抜ければ110円、そしてフィボナッチポイントの110.15円がターゲットに。
対するドル安・円高方向は、ザックリ言って109円前後が攻防の分岐点となっている感を否めない。しっかり割り込めば移動平均の21日線や108.35円レベルなどが意識されそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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